緩和ケア病棟のようなベットを持たない緩和ケアチームは
収益は、緩和ケアチーム加算が主になります。
処方は、基本的には主治医側に依頼する支援チームですから、
緩和ケアチーム加算を算定しない場合は、
直接収入がない、ボランティアチームです。
(間接収入はあるのですが、直接数字に出てこないのです・・・)
このことを、病院経営学を専門にしていらっしゃる大変高名な先生に
うかがったことがあります。
無収益な緩和ケアチームは、病院経営学の立場からは
どのような位置づけになるのでしょうかと。
「病院経営の最終目標は、どれだけ収益をあげたかということではありません。
もちろん、それは大切なことですが、病院経営の一部にすぎません。
最終目標は、
組織目標をどれだけ達成することができたかどうかということです。
一つ一つの病院が、どのような病院として有るべきか
ビジョン、つまり、組織としての目標を掲げた時、
緩和ケアチームが、その組織の中の一員として
組織目標の達成のために何をなし、
どのような結果を出していったかということが
評価をされるわけです」
目から鱗が落ちたような気持ちでした。
私が、緩和ケアチームの立ち上げを始めたかけだしの頃の出来事でした。
所属する病院が、ビジョンを持っていること
そのビジョンを達成するために緩和ケアの立場でどうあるべきか
自分の思い描く緩和ケア と 組織に求められる緩和ケア と
その狭間で自分を調整していくことを学ばされた出来事でもありました。
色々な方と話をしていると、
この時の記憶が鮮明に蘇ります。
この考え方は、組織医療人としての一つの価値尺度のような気がしています。
最新の画像[もっと見る]
- インフルエンザA型(H1 pdm09)が増加中 2日前
- インフルエンザA型(H1 pdm09)が増加中 2日前
- 病院から医療者が離れていく・・ 1週間前
- がんを学んだお子さんからがんになった親御さんへのギフト 2週間前
- 引き下がれないわけだわ・・マイナ保険証一本化 3週間前
- 引き下がれないわけだわ・・マイナ保険証一本化 3週間前
- 男女のギャップを一気に縮めたアイスランドの1日 1ヶ月前
- 男女のギャップを一気に縮めたアイスランドの1日 1ヶ月前
- がん疼痛の治療・ケアはその先にあることを見据えて 1ヶ月前
- 20年近くぶりの再会 1ヶ月前
昨年は大変お世話になりました。
今年もよろしくお願い致します。
そうですね、数字に出てこない部分を大切に
考えられる経営者の下で働けるのは幸せな事ですね。
それは現場を信じてくれている事でもあると思いますので。
予想外の渋滞や事故、空腹でいらだつお客、写真と似ていない顔といった予測不能の要素に直面したとき、瞬時に対応しいくつもの手順を実行します。
高度な教育は必要ないため、技能程度の低い仕事に分類され、移民などの低賃金労働で支えられています。
急性期大型6病院7病棟でおこなわれた1分間タイムスタディーでは、療養上の世話が43.1%、記録・連絡・報告・研修など33.3%、専門的看護は22.6%でした。
療養上の世話の多くが、技能程度の低い人手を要する労働で、仮に「繰り返し単純労働」としておきます。
患者の入浴では全身の皮膚を観察し、温熱による循環動態の変化観察やフットケア、スキンケアがおこなわれますが、繰り返し単純労働です。
看護から繰り返し単純労働を切り離し、別の職種がおこなうことで病棟業務の生産性が高くなります。
モジュールとは構成物アーキテクチャーの単位として機能する集合体です。
半自律的なサブシステムで他のサブシステムと一定のルールで互いに連結することにより、より複雑なシステムを構成するものです。
半自律的なサブシステムに分解することをモジュール化といい、連結ルールの下で独立に設計されるサブシステムを統合して複雑なシステムを構成することをモジュラリティーといいます。
病棟業務のモジュールとして確立しているものに、リハチーム、NSTがあります。
病床当り職員数が増加し、病棟に常駐するとリハチームもNSTも日常業務に組み込まれることで業務内容が変化して来ています。
リハチームでは100床当り5名を超えた時点で、専門的な訓練と並行して繰り返し単純業務を含む日常業務をおこなうことが可能な人数になりました。
