緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

なぜ、モルヒネで鎮静をかけてはいけないのか・・

2007年04月21日 | 医療

4月20日のアビシニアンさんからの質問です。

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>「じゃあ、モルヒネでセデーションして何が悪いの?
 耐えがたい苦痛を感じさせることの方が罪悪なのでは?」
 と(もし、万が一)言われたら、なんと答えるべきか
 今でも悩みつづけています。

この質問、実は、講演させて頂いた数箇所で頂いています。
ある意味、現場ならではの的を得た質問だと思います。

オピオイドの理想的な至適量とは
眠気がなく痛みもない量です。(あくまでも理想です)

モルヒネで鎮静をかける(眠る)とは
それ以上の多い量、つまり過量にして鎮静を得る状態となります。

意図的にモルヒネで眠りを作ろうとするということは
過量にして副作用領域にもっていくことを意味することになり
安全域を超えることになります。

ですから、鎮静をかけるなら
鎮静剤ーつまり良い眠りを作る目的の薬剤で
安全に目的を達成すべきだと思います。

ただし、意図的に過量にしなくとも
全身状態から鎮静状態になってる場合もあり
モルヒネを使っていて眠ってばかりいるから
副作用領域かというと必ずしもそうではありませんので
どうぞ、誤解のありませんように。

 

>ただ、そこに「疼痛緩和=積極的安楽死」という
 妙な考えが芽生えてしまうのが怖いのです。


モルヒネなど症状緩和薬を
これを使用すると命が短くなると思いながら
用いることは倫理的に問題があると思います。

“症状緩和のために用いた結果
副次的に生命の短縮をまねくような場合”
これは、実は間接的な安楽死の要件の一つにあたります。

ですから
「オピオイドを用いると呼吸が止まるかもしれません」
などといった説明をするべきではありませんし
そのような意識で薬剤を投与してはいけないと思っています。

病状が悪いときにオピオイドを用いなくてはならない場合は
「オピオイドを用いるとき、副作用には細心の注意を払いますが
全身状態がすでに悪いため
一つ階段をおりたように悪化することがあります。
病状がとても悪い状態だということをご理解ください」
というような説明をし、
そして、言葉の通り
私たちは細心の注意を払っていくべきだと思っています。
具体的には、呼吸数が10回/分を維持すべく
薬剤の微調整を行っていきます。

アビシニアンさん・・回答になっていますでしょうか・・・
皆様のご意見も是非に・・

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ありがとうございます。 (アビシニアン)
2007-04-22 03:41:00
>「オピオイドを用いると呼吸が止まるかもしれません」
などといった説明をするべきではありませんし
そのような意識で薬剤を投与してはいけないと思っています。

ありがとうございます。
僕もまったく同じ考えです。

もっとオピオイドに対して説明責任があると思いますし、患者に対して、オピオイド以外でも、薬物以外でも、できる限りのケアを行う必要があると思っています。まずは「話す」ことです。「聴く」ことです。...と思っています。

こらから記載する事柄は、すべて架空のこととお考えください。少し過激です。
僕のせいで、このブログになにかしら迷惑がかかっているような気がします。しばらく自重、自粛をしたいと思っています。今回だけ...
おそらく、権限により削除することも可能だとおもいますから、必要により、...お願いします。

医療用麻薬を用いるときに、「呼吸が止まるかもしれません」と説明することは、ある意味必要なインフォームドコンセントだとは思うことは思うのですが、実際には、どういうことか?と思ってました。「どうにも除痛ができない場合は、呼吸を止めることをするかもしれません。なにせ、"麻薬"を使いますから」と同義(これはいいいすぎでした。削除)。
今まで、抗がん剤を使っていて、医療用麻薬も使っているのに「これからは緩和ケアを行います」という記載も、今までは緩和ケア(精神的ケアも含む)を行っていなかったのか?今後は「患者として」「尊厳ある人間として」診ないのか、とも感じていました。
「痛み自制内」という記載は、痛みを我慢している状態を放置している状態。どの部位がどの程度痛いのか、どんな風に痛いのか、という痛みの場所、痛みの質、痛みの量がわからない。

問題は、それらをあたりまえのように感じ、考え、「記録」している「現実」にあります。

緩和ケアは、に全く興味のない医療者も多いのが現実です。緩和ケアに興味があっても無意識に、「緩和ケア= ○○的安楽死」と考えている医療者もいることも「現実」だと思っています。医療者の中で緩和ケアの勉強会に参加していない職種で一番多いのは「医者」だとも思っています(技術職を除いて。僕は病棟薬剤師を技術職と思っていません)。

