緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

句集「花束」

2010年10月24日 | つれづれ

高校時代の友人から厚みのある郵便が届きました。

何だろう・・・

「花束」という、句集でした。



友人は、俳誌に所属する知る人ぞ知る俳人です。
何年か前、軽くはない病気で入退院を繰り返されたことがありました。

何気に読み始め・・
はじめは、動きや人の息使いのある句が多く、
その内、静の中の柔かな句が増えていきました。

ドキッとするような句もありました。

「散るときの来ぬが如くに梅しづか」


動きがとまったような静かな句は、もしかして病室の窓から・・・?

「秋灯の一つ早きは山近く」


ぐっときたのが

「柿を剥く音静かにも優しくも」


窓の外、空の様子の句が続きます。

「目をつむるたび暗くなる秋の暮」
「違ふ窓なる冬空の違ふ色」

クリーンルームに入院していらしたころを思い出します。
そして、また少しずつ街の風景や光を感じる句が増えていきます。

「この冬も生きて息する誕生日」


動きのある句に惹かれます。

「秋高し水に立つ鴨浮かぶ鴨」


そして、最後は、キラキラと一杯に光を感じられる句でしめられていました。

「めつむればくまなく春の水の音」


誠実な写実
清々しさ
どのように表現すればよいか言葉が見つかりません。



あとがきに、
多くの方からの励ましに対し、

「言葉に尽くせない感謝をもう一度ここに残しておきたい。
 地味ですが私からの花束です。
 平凡な暮らしの浮き沈みにとらわれているときも、
 どこかで俳句に支えられてきた。
 迷いながら学び続ける日々をさらに重ねて、
 俳句の世界につながっていこう。」


草花などの難しい漢字には、丁寧に鉛筆で仮名をふってくれていました。
そんな気遣いと
はにかむ様な友人の微笑みとともに
病室の姿が重なって、
耐えられなくなった涙がこぼれてしかたありませんでした。



由美さん、素敵な花束をありがとう・・


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 学位 | トップ | 第3回勉強会 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
嬉しい! (aruga)
2010-10-24 22:50:37
三児の母さん
心の暖かさがさめる間もなく、コメント頂き、本当にありがとう。皆さんに読んでいただきたくて、リンクを張らせて頂きました。
日々の浮き沈みに惑っていた私にとって、大いなる励ましでした。
返信する
光栄です (三児の母)
2010-10-24 22:23:39
とても丁寧に読んでいただいてありがとうございます。入院中の句、と見抜けるのはさすが!「目をつむるたび」もそうですし、「柿を剥く」も病室仲間のことです。本当に患者さんをよく見ていらっしゃる、と改めて感じ入りました。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

つれづれ」カテゴリの最新記事