若い患者さんを診ていたとき
病棟の担当看護師に
「何を一番大切にして患者さんに接している?」
という質問をしたことがあります。
「医師の指示が、間違いなく遂行できることです」
そう回答をもらって、私は肩を落としてその場を離れました。
ある病棟で、その日その日の状況をみて、
ラキソベロンの眠前投与量の調整を看護師さんにしてほしいと話しました。
「では、毎日○滴と指示を出してください」
と言われ、ショックを受けました。
いずれも、私が現在の病院で緩和ケアを始めた頃の話です。
今や、初めの質問をすれば、
生活背景などをとらえたQOLに目を向けたような返事が返ってきます。
ラキソベロンは、幅を持たせた増減が可能な指示を出すと
看護師の判断で増減をしてくれるようになりました。
スキルミクスという考え方があります。
多職種協働と訳します。
従来型の役割分担とは異なり、
重なり合うところを補完しあったり、強化するようなチーム医療です。
例えば、先のラキソベロンで言えば、
医師が出した指示を、看護師が患者に内服援助するというのが従来型です。
医師が出した指示を、看護師が投与量の調整も行うというのが、
近年の補完・強化型-つまり、スキルミクスです。
その他、今までは看護師が行っていた病棟での薬剤管理やミキシングなどを
薬剤師が行うというような例も挙げられます。
この延長線上には、助産師と産科医、看護師の限定処方権など
今後議論になるようなものも含まれてきます。
緩和ケアは、多職種でのスキルミクスでもあり、
医師間のスキルミクスでもある、代表例です。
ところが、「チーム医療」というと、従来型をさすのかスキルミクス型をさすのか
明確ではないため、慣れない医療スタッフ間ではひずみを生じることもあります。
スキルミクスに求められるのは、補完する側の力量です。
ある程度任せることができなければ、事故のもとですから。
10年ほど前に、海外から帰国した次の勤務地は、
がんセンター東病院の緩和ケア病棟でした。
ここでは、すでにこのスキルミクスが完成された形でバランスがとれていました。
その後、病院を異動する毎に、
古いチーム医療のあり方に呆然とすることが続きました。
医師の指示が忠実に実行できることが一番重要なことと返事をもらったときも
ガ~~~ンと打ちのめされた気持ちでした。
が・・
仲間が増え、
少しずつひろがり、
それぞれの専門職としての力量をつけ、
上下関係ではなく、互いに専門家としてのパートナーシップが形成されていき
スキルミクス型のチーム医療が稼動しはじめています。
緩和ケアチームの立ち上げの最終目標は、
病院全体に、
互いの専門性を重複させながら
補完・強化していけるようなチーム医療が
普通のこととして広がることなのかもしれない・・
と・・・
考えているこのごろです。
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さてさてインシデントリポートのことは私も読んでいて悲しくなりました。インシデントリポートはシステマティックエラーを統計的に見出して改善する目的であって個人のプラクティスを評価するものではないのに、、それを理由にするとは、、、。しかし、私個人の意見を述べると、看護師に対する教育不足も関係していると思います。知識がなければ実行することに抵抗があるのは当然だからです。カナダへ来てRNに対する教育の高さに感心しました。専門分野になればなるほどそれは高くなっていきます。もちろん背景には医師不足、RN不足も関係してスキルミクスをせざる負えない状況だからそれが発展しているのだろうけど。
緩和医療の発展は医療チームの全体の発展なしではありえないと思っています。認定看護師が増えたことをうれしく思っていますが、実際現場で患者に接する多くの看護師の教育をもっと積極的に進めていくこともキーなのではないかと思っています。
最後に岡山は私の第二の故郷みたいなところです。以前の職場の同僚で認定をとった看護師からも先生のことはお聞きしました。これも共通点ですかね?!いつか実際お会いできることを楽しみにしています。長々と失礼しました。
責任ある立場に立つことは、やりがいに繋がりますね。インシデントレポートを書きたくないので・・という心理をatusatoさんが書いてくださっておりましたが、改めて考えさせられました。
久々にmissyさんのページにいきましたら、随分変わっておりました。xoopsを使って作られたのでしょうか。私は、高校時代岡山市内で過ごしましたので、ちょっと共通点を見出せました!
