初めてアメリカで緩和ケアの勉強を始めた時のこと。
アメリカは、在宅緩和ケアが9割以上の時代でした。
大腸癌の患者の訪問を終えて
その日ついていたベティに尋ねました。
この患者が下血したら、輸血をする?
食べられなくなったら、IVHをする?
ベティは、あら、まあ・・という表情をしながら
「しなわよ。じゃあ、下血したときどうするか話しましょうか。
赤いブランケットを準備しておくのよ。
血液の赤い色は恐怖につながるでしょ。
それを緩和するために、赤や緑のものをそっと用意しておくようにするのよ」
目から鱗でした。
これが、緩和ケアなんだ・・
医療ではない、ケアの心を感じた瞬間でした。
最近、緩和ケアといいながら緩和医療しかできていない場面に出くわします。
あいかわらず、断りきれない認定看護師の授業も
かなりのウエートが薬物療法におかれます。
まあ、薬剤をつかって疼痛緩和をはかるのは、
専門チームとしては、できて当たり前のこと。
でも、それだけでは足りません。
非薬物的アプローチの引き出しをいくつ持っているか
心理支援の引き出しをいくつ持っているか
スキルではない感情のコミュニケーションは維持できているか
・・・・・・・・・
緩和医療ではない、緩和ケアをもう一度
見直してみたいと思っています。
自宅の机の上のアメリカ時代の写真は
私に警鐘を鳴らしてくれています。
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引き出しをたくさん作るために...(^-^)
できる限りのことをするというのは、できる限りの治療をすることではありません。天秤のバランスを考えながら、、、他の末期患者には適応できることも、時間が限られている末期患者には医療者の満足感だけで、治療を行うことは不適応なのです。
IVもIVHもない、そんな中でも最高のケアはできるのです。
初めまして。昨日いいことがありました。尊敬する先生から、このブログを教えていただきました。
私は卒後9年目、現在大学院4年で研究をしています。中~高校の頃、緩和の世界で働きたいと思って医学部を志しました。まずは救急を含めた臨床の勉強、癌患者さんが多いと選んだ専門科の仕事をしてきて、いつか緩和ケアをメインにしていきたいと思いながら、目の前のことで過ぎて来ました。先生のブログを読みながら初心に帰って、これからどうしていくか道しるべにさせていただこうと思います。
ありがとうございます。
引き出しのヒントがありましたら、是非、お教えくださいね!
missyさん
ただ、今の日本では、ちょっと誤解を生じるかもしれないので、このコメント欄をおかりして、日本の現状での補足させて頂くことお許し下さい。
わたしのとって、この出来事は、目から鱗でしたが、決して、輸血もIVHもない医療が緩和ケアというわけではありません。
もっとも、重要なことは、患者さんを全体で見た時に、一番QOLを向上・維持させることは何かという視点で治療は選択されるべきだと思っています。
特に、日本の緩和ケアチームでは、治療過程にある患者さんを多く見ていますので、そうした時期には、もちろん、輸血が体を楽にさせ、症状を緩和させ、次の治療に繋がっていくことも期待できます。
終末期であってもしかりです。それで楽になることがあれば、日本の緩和ケア病棟では治療の選択肢に上げ、患者さんご家族も含めたチームで話し合いがもたれ、選択されていきます。
ここで、お伝えしたかったのは、輸血やIVHより、赤いブランケットがよいということではなく、輸血やIVHにとどまってしまう緩和医療だけでは、真の緩和ケアではないということです。医療の提供に並行させて、必ず、そこにケアの視点がなければ、緩和ケアではない・・というメッセージだとご理解ください。
junさん
お立ち寄りくださり、ありがとうございます。
ここを尊敬される方からご紹介にあずかるとは、本当にありがたいことです。
是非、研究の手法を持ちいて、緩和ケアを向上させていくために、お力をお貸し頂けますと嬉しいです。
しかしながら疾病が進行して輸血によっても症状緩和ができなくなるときがあります。そういう時に何ができるか、避けがたい死を前にして、何ができるのか、それが言いたかったのです。
緩和ケアはあきらめのケアではありません。何もしないことが緩和ケアでもありません。輸血やIVH以外にもできることがあるのです。一日も早く日本でもこれが当たり前のこととして、医療者間に普及することを願っています。
少し、ずれていますが、輸血に関して苦い経験をした話をTBしておきます。
不安に対する配慮と対応に本人のみならず、家族もホッとする心の込められた行動である事を感じます。薬剤だけでは人の心身は緩和する事ができない……、赤いブランケットはそんな不安を癒しに変えていく効果もあるのでは…と思いました。
先生、ご無沙汰しております。お元気でいらっしゃいますでしょうか……?
このベティの話をする度に、実は、いつも思い出す顔がありました。なんと、偶然にも、このコメントをくださったkokkoronさんでした。ベティと共通するケアの心をもった方として、いつも連想していました。那須に、亡くなる直前の女の子を一泊で連れて帰ってくださったこと、お風呂にいれてくださったことを、よく思い出します。
kokkoronさん、元気ですよ。あなたのことを思い出さない週はないくらい、気持は身近にいます。こんな時、あなたなら、どうするだろうとよく思いを馳せています。