かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 1の58

2020-07-29 16:54:59 | 短歌の鑑賞
ブログ版渡辺松男研究⑥(13年6月) 『寒気氾濫』(1997年)橋として
      参加者:崎尾廣子、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      司会と記録  鹿取未放


58 ひっそりと蝦蟇ひきかえす断念を見届けてのち口をつぐめり

 ★レポーターは「蝦蟇」を「がま」と読まれたけれど、「ひき」でしょうね。
   ヒ、ヒ、ヒって頭韻踏んでいる。(鹿取)
 ★私はこの「口をつぐめり」を何だろうかと思ったのですが。(慧子)
 ★口をつぐんだのは渡辺さんで、引き返したのは蝦蟇。それまでは何かしゃべっ
  ていたのを止めた。(曽我)
 ★考えを披瀝しようとしていたのを止めた。(慧子)
 ★この蝦蟇はたとえば獲物を狙っていたけど捕れそうにないと断念して引き返し
  たのかもしれないけど、その姿を見ていて〈われ〉は何か大きなもの、とても
  深いものに行き当たって、それで口をつぐんでしまった。情景はとってもリア
  ルでユーモラスなんだけど、蝦蟇の引き返す姿から言葉にはならない何か大き
  なことを感じ取った。(鹿取)
 ★これはほんとに蝦蟇ですか?それとも何かを象徴しているのですか?(曽我)
 ★象徴より本物の蟇を見ている方が面白い。いや、別に実際にはいなくてもいい
  んですよ。だけど歌の上では現実の蝦蟇が引き返す姿を見ている。人間の象徴
  だとか自分の投影だとかいくらでもいえるけど、それじゃ歌は面白くない。あ
  の蝦蟇の姿を読者にリアルに想像してもらうことがこの歌では効果的なんだと
  思う。(鹿取)

               

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