緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

尿素窒素100からの甦り

2009年09月07日 | 医療

3年以上前の依頼から。

肝がん、門脈閉塞、肝障害、腎障害(BUN100以上!)
予後は日にち単位で病状が動きつつあるような状況でした。

著しいダルさと意識レベル低下。 
主治医から、何とかなりませんか?と。




う~ん。

予後日単位でのダルさは必然的な症状・・、
BUNが100以上なら、意識混濁もあって当然のような身体状況・・
と説明しつつ、ベットサイドへ。 

2日前から、フェンタニル静脈投与が
全身の苦痛を除去することが目的で開始されていました。 

と、呼吸回数をみると、10回以下の不規則性あり。
著しい肝障害によるフェンタニル代謝遅延と判断しました。

これも、意識レベルの低下やダルさを後押ししていそうです。


下肢浮腫著明であることから下大静脈の閉塞や圧迫も推測され
この薬剤代謝の遷延から
肝機能障害に加えて、門脈閉塞も予想されます。


幾つかの病態が考えられ、ディスカッションすること30分。







一旦フェンタニルは止めて、

呼吸数が10回以上になったら
1/4量から開始としていただくこととしました。

で、ステロイドを開始。

抗炎症効果が高く、持続時間が長く、
ナトリウムなどに対するホルモン作用が生体に近いということで、
ベタメタゾン 4mg 朝 静注としてもらいました。

ただし、依頼日はまだ午後3時だったので、すぐに一度ワンショット投与で明日につなぎました。

一応、院内の一定の線引きとして
生体のステロイド分泌日内変動にあわせて午後3時までの投与としています。







で、その翌日・・・
主治医に会ったら。

「先生~ありがとうございます!!
 びっくりするくらい甦ってくれました!!!」



結果的に、蘇ってくださったのは
3日間程度しかありませんでしたが、
その間、ご家族で話合うことができたのだそうです。




こういうのって、本当に嬉しい!

でも、薬剤はちょっと手伝っただけ。 

その人に甦る力があったからだったのでした。 



人間は、どんな状況にあっても、
生きている以上、
必ず健やかな所はあるものなのです。
そこをどれだけ支援できるかなのです。


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2 コメント

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ほんとにうれしい! (jun)
2009-09-09 22:02:34
”こういうのって、本当に嬉しい!でも、薬剤はちょっと手伝っただけ。その人に甦る力があったからだったのでした。”がさすが先生!
それだけじゃないですよー!患者さんもご家族も、主治医さんも、先生の一言に出会えてよかったですねー!
状況が正確にわからないから不適切かもしれませんが、最初の主治医さんの言葉に”なんとかならないか、というか、時期的に仕方ないしそのほうが楽かもしれないでしょ”と思ってしまいましたが、違いました。
薬をやめる、で改善した経験はあったと思いますが、ステロイドの併用が勉強になりました。
お話できる時間ができてよかったです。
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junさん (aruga)
2009-09-09 23:50:47
>出会えてよかったですねー!

私自身、BUN100でも、肝障害があっても、適材適所の薬剤は、ここまで効果的なんだ・・と患者さんを通して教えてもらえました。
私こそ、出会えてありがたかったです。

難しい状況でも、何とかならないかと主治医が依頼をくださるというのは、何とかするかもしれないという期待を持って頂けてるのかなあと、これも嬉しいことでした。

一緒によろこんでくださったjunさんに、心から感謝です。
返信する

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