緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

猫を抱いて象と泳ぐ

2010年02月21日 | つれづれ

最近、読んだ本・・・


猫を抱いて象と泳ぐ
小川洋子




気まぐれに入った美容院。
好みの雑誌がなかったので、
ちょうど買ったばかりのこの本を読みました。

小川洋子さん特有の世界観に飲み込まれました。

読み進めているうちに、
ああ・・こんな感覚、幼いときにあった・・あった・・

壁の向こうのミイラと話をしたり、
寝床に、自分なりのストーリーをもたせた天井や壁の染みがあったり、
道のはしっこに、子供仲間の隠れスペースがあったり・・

いつの間にか、寓話から
幼い日々の微かな記憶を呼び戻す話となっていくことに
気がつきました。




何人もの人が死にます。
歪な死にも関わらず、畏敬ではなく、
自然な影響を、ずっと受けながら・・・

この間、話はチェスを手段として進んでいきますが、
最後は、主人公の唐突な死で終わります。




幸い、このシーンは自宅に帰ってから読んでいました。
この結末を知った時、強い共感を覚えました。

表にでた人生でもなく、
自分の立ち位置で、自分らしく表現し、
短い、急な最期を迎えても、
それも、人生だったと感じさせるような最期でした。

長さではなく、質なんだと
若い、幼い患者さん達と何度も話し合ったことを思い出します。



単なる寓話ではなく、
人生とは・・
人の幸福とは・・
こうしたことを、まったくその言葉を使うことなく
表現し、伝わってくることに
小川洋子さんの素晴らしさを感じました。

彼女は、多分、書き始めた時
こういう結末になることは意識していなかったのではないかと思います。

不思議な
素敵な本でした。


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2 コメント

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いいですね (レンコン)
2010-03-07 18:16:08
「猫を抱いて象と泳ぐ」
このタイトルを見て読みたいと手を伸ばしたその瞬間に、その本と出会うことができる。

作者の言いたいことのどれくらいを感じ読み取るかは個人の力だったり、感性だったりしますよね。

私も読んで見たいなと思いました。
「人生は長さではなく、質」という言葉
本当にそう思います。
また、いい本がありましたら、教えてください。

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レンコンさん (aruga)
2010-03-08 00:26:34
アマゾンの書評を観ても、9割絶賛、1割小川世界に入り込めず・・という感じでした。
私は最後、涙涙だったのですが、何故涙がそんなにこぼれるのか、最初自分がよくわかりませんでした。
これも、読み手の方によって随分違うのだろうなあって思いました。
是非、お読みくださいましたら、感想をお知らせください!!
コメントありがとうございました。
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