2025年度版 馬場あき子の外国詠48(2012年2月実施)
【アルプスの兎】『太鼓の空間』(2008年刊)173頁
参加者:N・I、井上久美子、崎尾廣子、曽我亮子、藤本満須子、
渡部慧子、鹿取未放
レポーター:渡部 慧子 司会とまとめ:鹿取 未放
345 戦争を逃がれてスイスに棲まんとせし強き肩弱き足思ふ雪の峠に
(当日意見)
★「強き肩弱き足」は、老若男女では動きが出ない。大人、女人、子どもを思わせ、具体を詠むことで実感が出ている。 (鈴木)
★そうですね、強い肩を持った男性も、弱い足を持った女性や子どもも難儀をして峠を越え、スイスに逃げてこようとしている様子を思いやっている。今は鉄道やバスで比較的簡単に国境の峠を越えられるけど、逃避行だからそういう交通手段は機能していても使えなかったでしょうね。島国の日本ではできないことですが。作者は今立っている峠の雪の深さに驚き、難民達はこんな雪深い峠を徒歩で越えてやってきたのかと言葉を失っている感じがします。(鹿取)
346 飴一つ含みて深く見下ろせばあな大氷河かそけく吹雪く
(当日意見)
★標高差があって飴を嘗めたか?(藤本)
★飴一つということで、大氷河の大きさが出る。(曽我)
★飴一つしか口の中に入っていない物足りなさに、かえって大氷河の広がりが感じられる。(鈴木)
★峠のてっぺんに立っていて遙か下の方に大氷河が見えているのでしょうね。遠いから吹雪いていてもかそかな気配しか感じられない。その茫漠感でしょうか、飴一つ含んでいると安堵感が生まれますよね。(鹿取)
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