緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

医者の奥底(4)救命処置

2018年05月06日 | 医療

(前回の記事につづきます。)
もはやレスキューできないであろうことは
学生だった私達にもすぐに理解できました。

さっきすれ違った赤ちゃんを抱いた女性は
目の前に横たわっている男性の妻であろうことも・・

工事現場での墜落でした。

心肺蘇生を試み、心臓マッサージを続けていました。
考えられることはすべて行いつつ・・
すぐに、鼻腔、外耳道から、出血してきました。
頭がい底骨折からの出血でした。

救急チームのリーダーが言いました。

「後、30分頑張ろう・・
 それで戻らなければ
 
奥さんに早く会わせてあげよう・・」

どうすれば心臓からの駆出は保たれるか
血圧を維持することができるか
どこを押せばいい?
何をすればいい・・
外で待つ妻と赤ちゃんの姿が離れませんでした。

そして、30分後・・

心臓は停止したままでした。




その手を止めた時間が・・・


臨終の時でした。

(再掲 つづきます)

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