フェンタニル貼付剤の最少量は2.5mg。
この2.5mgのパッチからの 薬剤放出量は 25μg/時間。
よって、25×24時間=600μg=0.6mg/日 放出していることになります。
フェンタニル注は、0.1mg/2ml/アンプル
この放出量を100%吸収するとしたら 6アンプル分の薬剤が体内に入ることになるのですが・・
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医療者で、フェンタニル貼付剤の取り扱いがある方であれば、添付文書で、発熱や熱い入浴には注意という文を見たことがあると思います。 40℃等の高熱であれば、吸収が極めて高くなり、100%吸収に近くなるので、注意が必要ということになります。 では、平熱の時はどの程度吸収しているのでしょうか。
フェンタニル貼付剤2.5mgは 経口モルヒネ60mg~90mg/日 に相当します。
経口:静注は、1:1/3 (アメリカでは 1:1/4)
経口モルヒネ 60~90mgは 静注モルヒネ 20~30mg
同一投与経路で フェンタニル:モルヒネ=1:100 (New Eng. J 94)
静注モルヒネ 20~30mgは 静注フェンタニル 0.2~0.3mg
経口:皮下注は、1:1/2
経口モルヒネ 60~90mgは 皮下注モルヒネ 30~45mg
同一投与経路で フェンタニル:モルヒネ=1:100
皮下注モルヒネ 30~45mgは 皮下注フェンタニル 0.3~0.45mg
貼付剤は皮下注に近いと考えても良いかもしれませんし、極めて早く血中に入る状況を想定するなら静注量も含めて幅を持って考えるべきかもしれません。
フェンタニル貼付剤2.5mgは フェンタニル注 0.2~0.45mg、つまり、2~4アンプル程度の吸収が通常の状態での吸収であろうと予想されます。
がんの患者さんの皮膚の皺、角質の程度を考え、基本量としては、2.5mgは 3アンプル分と頭に入れています。 覚えにくい時は、パッチ2.5mgは、2.5アンプルの上と覚えておきます。 基本量が頭に入っていると、そこから個別性を考慮していくことができますし、事故防止にも役に立ちます。
まとめると、貼付剤は 発熱などで吸収が100%に近いと フェンタニル注にして 6アンプル分。 基本量としては、3アンプル。 ちょっと剥がれていたりすれば 1アンプル分しか吸収されていないこともありえるのです。 1から6アンプル・・の開き・・
同一投与経路で フェンタニル:モルヒネ=1:100ですから、これをモルヒネ注に置き換えても、10mgのアンプル 1から6アンプル分に相当するわけです。 医療者の方は、モルヒネ注は使い慣れていると思いますので、想像していただきやすいと思うのですが、1アンプルから6アンプルまで開きがあると、かなり慎重になりますよね。
オピオイド・ローテーションを考える時や投与経路を変更したい時は、貼付剤はこれだけ幅があるので、十分患者さんの状態を診る事が大切です。 単純な計算で済ませてしまうのではなく、血中濃度が低めなら疼痛が出、血中濃度が高めなら眠気がでますから、この痛みと眠気の間で適切な血中濃度となるように24時間から48時間は観察していかなければなりません。
経口が取れない患者さんにとって、この貼付剤は極めて有益な薬剤です。 その一方で、十分気をつけなければいけないポイントを押さえ、上手に使いこなしていきたいものです。
(参考までに、動物実験等で、同一投与経路で フェンタニル:モルヒネ=1:70とするものもあります。)
かなり専門的で、頭が痛くなりそうな計算にここまで付き合ってくれてくださってありがとうございました。
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今日も、お付き合いくださりありがとう。明日も、来て下さいね。
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オピオイドローテーションをかけたいところですが、吸収の問題があるとすると怖いですね・・atusatoさんの力の発揮しどころですね!
10mg17枚という症例を聞いたことがあります。DPC導入されていた病院でしたので、貼付剤が査定されたようでした。それ以上に、何て疼痛コントロールが下手なのだろうと思いましたが、そういう医師に限って企業主催の講演会に呼ばれていました。