緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

人生に飲み込まれない生き方

2015年10月25日 | 社会時事

もう一か月たったのかと思うと、本当に早いものです。
あまりに多くの方に意見を求められたので、
少しだけここに書こうかと思います。

川島なお美さんのことです。

多くの方に生き方を問いかけた川島さん・・
心からご冥福をお祈りしています。




私が様々な方の最期に関わらせて頂いて、
安堵できるのは
よい人生だったと感じながら旅立たれた時です。

等しく最期の時があるのですから、
私自身も、たった一度の人生をこの地球に生まれてきて
この時代に生きて、よかったと思いながら、
人生にさよならの手を振りたいと思っています。

人生のアウトカム(最終地点)はそうであったとしても、
プロセス(道のり)は人の数だけ道は違うものだと思います。



抗がん治療がどうだったか、
病名の伝え方がどうであったか、
その後の治療までの期間がどうだったか、
医療的には、様々な考察がなされるでしょうが、
その方が、その方の意思で選択され、
その結果を含めて、肯定できる。
ただ、それに尽きると思います。

これを叶えるための大切な役割は、
患者さんが人生のどの位置にいて、
その後、どのようなことが予測され、
どのような対処を考えればよいか
その情報提供と選択支援だと思うのです。

プロセスは、人それぞれ異なるその中身というより、
歩み方なのだと思います。



最期の時を自らの足で歩むというか。。


決して、最期まで歩けているという意味ではありません。
心の自立という言葉をよく使うのですが、
気持ちに自分らしさを失わないというか、
体がいうことが効かなくなったとしても、
心に焦りはなく、それも自分の人生の一幕として
了解しているような感じです。



言葉にすると本当に難しいのですが、
あの川島さんのように、
私は、これでいいのよって
微笑まれていたような感覚なのです。

ご自身で自分の最期の歩みを選択され、
様々なリスクもベネフィットも了解の中で、
もっとも自分らしい道を歩みきった人生は、
本当に、素敵でした。






もし、川島さんの生き方っていいなって思ったならば、
では、自分はどんな風に生きてみようか・・って
時々、立ち止まって考えてみることができるといいですよね。

医療者の立場ならば、
あんな風に生ききってよかったと思ってもらうには、
今、何をすべきだろうか・・
そんな問いをしてみることができるとよいかもしれません。

医療的な視点で、
予後はどの位あるのか、
急変のリスクは?
患者さんが後悔しないためには?
自分が患者さんだったらどうしてほしいと感じるだろうか?
・・・・沢山の問いかけに、自分が果たせる役割はなんなのか・・

目指すところは、患者さんが少しでも良い人生だったと感じてもらう・・

プロセスは、人生に飲み込まれていないで、ご自身の足で歩めるように・・



死を感じて、今を生きる。

川島さんの生き様も、
スティーブジョブスらが残してくれた言葉も、
私たちの今を豊かにしてくれています・・


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