管理栄養士は病棟に1名以上配置した時点です。
人数が少なければ専門性の高い業務しかできませんが、人数が増えると周辺の業務まで活動が広がり、繰り返し単純労働の比率も高くなります。
医療の高度化で増えてきた重症の患者では、療養上の世話とされていた業務に技能程度の高い医療技術職を必要とするようになって来ています。
病棟のケアが高度化して日常業業務に組み込まれていく段階で、医療技術職が繰り返し単純労働に参加していきました。
VHJ グループのうち循環器を中心に救急応需をおこなっている12病院の、07年100床当り職員数は276名から141名で平均202名です。
年間救急受け入れ患者数が9894名から4116名で平均5775名ですから、夜間の業務量を考えると病床当り職員数を増やしていなければ応需出来ません。
看護基準がありますから看護職は救急とは関係なく一定数になっていて、増えている職種はリハ、栄養、薬剤、臨床工学技士などの医療技術職です。
医療技術職は診療報酬を得られる業務が多く、マイナス改定の中で業務量が増える中、医療技術職の数が増加していました。
一方、報酬が得られない助手の比率は低下しています。
経営的にはモジュールとしての緩和ケアチームも専門的看護の一部を切り離して、高度の専門性追求と、病棟日常業務への負担軽減が望めます。
病院という組織の一部分だけ見て、売上を考えると個別最適化で、全体最適化を失うことになります。
緩和ケアという高度の専門性と時間を要する業務が日常業務に障害を及ぼすために、おこなわれてきていないことが病院の価値を下げているのであれば、ケアチームが必要となります。
問題は、タスクフォースが日常的に緩和ケアを継続出来る職員数を保持出来ているか、アウトカムがチェックされているかどうかです。
アウトカム評価をどのような基準でおこなっているのか、満足度調査をしているのか、心理テストはおこなわれているのか、成果が目に見え難いだけに自己満足に陥らないように組織的な検証が必要です。
1)デザインルール モジュール化パワー カーリス・Y・ボールドウィン キム・B・クラーク 東洋経済新報社 2004
2)「看護必要度」の研究と応用 筒井孝子 医療文化社 2003
3)先進国で広がる所得格差 日本経済新聞 2007年8月21日 経済教室 デイビッド・オーター
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
9/27の勉強会後に先生からいただいたコメント、大変励みになりました。あまりの嬉しさに涙が出ました。本当にありがとうございました。
さて、病院における緩和ケアチームの位置づけは、現在私が所属している組織で担当している業務と共通点があると感じました。
扱っているものが目に見えないこと、成果も数字となって出てくるものではないことから、周囲の理解が得にくかったり、自分のモチベーションを維持するのも大変な業務だと感じています。
先生の仰る「ビジョンを達成するために緩和ケアの立場でどうあるべきか 自分の思い描く緩和ケア と 組織に求められる緩和ケア とその狭間で自分を調整していくこと」は全く同感です。
私も最近、同じようなことを感じ始めていました・・・。
まさに、医療組織人として一つの価値尺度だと、私も思います。
この考え方は大事にしていきたいと思っています。
組織においても、またそこに集う個人においても
大切なことですね
緩和ケアチームは 特定のどこかの病棟という
枠では収まらない
かつ あらゆる科に必要なチーム
(今まで、そして今後)組織として働く一人として、
その先生の講義、受けてみたくなりました
こちらこそ、本年もどうぞ、よろしくお願いいたします。数字だけではない評価ができるというのは、鍵だと思います。ただ、その数字以外をどう分析しているかということが、表面化しない数字の変化であればよいのですが、時に、スタッフの好き嫌いの情感だったりする管理職をみることもあって・・・・(語尾が・・)是非、近森さんの論理的な次のレビューをお読み下さいませ。
近森正昭さん
総論一本にあたる情報量のコメント、本当にありがとうございます。
大変勉強になりました。また、考えを整理することができました。
