2012年12月日本でも発売となった新しい下剤
アメリカでは、今年4月に
成人の非がん疼痛に対するオピオイドの便秘に
適応となったようです。
一般名;lubiprostone
商品名;アミティーザ
日本での保険適応;慢性便秘
(6か月以上継続する非器質的な便秘)
■アメリカでの適応は、
chronic idiopathic constipation in adults
(成人の特発性の(取り分けこれという器質的な原因のない)慢性的な便秘)
24 μg/回 1日2回
irritable bowel syndrome with constipation in women 18 years of age and older
(18歳以上の女性の過敏性大腸炎の便秘)
8 μg/回 1日2回
2013年4月にアメリカFDAは次の適応を追加しています。
opioid-induced constipation in adults with chronic noncancer pain
(成人非がん疼痛に対し投与されているオピオイドによる便秘)
SCAMPO
■薬理機序としては、
Lubiprostone is a specific activator of CIC-2 chloride channels in the intestinal epithelium and bypasses the antisecretory action of opiates by activation of apical CIC-2 channels.
小腸粘膜にあるクロールチャンネル-2の作動薬で、Clと腸液(水)を腸管内に引き出し、軟便化および便のボリュームを上げ腸管蠕動を刺激することで便秘を改善させるようです。
マグネシウム製剤との違い
マグネシウム(Mg)等の塩類下剤に類似していますが、
Mgは、腸管内の浸透圧差で
水を腸管内に引っ張り込むことが異なっており、
また、血中Mg濃度の上昇を認めます。
腎で排泄されるMgは、
腎機能低下患者さんには
投与を控えなければいけません。
(Mgが腎機能障害を引き起こすのではなく、
腎機能が低下していると、
排泄できなくなるため、投与を控えます。)
腎機能障害があって、
Mgが使い辛い患者さんには
有効と思われます。
また、作用点が小腸であることも
Mgとの違う点です。
■副作用は、
In clinical trials of AMITIZA (24 mcg twice daily vs placebo; N=1113 vs N=316, respectively) in patients with CIC, the most common adverse reactions (incidence > 4%) were nausea (29% vs 3%), diarrhea (12% vs 2%)
慢性便秘症では、悪心、下痢、頭痛、腹痛、腹部膨満感、鼓腸
In clinical trials of AMITIZA (24 mcg twice daily vs. placebo; N=860 vs. N=632) in patients with OIC, the most common adverse reactions (incidence >4%) were nausea (11% vs 5%) and diarrhea (8% vs 2%).
オピオイド便秘では、悪心、下痢。いずれも、慢性便秘症よりも便秘の程度が強いためか、副作用は少ない印象をうけます。
■禁忌
消化管閉塞
だから、非がん疼痛に限定されているのでしょう。
機序的には、腸液の分泌を抑制する
オクトレオチド(サンドスタチン)の逆です。
つまり、この薬剤は腸液の分泌促進
このルビプロストン(アミティーザ)を調べていて、
大変、大変、興味深いことがわかりました。
『オピオイドの便秘は薬剤の種類によって便秘の出方が異なる!』
オピオイドの中でも、薬剤の種類によって、
便秘の出方が違う可能性を聞いておりました。
このルビプロストンの効き方のデータを見ると
モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルとメサドンでは
結果が異なることが分かりました。
ちなみに、オピオイドのクラスは以下の3タイプに分けられます。
- Phenanthrene derivatives: Morphine, Codeine, Hydromorphone, Oxycodone
- Phenylpiperidine derivatives: Meperidine, Fentanyl
- Diphenylheptane derivative: Methadone
(出典;ワシントン大学のサイト内の http://neuromuscular.wustl.edu/lab/painmed.htm)
ルビプロストンの発売元スキャンボ社のページには、
SCAMPO
Approval was based on results from 12-week phase 3 studies in patients taking opioids, including morphine, oxycodone, and fentanyl, for chronic noncancer pain, and a long-term open-label safety study, a release from the companies notes. Two of the phase 3 studies met the overall efficacy endpoint, although a third study did not, they add.
The effectiveness of this drug in patients taking diphenylheptane opioids, such as methadone, hasn't been established, the release points out, and concomitant use of these opioids may interfere with its effectiveness.
(diphenylheptane opioidsであるメサドンなどを服用している患者に対する本薬剤の効果は定かではない。)
で、PubMedで検索したところ、
ちょっと面白い論文がありました。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22918821
Methadone but not morphine inhibits lubiprostone-stimulated Cl- currents in T84 intestinal cells and recombinant human ClC-2, but not CFTR Cl- currents.
(Cell Biochem Biophys. 2013, 66(1), 53-63)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3627040/figure/Fig1/
メサドンは、このルビプロストンの
CIC-2チャンネル作動を抑制してしまうようで、
つまるところ、メサドンの便秘が、
小腸で起こっている証拠の一つと
いえるかもしれません。
モルヒネには、その作用はありません。
便秘のタイプ
大腸型;モルヒネ、オキシコドン、(多分ハイドロコドン)
小腸型;メサドン
中間型;フェンタニル
薬学の先生方から
このような分類の可能性を聞きましたが、
この論文は、その裏づけの一つといえそうです。
がん性疼痛認定Nsをしております。
オピオイドの種類によって便秘のタイプが違うとは知りませんでした!
がん患者さんは便秘でつらい思いをされていますが、がん性腹膜炎や腫瘍による圧迫で便意があり頻回にトイレに行きたくなる患者さんがとても多いのですが、どう対処したらよいかいつも悩みます。
排泄に関する苦痛、少しでも緩和できたらなと思いジレンマがあります…。
しっかり勉強続けていきたいと思います。
そうなんです。私もオピオイドの種類別に便秘が異なっていると知ったときは本当に驚きでした。
オピオイドを必要としている患者さんが口からしっかりと食べ続けられるには、それでなくても便秘になりやすいわけですから、そのコントロールにかかっていますよね。
一緒に頑張りましょうね!!