かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 45 

2022-04-07 11:01:35 | 短歌の鑑賞
      ※本日2回目の記事です。

  渡辺松男研究2の6(2017年11月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【夢監視人】P32~
     参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、A・Y、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆    司会と記録:鹿取未放
     

45 蛇なりと思う途端に蛇となり宇宙の皺の片隅を這う

      (まとめ)
 この「夢監視人」一連は時間に関しての思考が多い。40番歌「はるかより木の実匂いて来たりけり二足歩行のけものの乳房」は「はるか」が距離と同時に時間にも及んでいるようで、「二足歩行のけもの」は原始の人を思わせる。41番歌「永遠の静止のごとく月は泛き荒船山は狸あそばす」と言葉で「永遠」が示されている。そして43番歌「アウストラロピテクスとして石を蹴りわけのわからぬ悲哀こみあぐ」では〈われ〉が猿人になってしまう。さてこの45番歌では蛇になるのだが、こちらは時間ではなく空間を飛び越える。いや、〈われ〉がいた場所がそのまま「宇宙の皺の片隅」だと考えれば場所はそのままか。しかしその場合も蛇となって這っている「ここ」の感覚と、その位置を宇宙から把握するような俯瞰的視点とを同時に持っている。その変幻自在さが読んでいて楽しい。(鹿取)

       (歌集評)
 この歌の見所は存在の変換の自在さである。われ蛇なり、と思う瞬間にして蛇になりきってしかも宇宙の皺を這っている。何か思考の関節が一挙にはずれてゆく快感がある。
  (鶴岡善久)「森、または透視と脱臼」(「かりん」2000年2月号)
 

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