一人なんです。
がんに薬が効かなくなるかどうかって、もういいって思えるけれど、
これから先に、お金のこと、家のこと、どうやって生活するかってこと、心配で心配で不安なんです。
ご高齢のがんの患者さんで
こんな風におっしゃる方は少なくないものです。
80歳を超える位の方で、何とかご自身のことはまだできているけれど、先が見通せなく漠然と不安が高まっているような方です。
不安な訴え → 適応障害・うつ → 抗不安薬や抗うつ薬
寝むれない → 不眠症 → 眠剤
と、安易に薬物処方で終わらせないで、なにが不安なのか、なぜ、眠れないのか、問題の整理がまず必要です。
尋ねてみると・・
自身のお金の管理、家の始末、お墓の手入れ、日々の生活を継続すること、家族の負担にならないこと、動けなくなった時、自分で判断ができなくなった時、様々な心の底にあることを話してくださいます。
自身のお金の管理、家の始末、お墓の手入れ、日々の生活を継続すること、家族の負担にならないこと、動けなくなった時、自分で判断ができなくなった時、様々な心の底にあることを話してくださいます。
そうしたことを考えていると、夜は眠れなくなってしまうとも・・
ソーシャルワーカーさんにも知恵を借り、社会資源をどのように活用するか、地域の福祉の方、行政の方、社労士さんや司法書士さん、時には弁護士さん方につないでもらうことも。
一つ一つ動ける内に、
自分で判断することに疲れを感じない内に、
取り組める内に、早めに転ばぬ先の杖を・・
(暑い日々なので、涼の写真を・・BrunoによるPixabayからの画像 )
一方で、
家族信託や後見人制度などを活用し、何かがあっても、すでに、対応が可能な状況をきちんと整理されている方もいらっしゃいます。
それでも、とても、不安で不安で、寝られないとおっしゃる場合もあります。
気持ちを聞いてみると・・
様々な理由がありますが・・
その中の一つに、
認知力の低下が原因ではないかと思うことが
何人もの高齢の患者さん達との対話の中で感じられます。
抱える問題を整理しきれない。
対処が終わったことを忘れてしまう。
家族と一緒に決めたのに、決めたこと自体を忘れてしまう。
あれ・・これはどうだったかなとふと思ったことが、過去にすでに決めていることで解決できることなのに、それをつなぎ合わせることができず、新たな不安になってしまっている。
などなど・・
認知力が低下するというのは、記憶の問題だけではありません。
あることと別のことを適合させ比較してみたり、一塊になっている問題を整理したりという高度な精神活動を時に求められるため、結構早い内に漠然とした不安を抱えていることがあります。
こんな時は、一つ一つ一緒に書き出してみたり、to do リストを作ってみたり、終わったことの消去をみえる形で残しておき、何度も見ることができるようにしたり。
緩和ケアの看護師さんたちがこのような支援をしてくれることもあります。
特に、医療でできることと、できないことの整理、そして、できないことは誰に相談すればよいかといったことの情報を提供することは、医療であっても生活までを領域にする緩和ケアの大切な役割になります。
終活ノートと呼ばれるものもありますが、
一緒に書き出していくことの意味を本当に感じます。
高齢な患者さんが
不安や不眠を主訴に
緩和ケアチームに
依頼された場合
単に
抗不安薬や眠剤を
処方したりするのではなく
その前に
しっかりと話を聴くこと
問題点の整理をすることが
とても大切であることを
強調したいと思います。