夏になり始めの頃、
外勤先でみていた一人の患者さんが亡くなられました。
ご主人をがんで亡くされ、
自分ががんになったら治療はしない・・と決められていたようでした。
途中、痛みの治療のためにも
放射線治療を受けた方がよいことを
何度も何度も説明しました。
意図を見事に汲み取ってくださった放射線治療医のお陰で
外来治療で入院することもなく
事前の副作用対策の効果もあり
「あら・・拍子抜け!!」とばかりに
完遂することができました。
最期が近づいてきたとき
せん妄交じりになってきました。
夜眠れなくて辛そうということで
病棟担当医からデパスの指示が出たばかりでした。
これでは、せん妄は悪化してしまう可能性があります。
せん妄ながらも、不快ではない時間が過ごせるように
これ、変えましょう!!
と、セロクエル最少量眠前として離れました。
翌週・・
「お父さんがまだ迎えに来てくれないのよ~」とおっしゃり
ながらも、中々楽しげな会話が続いています。
「あら~、それは、困ったこと?
それとも、まあ・・いいかなって感じ?」
などと、質問をすると
「もちろん、困ったことよ~
もう、お父さんのところに行きたいのに
まだ、いいってことでしょ?
あのドアのところにいるのよ。
でも、中に入ってきてくれないの~」
苦笑される娘さん・・
「まだ、早いってことですねえ。
・・・お願いが一つあるんです。
もし、天国にいって、お父さんに会っていいところだったら
夕立ちを降らせてくれませんか?」
「そうね~、やってみるわ~
でも、できるかしらね~
楽しみね」
その翌週の外勤日の朝・・
お亡くなりになられました。
娘さんが訪ねてきてくださいました。
亡くなる前、
お父さんではなく、
亡くなった犬が迎えに来たと言っていました。
夕立・・あの言葉忘れません。
今日降るかしら、
明日降るかしらと待っています・・
私達がベッドサイドでしたちょっとした会話は
亡くなられても、対話を続けてくれます。
ご家族内では、死、天国などとは、
中々話に出しづらいものですが、
私達が心に壁を持たず、
何気にない会話の様子を観察しながら話にはいると
生きているときに命の繋がりをつくることも
できるものだなあと思います。
その1週間後くらいだったでしょうか
確かに夕立のような雨が降りました。
きっと、娘さん達喜んでらっしゃるだろうなあ・・
ただ、その後は、とにかく暑さが続き
ひと雨来てほしいのに、
パラリとも降らなくなりました。
1回こっきりの約束にしなければよかった・・・
天を見上げては、
ねえ・・お願いだから
もう、ひと雨降らせてよ・・・
とため息をつくこの頃です。
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また、時間がある時に読みに来ますね^^
頑張って下さい^^
そう、そうだと思います。
お父さんとワンちゃんと、今頃つきない話をされていることでしょう。患者さんの趣味は社交ダンスだったので、踊っていらっしゃるかも・・
himawariさん
本当ですね。
雨乞いばかりをしていましたが、himawariさんのコメントに、自分を見直さなければ・・と改めて感じ入りました。
私もこんな最期を迎えられるように元気な今、まわりの人に感謝し、少しでも誰かの為になれるよう生きなければ・・・って思います。
亡くなられても、その方との未来があるのなら、家族はとても救われると思います。
お父さんと、愛犬と楽しく過ごされているのでしょうね。
とても、暖かな気持ちになりました。
ご家族の方々、お元気かなあ・・とふと思い出したりするこの頃です。
今日は、台風で久しぶりに雨が降りました。大雨のため、電車は徐行していました・・
先生との会話で、患者さんも家族の方も温かい時間を過ごされたのだな~と読んだ私もなんだか温かい気持ちになりました!