かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 190 中国④

2023-02-20 10:01:05 | 短歌の鑑賞
  2023年度版 馬場あき子の旅の歌25(2010年1月実施)
  【向日葵の種子】『雪木』(1987年刊)127頁~
   参加者:K・I、N・I、Y・I、T・S、藤本満須子、T・H、
      渡部慧子、鹿取未放
  レポーター:N・I 司会とまとめ:鹿取 未放

 
190 売られたる鶏は水見てゐたるかな二丁艫(ろ)に漕ぐ蘇州運河に

       (まとめ)
 下句と上句が倒置になっている。また終助詞「かな」は詠嘆で「水を見ていたことよ」の意味。 二丁艫だから艫が2本しかない小さな船、そこに売られた鶏たちが乗せられている。何羽とは書かれていないが、小さな船だから何羽くらいだろうか。たぶん脚でも縛って数珠繋ぎにされているのだろう。鶏たちはしょうことなしに運河の水を見ている。水は188番歌に「楊花散りて蘇州春逝く季に来つ濁れる運河一日下りて」とあったように濁っていて水中は見えない。拘束された鶏たちは直感的に自分の運命を把握しているのだろう。作者たちの乗る観光船と擦れ違ったときの属目だろうが、「水見てゐたるかな」に鶏の運命に対する鈍い痛みのようなものを感じている。(鹿取)


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 馬場あき子の外国詠 189... | トップ | 馬場あき子の外国詠 191... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

短歌の鑑賞」カテゴリの最新記事