正法寺(岩間寺)は縁起によると創建が奈良朝時代の養老6年(722)である。ご本尊は千手観音菩薩。
普段は三重の厨子の内深くに安置されている秘仏で、前回の開帳は19年前の平成2年でその前の開帳と
なるとさらに365年前だったということであるから江戸時代初期以来平成まで人の目に触れなかった
ご本尊である。(※1)
午前10時に内拝開始と日程表には記されていたが、午前9時半すぎには内陣への扉が開かれた。
雨がしとしと降っている境内には自分以外の参拝者はおらず、静寂な雰囲気の中、内陣へと入る。
まず始めに焼香を行い合掌。内陣は狭いために勤行は控えていただきたいということである。
そしてご本尊の前へと進む。正法寺ご本尊千手観音菩薩。伝えでは奈良朝の女帝である元正天皇の念持仏
で、インドのエンブ川の砂金で造られたという三国伝来の金銅仏である。したがって和製ではない仏像で
ある。4寸8分(約14.5cm)というから大変に小さい。そして黒色化しているので表情や細かな造形
までははっきりと目視できない。厨子の前に拡大した写真のパネルが置かれているのでその画像と
実際のご本尊を何度も見比べる。大変小さいが非常に精巧に造られた仏像であるのがわかる。顔の輪郭は
ふっくらとしていて大変穏やかな表情が印象的だ。公式ガイドブックには柔和な童子のような表情である、
と解説しているがまさにそのとおりであった。
お寺の僧侶がいろいろ解説してくれたので、こちらからもいくつか質問をしてみた。写真でみると
光背は幾分金箔が残って見えたので後補ではないかと思い聞いてみると、約800年前(鎌倉時代)
に造られたものだそうだ。また三重になっている厨子のうち、外と真ん中の厨子は現在の本堂が造られた
頃に製作されたということなので近世のものである。ちなみに真ん中(二重目)の厨子の扉には
四天王が描かれている。そしてご本尊を直接納めている一番内の厨子は約600年前(室町中期)のものだ
ということである。
伝えによると、元々のご本尊は桂の木で彫られた千手観音で、その胎内仏として現在のご本尊である
金銅仏が納められていたという。毎夜厨子を出て地獄を巡り、苦しむ人々を救済して早朝に戻る頃には
汗びっしょりになっていた・・・という話から「汗かき観音」とも言われている。
今回の開帳は12月17日までで、次回は来年4月17日から5月17日まで、その次の開帳は未定であるそうだ。
また再び数百年は厨子の扉が開かれることなく人の目に触れることはないかもしれない。
しばらくして本堂の外が賑やかくなった。どうやら団体参拝が来たみたいで狭い本堂はたちまち人で
立錐の余地もないほど溢れ返った。また次回の開帳でのご縁を願いつつ、合掌礼拝をして境内を後にした。
(※1)公式開帳以外には開扉されている。昭和45年発行の本にはご本尊の写真も掲載されている。
ご朱印・御詠歌護符・ご本尊御影・梵字札・内拝の時に授与されたお守り。
参拝日時:平成21年12月5日(土)午前9時~午前10時
さて、今回の正法寺参詣で西国巡礼2巡目も2ヶ寺(六角堂・革堂)を残すのみとなりました。
六角堂・革堂には1年の御礼も兼ねて毎年末に参拝するのを恒例としていますので今年末で2巡目結願となります。
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