決して医師を否定しているのではありません。医療を行う上でのプレッシャー、(法的)責任、過量な仕事量...
その中で、一人の患者に対して行うケアは、医師一人で支えることはできないと思います。
有賀先生が、鎮静を行う際に、医療スタッフや家族の総意を聞いて、総合的に判断されていることが、僕の中では一番グッときました。(うまい言葉がみつかりませんでした...)
有賀先生が、何気なく行われていることが、実際の現場で行うことができたら良いのに...と思うことが、このブログをみていてしばしば
です。

薬剤師の視点からみると、
"麻薬" = "最後の最期に楽にしてあげる薬"という旧態依然としたある意味「切り札的存在」として扱われるのが、納得できなかったりします。

たくさんの良い薬、たくさん治療方法を学んできた医療者、病気を治すことが一番大事と考え、病気が治せないことを敗北と感じ、治せない疾患からは"目をそらす"、"呼吸がとまるかもしれません"、"麻薬ですから"、"非常に強い痛み止めです"、"眠るように楽になります(誰にとって?)"、"点滴はつづけます"、"栄養が足りないので、すこしでも「がんばって」食べるように、一口でも、もう一口でも(NST)" 、etc...

なにかが違うと思っていました。

「知らないことは何も悪いことではないが、知ろうとしないことは一番の罪悪だ。それが医療者であれば犯罪だ」
僕の一番最初の恩師の引用です(一部改変)。

一番、つらいのはもちろん患者や家族ですが、その次につらい想いをするのは、「知ろうとする」看護師です。さいわいなことに(?)薬剤師は「知らないふり」をすることができます。看護師さんは「知らないふり」をすることができません。よく、個人的に僕に対して、鎮痛薬の使い方、症状緩和の方法、鎮静について、聞いてきたりします。「知ろうとする医療職」の仲間を増やそうと思っています。トップダウンよりボトムアップ。

この記載、愚痴ではありますが、希望でもあると思っています。
そして、その場しのぎのテクニックより、医療職の「良心」を信じることからチーム医療が始まると思っています。僕がいうチーム医療とは、同施設内だけでなく、施設を越えた「仲間」です。まずは、「話す」こと。そして「聴く」こと。
逆でした。まずは、「聴く」ことです。そして「話す」こと。

などと、僕の頭の中の「妄想」を解放してしまいましたが、お耳ざわりでしたら、聞き流しててくださいませ。

それでは、しばらくもぐります。

ありがとうございました。
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まあ (aruga)
2007-04-22 21:38:13
日頃のルーチンワークになれてしまっている事への警鐘と感じました。原点に立ち返ることを思い起こさせて頂いた事、大変貴重なことでした。ありがとうございます。
ニックネームにも色々あってかまいませんので、そう言わず早めの浮上お待ちしています!
返信する
Unknown (南雪)
2009-08-06 14:12:00
はじめまして。突然不躾なコメント大変失礼致します
いろいろ調べたり悩んだりしたのですが、わからなくて…
教えて頂けるとありがたいのですが、こちらはそういう場ではないのかもしれません
無視して下さっても構いません

母が他界しました。
白血病の2回目の再発、治療はうまく行かずいつ急変するかわからないと言われていました
認知症でもあったし、とにかく寂しい思いをさせたくないと
仕事を早めに終わらせ、泊りがけで付き添っていました

その日の朝、徐々に衰弱してきた感はありましたが大丈夫そうだったので仕事に出かけました
午後に戻っても朝と変わらない様子でしたが、夕方呼吸が苦しくなり、ナースコールで看護師さんを呼ぶと
「呼吸が乱れるから…モルヒネの量を2から1に減らします。」とおっしゃいました
昼に「モルヒネを栄養の点滴からではなく、生食に入れる」とは聞いていました
別の看護師さんが「この薬を使うとどうなるか聞いていたかな?」とおっしゃいました
発病時苦しんだらモルヒネを使う事に同意はしましたが
モルヒネについての説明は受けていませんと言うと
その後主治医から呼ばれました。
複数の看護師さんが呼吸が乱れるとおっしゃっているから
モルヒネのせいではないのか?と問うと「体の中で何が起こっているのかわからないから、そんな事を言われても困る」とおっしゃいました。

