かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 26

2022-03-19 13:50:20 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の4(2017年9月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【大雨覆】P24~
     参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、A・Y、鹿取未放
      レポーター:泉 真帆    司会と記録:鹿取未放

     
26 ひかりより繊きおもいというものを鳥は知りつつ天翔るらん

      (レポート)
 太陽光が生き物へ与える慈しみより、もっと繊細な恩寵を天(そら)から身に浴びていることを、鳥は自覚しながら翔んでいるのだろう、と鳥への畏敬の情を詠んでいるように思う。(真帆)


     (当日発言)
★「ひかりより繊きおもい」というのは誰のおもいなのでしょうか?tレポーターは「天」と書い
 ていますが、そういう大いなるものの意志、超越者なのでしょうか? (鹿取)
★夕鶴を思いました。繊いという文字を敢えて使っているから、糸のように切れやすい脆い人との
 繋がりということです。人間は裏切った訳ですからね。そういうことを知りながら飛んでいる訳
 で、それで畏敬の念もおこるかもしれない。(A・Y)
★いろんな読みがあってよいと思いますが、A・Yさんの説だと「ひかり」と比較する意味合いが
 なくなるように思います。繊いは繊細とか細やかさとかそういう時に使うようです。これから鑑
 賞する松男さんの歌に「白鳥はふっくらと陽にふくらみぬ ありがとういつも見えないあなた」
 というのがあります。この歌の「あなた」と26番歌に書かれていない主体は同じなのかなあと
 思うわけです。鳥は愛を伝えたり、子育てしたり威嚇し合ったりしていますが、超越者がわれわ
 れを生かしてくれている恩寵のようなものを、思念ではなく直観として知っているのじゃないか
 って。(鹿取)

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