かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

追加版 渡辺松男の一首鑑賞 2の123

2019-01-07 11:46:58 | 短歌の鑑賞
  ブログ版渡辺松男研究2の16(2018年11月実施)
    【樹上会議】『泡宇宙の蛙』(1999年)P80~
     参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:泉真帆   司会と記録:鹿取未放

      
◆後日意見部分を追加しました。


123 あっけなき鳥の交尾を空に見て羽毛ほど吾はかるくなりたり

          (レポート)
 福岡伸一著『新版 動的平衡2』(71頁)に興味深い文章があった。少し長いが引用させていただいた。

「一方、大絶滅を生き延びて繁栄したのは哺乳類だけではない。翼をもち、空を飛ぶことができた鳥たちも成功者だった。彼ら彼女らは、飛ぶために特化された身体を持つに至った。吸うだけでなく息を吐くときですら、肺に酸素が送り込めるよう、気嚢(きのう)という空気袋を肺の後方に備えた。 

 何かを溜(た)めて体重が重くなることを極力避けるため、膀胱と大腸のほとんどをなくした。だから、鳥はうんちとおしっこが同じ穴からたちまち出てくる。それだけではない。メスなら卵を産む管、オスなら精子を出す管も、この同じ穴と合一している。だから鳥はすべてのことを単一の穴で行う(総排泄口)。そしてほどんどの鳥にはペニスがない。交尾は、オスとメスが協力して総排泄口をくっつけ合う行為となる。」

 一首を読むとその交尾も「あっけな」いのだとある。愛欲まみれの人間世界とくらべて鳥はなんとシンプルなのだろう。「羽毛ほど吾はかるくなりたり」に、快楽もふくめた性愛の煩わしさから解放された作者の心情が「羽毛ほど」に現れているような気がする。(真帆)


      (当日意見)
★福岡伸一さん、私も大ファンですけどものすごく文章の上手な人ですね。川上和人さんの『鳥類
 学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』というのも面白かったです。お二人とも、鳥が軽く
 なった進化の過程を書いていて、今の引用部分もそこの仕組みの説明が面白いですね。羽毛ほど
 軽くなるって、ほとんど軽くなっいないけど、これは人間からの視点です。もし、主体が鳥だっ
 たら「羽毛」ではなく別の表現になりますから。この歌、好きです。(鹿取)
★鳥の交尾ってわからないんじゃないかな。(T・S)
★イワツバメだったかな、飛びながら眠るし、飛びながら交尾するんですね。だから一瞬なんでし
 ょう。それ見て、〈われ〉は何かとってもサバサバした感じになったのでしょう。(鹿取)


      (後日意見)
 余談だが、アフリカからスウェーデンなど欧州に渡りをするヨーロッパアマツバメは、10ヶ月間着地しない個体もいるという。雛を育てる約2ヶ月間以外は食事も空中で済ます。飛びながら眠るそうだから、交尾も飛びながらするのだろう。(鹿取)



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