長々とすみません。お尋ねしたいのは

家族に説明もなくモルヒネを使っても良いのでしょうか
(カテーテルからの場合の呼吸が乱れる確率は?母は特別だったのでしょうか)

痛みのない患者に対してのモルヒネの使用はありますか?
(口内炎で口に物を入れると痛がりましたがそれ以外の痛みはありませんでした)

・・・もしかしたらモルヒネを使わなければもう少し生きながらえる事が出来たのではと悔やんでしまっています
よろしくお願い致します
返信する
南雪さん (aruga)
2009-08-08 00:16:57
お母様をお看取りになられ、計り知れない悲しみを感じます。

ただ、薬剤をはじめとする治療は、個々の患者さんの背景で異なります。風邪薬であっても、しかりです。
ですので、ここでは、患者さんの個別なご相談は控えさせて頂いています。

何よりも、かかわられた医療スタッフに説明してもらうことが大切だと思います

お力になれず、申し訳ありません。
返信する
突然すみません。 (al)
2014-10-03 12:45:03
初めまして。alと申します。突然すみません。モルヒネ 緩和ケアで検索していたところ、貴ブログを発見しました。参考にさせていただいております。
現在、73歳父親が末期の肺ガンにて入室、病院の緩和ケアチームに見ていただいております。本人は疼痛よりも呼吸苦を訴え、夜は眠れず坐位のうつらうつらしています。これを見て主治医は、モルヒネ持続注射をしきりに勧めてきますが、副作用として「呼吸抑制、場合によっては呼吸停止がある」と言ってきました。また、本人はここ数日、食事もとれずオムツ着用になってしまったりで、メンタル面もかなり落ちています。そこでもまたモルヒネ持続注射をと勧めてきます。眠らせれば本人も家族も楽になるからと言います。こちらの記事と全く逆のことを言っていて、眠らせれば病院も管理しやすいと言わんばかりに聞こえてなりません。
やはりこれっておかしいですよね…突然すみませんでした。
返信する
alさん (aruga)
2014-10-04 16:02:41
患者さんの状態によりますが、基本的に、呼吸困難感の治療薬は、モルヒネです。

肺がんで呼吸苦がおありで、お辛そうな状況に対しモルヒネの投与を推奨されたのではないかと思います。
モルヒネで眠らせる(鎮静させる)のではなく、モルヒネで呼吸の辛さが和らげば、夜も少しは横になれるようになって、眠られるようになるという意味ではなかなったのでしょうか。管理のためではなく・・

ただ、呼吸困難感といっても、その時の身体状況が大変悪化している状況では、モルヒネで命が短くなるというより、病状の進行が重なってしまうという意味を含めて説明することもあります。

あくまでも、これは推測なので、お父様の場合に一致しているかどうかは、主治医にご確認いただけるとよいと思います。

今回、頂いたコメントで、医療者がわかったつもりになっておこなっている説明は、実にわかり辛く、誤解される説明をしてしまっていることを気づかせてくださったように思います。
本当に、勉強になりました。呼吸苦とモルヒネのレクチャーをするときに、眠れるということと眠らせるという言葉の違いをもっと意識して丁寧に言葉をつかおうと啓発していきたいと思います。
本当に、ありがとうございました。

お父様が、少しでも辛さが和らぐ時間がありますように。
返信をもっと早く必要とされていたのではないかと心配しつつ、返信が遅くなったことをお詫びいたします。
返信する
ありがとうございます。 (al)
2014-10-05 18:31:12
aruga様
返信遅くなり申し訳ありません。
通りすがりの私のようなものの書き込みに対し、丁寧な返信をくださり、ありがとうございます。
モルヒネ持続注射の意味について、誤解が解けた感じがします。気持ちが楽になりました。緩和ケアチームの担当看護師に相談してみます。
病状の悪化との絡みで、実施結果が芳しくなくなることもあるとのことで…
自分の周りの人たちから、モルヒネ持続注射始めて会話ができなくなった…などと聞くと躊躇してしまうのですが、きちんと病状を聞けば、誤解せずにすむと思いました。


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alさん (aruga)
2014-10-05 20:52:12
度々のコメント、ありがとうございました。
alさんに言葉が届いていることがわかり、本当に、安堵しました。

お書きくださっている通りです。
病状がどのような状況か、知ることはとても、大切なことです。
お父様が、少しでも、楽な時間が過せますように。
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