内科病棟で勤務されている看護師さんから
他科のターミナル期の患者が増え
主治医も、ペインクリニックの医師も頑張っているのだけれど
患者さんがパニック、不安になった時の対処法について
患者さんにどう言葉をかけてあげればよいか悩んでいらっしゃるとの
コメントを頂きました。
色々な回答があると思いますが、
私であればどうするか、という視点で少し整理してみました。
パニック、不安になった時、
その不安が石のような塊として感じられるようであれば
解決の糸口がみえてきません。
ですから、不安なことを、言語化できる状況に
まずは持っていくことが重要になります。
つまり、カウンセリングができる状態かどうかの判断をするわけです。
言葉のキャッチボールができない時は、その原因を探ります。
せん妄で、混乱をしているようでしたら、その混乱を解決すること。
例えば、高カルシウム血症が背景にあり、混乱に不安がのっかっているなら
まずは、高カルシウムの治療をします。
すでに、うつの状態であれば、
言語化することそのものが心理的負担になってしまうこともありますから、
抗うつ薬を併用しながら、話せる時がくるまで、
患者さんが心地よいとおもってくださることを続けていきます。
その他、疼痛、呼吸困難といった身体症状が強い場合なども
まずは症状緩和を先に重点をおくこともあります。
患者さんから、少し落ち着いて言葉を発してくださるようになりましたら
コミュニケーションの基本的なスキルを使って
会話を進めていきます。
代表的なものは、
患者さんの訴えを、繰り返し言葉にして返してみる方法のリフラクションと
と5W1Hで始まるオープンエンドクエスチョンです。
一例をあげます。
何だか、不安でしょうがなくって・・
何か、不安だと感じられるのですね。
それは、どんなお気持ちなんでしょう。(どんな~Howで始まる質問)
色々考えるとぽろぽろ涙が出てくるんです。
そうなんですか。涙が・・
色々考える時、どんな人のお顔を思い出されますか
子供たちと、この間退院されたお隣の方です。
お子さんたちのことを考えるときのことを伺ってもよろしいですか?
はい。
子供たちは、よくやってくれるんです。
でも、迷惑をかけているんじゃないかなあと。
迷惑にならない位、自分で色々できればよいのですが。
時々、もうダメなんじゃないかと思うこともあります。
それは、どのような時にお感じになられますか?
お隣の方はお元気に退院されました。
でも、その前の方は、本当に辛そうに退院されたんです。
私も副作用が辛くて、全然効いていないじゃないかと思うこともあります。
自分も辛そうに退院された方のようになるのかなあと思って。
このくらい、患者さんが話をしてくださると問題が整理できるようになります。
現在の不安は、
化学療法の副作用で
身体的に改善しているという手ごたえが患者さんの中でつかめていないことから
死を予感したり、
以前同室だった衰弱した方の記憶がよみがえったりしているようです。
また、そのことが、
今後お子さんたちの手を煩わせてしまうのではないかということにつながり
さらに、不安を増幅している可能性があります。
とすると、副作用と効果について現状をご本人の不安な部分に焦点をあてて
説明し、話し合うことが必要になります。
このことについては、さらに、また、次の機会に書きたいと思います。
こうしたプロセスの目的は、
石の塊のような不安を、ほぐし、整理することにあります。
そのことによって、
解決できること
解決は難しいけれども対処する方法やケアプランを立てること
などに医療スタッフも整理でき、
パニックや不安な患者さんに
何もできないわけではないという感覚を取り戻すことにつながると思います。
ただ、根本のところで、私達は、
死に直面された患者さんの問題を解決することができる・・というほど
そうした問題は簡単ではないということを知っています。
このことは、
”何かができるわけではない”
というより
”できないとあきらめるのではなく、それでもできることを探し、傍に居つづけること”
これが、緩和の心だと思っています。
その後、穏やかに話して下さったとコメントに入っていました。
このような日にこそ、
「先日は、お辛そうにお見受けしましたが、
その時は、どのようなお気持ちだったのでしょう。
もし、差し支えなければ、少しお話いただけると
私たちも一緒に考えさせていただけるのではないかと思うのですが」
と、投げかけてみて頂けると嬉しいなあ・・・
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医者に対しても不安になります。
見捨てられたのではないかと。
そんな時、看護婦さんが否定するわけでなく
ただただ、”何で?”とやさしく聞いてくれて、
”大丈夫よ”と励まされました。
その次の診察で、先生の態度が変わり
いつもよりやさしく接してくれました。
ポロリと”考えすぎちゃったね。”と言ってました。
難しいことはわからないけど
すごくうれしかったです。
ただただ、聞いてくれること。
大切なことですよね。
かぼちゃさんのお話しに、また、格別の嬉しさを感じました。
> がん患者は死後の世界や霊魂、生まれ変わりなど「伝統的死生観」を持つ割合が低いことが14日、東大病院放射線科などが患者や医師らを対象に実施した調査で分かった。
逆だと思ってました。。。
興味深く読ませていただきました。
コミュニケーションの基本的なスキルは知識として持っていることと(8割は傾聴とか)、
実際に患者さんの心を開いていただけるような言葉のキャッチボールができるというのは全く違いますよね。
私が実際の現場に立つまでまだまだ長いですが、
先生の書かれたような患者さんとのやり取りが出来るかどうか、不安です。
悩みの相談をされると、
相手の不安や悲嘆に感情的に同調する
or考えた最善策を無機質に伝える
のどちらかのパターンしか取れない自分に能力不足を感じます。。
日常生活の中で、反復とオープンエンドクエスチョンを練習することで改善していければよいなと思っています。
先生はどのようにして今の境地に達されましたか?
お時間のあるときにコメントいただけるとうれしいです。
臨床現場に出て、悩んで、勉強して、その繰り返しの中で培っていくものと、加えて、専門的なスキルトレーニングを受けることの積み重ねだったように思います。
私は、飛躍的にスキルアップしたなあと感じた時があって、それは、ダギーセンターという大切な人を亡くした子供たちを支援するグループのトレーナーによるトレーニングコースを日本で受けたときでした。でも、そういうトレーニングを受ければうまくなるわけではなくて、それまで、緩和ケア病棟で苦労をしたことが目を開かせてくれたと記憶しています。
今、記事に書いたようなやり取りができることが学生さんとして大切なわけではなく、むしろ、アレッと気づける感性であったり、人が悲しいと感じていることを、悲しいんだと気づくことができるような他者の価値観で感じ取ることができる力や幸せだと実感できる心を持つことなどが大切なのではないかなあと思います。
同調することと、他者の価値観で感じ取ろうとすることはちょっと異なりますよね・・
何よりも、コメントくださったように、探究的にこれからやるべきことを見出そうとなさっていること、そのこと自体にとても、意味があり、素晴らしいことだと思います。今、何年かぶりに医学教育の場に戻ってきましたが、医師を目指しているりころさんの姿勢に触れることができて、とても、励まされ幸せな気持ちです・・
(頂いたコメントが一時トラブルでアップできない状況になったのですが、他のルートから探しあてて、手作業でコピーペーストしました。投稿してくださった時間が違っていたり、タイトルが消えてしまったこと、本当に申し訳ありません。)