腹痛を外来で!シリーズ 最終回です。
トレドミンをお渡しした翌週・・
いつもは車椅子のAさんが
歩いて外来に!
驚きで笑みがこぼれました。
食事は?
「まあ、こいつの腕はよくないんですけど
美味しんですよ」
食べられるようになったのは
それは妻の腕の所為だけではなく
薬剤が体にあっていると
謙虚におっしゃりたかったのだと思うけれど
まあっと、ばかりに
奥様と目を合わせて嬉しい苦笑・・
お通じは?
「ええ、出てます。
ちょうど良い具合に毎日。
渋ること?もう、ありません。
色も付いています」
胆汁はやはり腸へ流れ続けてくれている様子です。
痛みは?
「お蔭様で、全然。
アンペック坐薬は使わないで
ほとんど大丈夫です。
薬はきちんと飲んでいますよ」
吐気は?
「ないです」
夜はお休みできますか?
「明け方の腹痛がなくなりましたから
朝まで寝られるんですよ」
今の生活は、いかがですか?
「少し、散歩してみようかなって
思うようになりました。
いいでしょうか?
足も弱らないようにしたいし・・」
お隣に座っていたご家族は、
「あんなに気力を無くしていた人が
痛みもなく、こんなに調子がよくなるなんて
夢見たいです」
「TS-1が始まって
効き目が出てきたのかもしれません。
アンペックは切りましょうか。
高カロリー点滴の管も抜けるかもしれません。
これからは、がんがどうかというより
高血圧など年齢的に起こりえることを
防ぐと言う意味でも
健康であることを目指しましょう。
散歩は是非ゆっくりとなさってください」
この日の処方は
リンデロン(0.5mg)2錠/日から1錠/日に減量しました。
正直ここまで
体も心も回復されるとは思ってもいませんでした。
症状緩和だけではこうはいきません。
経口抗がん剤を開始できたことが
大きかったと思います。
ただ、あのままでは
抗がん剤は開始できませんでした。
上手に症状をとって、がん治療につなげる・・
医療用麻薬をはじめ、色々な薬剤を適切に使用することで
治療に戻れた患者さんは、少なくないのです。
(おわり)
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私も夫(頚椎C4浸潤のがんにより麻痺あり)や友人(大腸がんにより腸閉塞)を通して、このことがとても大切なことだと知りました。
普段何気なく生活していると痛みも食事ができない辛さも気がつかないけれど、これらのことによりどれだけ生きる希望が与えられているのかを感謝せずにはいられません、また、先生のようにそのことを大切に思っておられる先生がおられることにも感謝します。
私の存在を感謝と言っていただけるなんて、どのような言葉で感激を伝えればよいのでしょう。
あたりまえのように過ごしてきたことを失いそうになって、その意味を認識するというプロセスは、時に、病気になって初めてわかった、病気になったことをある意味感謝しているという表現に至ります。
そのような患者さんと寄り添える立ち位置を与えられたからこそ、気付くことができたのでしょう。沢山の患者さんから託されたメッセージは、私の宝物なのです。
ゆきんこさん
これは、タイミングなのです。
あと数週後でしたら、薬剤調整に体はもはや反応しなかったでしょう。
訪問看護師さんの絶妙な判断があったからこそ、薬剤が生きたのです。
私の周りでも、最近、遅い!と喝を入れることが増えてきました。相手は進行がんなのですから・・
こういうのは患者さんの気持ちとタイミングに気付く、人間性でもあると思うんですよね!
経過にも感激、先生方の治療にも感激です。
お褒め頂き・・・頂いた言葉を裏切らないように、人間性を磨かねば・・と焦るばかりです。
ここでは、これ以上の個々のご相談は控えさせて頂いています。
どうぞ、ご理解のほどお願いいたします。