うかうかするうちに(亡父母が口にした、うかめとると・・・)残暑も終わり彼岸がちかづいた。春の彼岸に逝ってしまった妻も、この半年をむこうで無事にすごしておるだろうか。毎日のように写真にむかってスマン・スマン と呼びかけるだけの頼りない日を過ごしておるのを観て聴いて、笑っておるだろうな。
で、図書の噺。妻のいない寂しさを借りだした本で紛らわすことが多くなった。ただし、就眠前に手にしたり、少しの動作で疲れる身体を横にしたときに読むだけで、熱心な読書家でない。男性作家の筆致に飽きが来た というか掴めないのだろうな ため、最近は女性作家の小説が好みで、何か月か前に三浦しをんを知った。作家の父の故郷・三重県津市美杉村を舞台にとった「神去りなあなあ日常」が初見である。新聞紙面で三重県が採り上げられてあるのを知っただけで物珍しさも手伝い取り上げた。他にも数冊借り出しておるが、神去りを含め内容は脳内から飛んでおる。
しかし前回借り出した「舟を編む」は残っておる。書架で背表紙を観たとき、彼岸へと渡る舟のことかしら と思ったのだが、パラパラめくると軽い調子ながら、辞書を造ることの難儀と愉しさが描かれてある。読み進めてゆくのが愉しいくらいに軽いが後味の佳さを残す作家さんだな と。市の図書館に別の作品があれば、借りだしたい。さらに運の佳い事に、同名の映画を録画鑑賞できた。加藤剛・八千草薫はともかく、宮崎あおい、松田龍平らが出演して、本の内容とおりに映し出され脳内にとどまらせてもらった。呆け始めた脳内にアンカーを打ち込んでくれた。
この頃、つい、男性作家の作品を読むのに疲れ、女流作品に流れておりますが、ちょいと竿刺すこともあって、日本文学全集ものを借りだしております。たまたま5月上旬にNHK-TV「井伏鱒二の世界~『荻窪風土記』から~」を観ることができたからです。好きな太宰さんが慕ったことのある井伏さん(1983頃ー83歳頃)を動画です。早速録画しました。ただ教科書か何かで「山椒魚」を読んだ記憶だけで、この作家のことを何も知らない。すわと市立図書館で日本文学全集(新潮社)を借りだす。駅前旅館にクスクスして親しみ、平凡に思える書きようで原爆被災を述べるに感心しきりであった。それからは、不明を恥じるように文学全集を借りるようにしております。ただ、手に取るのが就眠前ですから2週間の返済期限をオーバーしそうになり、借り直しても居ります。葛西善藏、広津和郎さんの名を!知りました。今夜も枕元にあるのですが、菊池寛の仇討モノの上手さに感心しながら、「出世」で記載があったニッケルの弁当箱の材料に悩んでみたりしました。菊池作品と同じ冊に納められた水上滝太郎さん作品の「山の手の子」では花客=とくい、果敢無い=はかない 等々をルビに教えられては愉しんでおります。
残されたのは少ない時間ですが、思い切って古本で全集を贖おうかとも・・・