緩和ケアチームに病院組織から求められるものとして、『高度の専門性追求と、病棟日常業務への負担軽減』ここだと思うのですが、「緩和ケアチームが入っても、楽になることを期待しないで」と言い切るところもあり、アウトカムは「診療拠点病院の要件を満たすための役割」になってしまっていました。チーム自身がここを勉強する必要があると感じました。そのことが、あって役に立つチームに成長する一助になると思います。
緩和ケアチームの質を評価することは、英国のオーディットの手法を日本に取り入れようとする動きもあり、医療評価の中の緩和評価にもそれは生かされているようです。(なお、心理テスト施行回数は緩和ケアの評価にはならないのですよ。)
現場で感じる端的な数字として、チームへの依頼数、依頼診療科数、依頼病棟数(1~2の診療科からだけの依頼ではなく、広く多くの診療科から依頼がある。病棟も同じ。)などが、結構組織内のチームの質をあらわしていると感じています。
ラスカルさん
9月終り頃にお目にかかってから、随分時間がたったような感じがしていますが、あの時、医療人としての熱い思いを語ってくださったことは鮮明に思い出すことができます。私のエネルギーになっており、ありがとうございました。今年もどうぞ、よろしくお願いいたします。
えびさん
ぎゃくに、ビジョンのない組織(なんてないとおもうのですが・・)に所属することは、ちょっと考えられないですよね。中には、「私がビジョンです」といっちゃうような組織があるのでしょうがねえ。
トラックバックが不適切でしたらカットしてくださいね。
トラックバック待っていたのですが、どうも貼られていないようです。で、お名前からHPに入って行ったのですが、それにあたる記事がはっきりせず・・・
ですので、記事を読んでいない状況下での返信です。
日本の医療者は経営などに時間を費やして医療に集中していないのではというコメントは、いわゆる収支のことをさしていて、組織目標の達成という命題から考えるともっと意識的にそうする必要がむしろあるとお伝えしたいと思います。
もし、収支という狭い範囲で考えたとしても、以前いたアメリカはもっと辛辣でした。もっといえば、意識しなくても収支を上向かせる工夫にたけていたとも言えると思います。良い例がクリニカルパスですよね。知人は、前立腺がんの術後4日で退院していましたが、これも包括医療の収益を上げるための結果です。
それから、コメントも言葉が足りませんでした。おっしゃる通り、組織目標、収支という両方に対する意識向上が必要だと思います。クリ二カルパスは特に収支(効率)に着目して始まりました。
私が言いたかったことは、日本の病院、医療体制の中が組織化されていない(経営や管理、人事、開発など医療者以外が専門として行っていくことを、看護部や医師が大部分を行っている。もしくは医療部門以外の投資が少ない)ことです。
もちは餅屋、、、そういう専門家の方が現状を分析したり、計画を立てる(もちろん医療者側の理念を理解して調和していく形で)という状況になれば、医療者はその計画を元に医療に専念できると言うことが言いたかったのです。
私が働いている組織でホスピス、緩和医療のプログラムが開始されたのはほんの5年前のことです。その準備には大勢の人が関わり、医療者側とそれ以外の部門が長い月日をかけて準備して一斉にスタートしました。とても成功した例として他の州や組織から、そのやり方を伝授して欲しいと連絡や視察が多くあると聞きました。もちろん今でも改善の余地はあります。しかし、フロントライン、管理、そしてその上と情報や意見伝達の流れがとても明確で、それを元に専門の人がプログラムを見直す。自分たちの意見が反映されるシステムがあるから、フロントラインは仕事に専念できる(組織目標に対して仕事が評価される。達成感や満足度が生まれる)状況があります。そういう細分化が日本にも浸透したら良いのにと思っています。
これは、実感するところであり、ご指摘の通りだと思います。今、日本の医療は、ぎりぎりの状況にあります。日本の医師が組織構造に問題があるという声を早い時期にあげられなかったこと、耐え忍んで耐えきれなくなって社会に表面化したという経緯もあります。ただ、この構造的な組織の問題と、組織目標のあり方は、密接な関係にありますがイコールではないと思います。