おかげでタイムリーなケア(投薬)を患者に提供することができます。もちろんその分、看護師への教育もしっかり行われているのが特徴でしょうか。看護師として日本にいたころに比べ、責任の重さを感じると共にやりがいも感じます。
日本でも早く普及すると良いですね。
責任をとりたくない・・・ん~。医師から指示をもらえば、責任は医師のみか・・遂行者には、その判断で施行した責任があります。レポートを書くという行為が始末書の反省文的な負荷になっているのですね。
パスは、病態評価プロセスを飛ばしてしまうものですから、個別にあわせた微調整を行う緩和ケアにはそぐわないものです。患者さんまで、ベルトコンベアーに乗っているほうが安心となってしまっているなんて、びっくりです。
れいなさん
判断を任せたいけれど、若い看護師さんとなると、そこは医師もがんばらなければならないところだなあって思います。チームの力量をみて、シニアや他職種がその持ち場の重なり具合を調整できるようになれば、本物ですよね。
アメリカは本当に分化しています。IVHを入れる専門看護師がいたり、医師は採血をしたことがないとか。アメリカほど分化しなくてもいいかなあって思いますが、日本の看護師さん達はとても優秀な方が増えてきていて、もっと権限を持っていただいてもいいのではないかしらということも増えてきました。
いちいちすべての指示が必要です。
看護師さんにもよるんですが、大学病院はとかく
若手の看護師が多いので全然ダメです…。
そういう看護師たちが、また新人を教えているので、
なんだかがっかりしてしまいます…。
以前持っていた患者さんの娘さんが
シカゴでnurse practitionerをされている人で、
お母さんがもういよいよというときに帰国し
付き添っていただいていたのですが、
日本のドクターは業務が多すぎますね、と
よく話されていました。
外国で働いたことがないので、話に伝え聞くだけですが、もう少しこういう業務が減ると、もっと患者さんとの時間を過ごせるのになあ、と思います。
(もちろん、自分の時間も取りたいですよね)
1)インシデントレポートを書きたくない。これは、責められる為に書くのではなく、共有し次に生かすために・・・となっていますがやはり、どうしてそうなったのか理由を厳しく問われていました。そのときに必ず管理者が聞くのは、医師の指示はどうだったのか?です。
2)パスの弊害 若い人になぜこうしたのか?と質問すると「パスでそうだったから・・・」と答える人が多いのです。私たちは専門職です。自分の頭で考えよう!と言いたい所をぐっとこらえます・・・
そんなこんなで、判断力、考える力が落ちているように思えるのです。ここをUPするのも私の仕事です。地道に頑張ります。
話は変わりますが、パスの弊害は、びっくりする所に現れました。肺がん4期で化学療法をおそらく毎回パスを渡されて行ってきた患者さんが緩和ケア病棟に来ました。1週間ずっとイライラしていました。ある日爆発しました。「ここは全く説明がない!どんな風に自分がすごしていくのか分からない!」といわれます。話をよーーーくきいたら、「いつからどんな風にモルヒネを使ってとかそういう案内のものはないのか?今まではもらっていた」とパスを見せていただきました。こんな所にもパスの弊害があるのだとびっくりしました。ちなみに、その方には「ここはオーダーメードです」と答えたらしばらくの間何がしたいのか分からず大混乱を引き起こしてしまいました。
医師不足から、にわかに注目されている言葉です。互いの重なり合う役割を上手くすり合わせながら推進しているのが、まさに、緩和ケアチームだなあと思うのです。
栄養は大切です。ただ、数字の追いかけにならないよう、患者さんにとって最適な栄養とはないかということを、生物学的見地に加え、心理・社会的側面、倫理、個のもつ生き様(哲学?)など包括的評価として、連続的な緩和医療に組み込んでいくことが重要だと思っています。
後、私は薬剤師ですが緩和をやるにあたり、栄養も緩和医療の一つではないかと思うのですが、先生のお考えはいかがでしょうか?(出来ればNSTをからめた緩和をやりたいと思っています)
初めてなのにだらだら長文失礼いたしました。