土曜日、便秘のテーマで、
消化器内科、腎内科、認知症、
緩和医療からは私が参加し、
講演会が開催されました。
他分野の専門家の話はとても勉強になります。
今回、例えば、消化器内科の先生の話では、
ラクトバチルスビフィズスなどの、腸内細菌(俗にいう善玉菌、
最近は、医学用語的には善玉菌と言ってはいけないそうです・・)を
増やす方向に推奨はされないとのこと。
要するに、ヨーグルトなどを沢山食べて、
腸内細菌(俗にいう善玉菌)を増やすと、
中間帯の必要な菌が少なくなり、
全体的な菌分布が崩れてしまい、
逆効果になるのだそうです。
身に覚えがあります。
多量にあるヨーグルトを食べたとき、
見事に便秘になってしまいました。
なぜだろうと思っていたのですが、
これを聞いて腑に落ちました。
このことを、一般臨床に応用するとしたら、
ビオフェルミンなどの使い方です。
漫然と続けていた患者さんに
中止しましょうと言ったら、いやだと言われ
根拠がなかったので患者さんが望まれるならと
そのままにしたことがあります。
明らかな下痢などの病的な状態のときに限り
投与されるべきで、
悪玉優勢ではない時に、ビオフェルミンなどの
善玉菌の薬剤を使い続けるのは、
マイナスになることがわかりました。
今度は、きちんと理由を説明できますので、
無益な整腸剤は中止したいと思います。
認知症では、レビー小体型認知症を専門にされている
横浜新都市脳神経外科病院真鍋先生の話は驚きでした。
記銘力障害を起こしてくるよりもずっと前、
10年から20年くらい前から便秘の症状があらわれ、
その後、レム睡眠障害などを認め、
そして、パーキンソンニズムとなり、認知症となるのが、
レビー小体病の特徴のようです。
この順番が腸管のアウエルバッハ神経節から始まり、
上行していくようで、
上行性末梢神経の不完全切断では、
レビー発症は不完全に抑えられ、
完全に切断するとかなり抑えられることから、
腸から神経を上行し、脊髄にはいり、
さらに上行し、中枢に至る可能性が高いとのころ。
ええ~っ
認知症が腸から始まり、脳に至るの・・・?!
便秘がその一症状の表れなのか、
便秘を放置していると認知症になりやすくなるのか、
そこはまだわかっていないようですが、
便秘を管理していくことは大変大切なことのようです。
腎機能障害と便秘の関係があるようです。
東北大学阿部先生の講演から。
ここでも、以前、PUBSの紹介をしたことがありましたが、
紫尿は便秘が原因で、
腸内細菌によってつくられた色素によって
尿が色着きます。
腸内細菌叢のアンバランスによって、
産生される様々な物質が
腎機能を悪化因子となる可能性があるようで、
腎機能を維持するための
便秘の管理にも言及されていました。
私からは、オピオイド誘発性便秘
(Opioid induced constipation; OIC)
の話をしました。
オピオイドの副作用としての便秘と
その管理の流れを絞めさせていただいたのですが、
一番フロアの方に興味を持っていただけたのは
腹部膨満感はOICの症状の一つにならないという話だったようです。
ずっと、このことはレクチャーなどで話をしてきたのですが、
OICに対するある下剤のランダム化試験で、
プラセボ群と介入群で
便秘の腹部症状の有意差を見る結果から、
便の硬さや排便の困難感などは差がありながら、
腹部膨満感では二群間に差がなかったという報告を
最近の論文に見つけ、
「患者さんがお腹が張ったと言わないから、
便秘ではないと言わないでください」
と強調することができました。
それにしても・・・
レビーは、便秘から始まる・・・
腸から認知症?!
これは、驚愕の仮説・・
いえ・・神経切断実験結果から
結構可能性が高そうです・・
(すみません、根拠になる論文は探せていません)
この数年間、便秘が悩みの種になってきた私ですが、
10年、20年後がちょっと心配になってきました・・
また、感想をここにシェアしてくださり、ありがとうございます。お腹を気にする感覚が似ていて、嬉しくなりました!
昨年、パーキンソン病の勉強会に行ったところ、最後にちょっとこんなお話がでました。
昔(1970~1995年ごろ)海外で行われていた迷走神経切除術で、どこを切るかでPDの発生率が違ったということです。
そこでPDに腸内細菌が関係しているのではないかということでした。
今回のレビー小体型のお話といい、脳と腸(そして体のすべてが)はつながっているのだと改めて思いました。
この領域は、専門外なのですが、わが身の将来を考えると
便秘はあなどってはいけないなあと実感しました。
頂いたコメントで、さらに、その感を強くしました。
本当に、ありがとうございました!
歯科衛生士のMと申します。
古いブログですが、興味がありコメントさせて頂きます。
患者様で、レビー小体の方がいらっしゃいます。
レビー小体と便秘の繋がりを調べていて
乳酸菌を摂取したら、レビー小体の改善や進行に繋がらないかなぁ?と思ってコメントさせて頂きました。
ネット上にも、あまり載って無い感じで、
先生の仮説?は、その後どうなったのでしょうか?
ブログを読んでくださり、また、コメントを残してくださり、ありがとうございます。
レビー小体病において、合併症以上に、発病や進行の直接的な原因として便秘が関連していることについては不明です。また、乳酸菌製剤は腸機能障害を専門とされている方々からは、記事内にも書いているとおり、腸内菌のバランスにとって、善玉といいつつも一部の菌を増加させることは望ましくない(中間帯の菌など多様性を失わせてしまう)と教えてもらいました。これらのことは、今も大きく変わっているものではないと思います。そのようなことを考えるとレビー小体病の進行を抑えるために乳酸菌を用いることが患者さんにとって明らかな利益があるとは言えません。
ただし、便秘を改善させていくことは、患者さんの健康やADL維持にとって大切なことです。
以上のことから、レビー小体病に乳酸菌製剤を投与するのではなく、よりよく日常生活を送っていただくために便秘の管理をしっかりとして頂くことを推奨します。
aruga