著者の石川逸子さんから『道昭-三蔵法師から禅を直伝された僧の生涯』が送られてきました。なんと478ページの大著でした。
「道昭」という僧の名前を私は知りませんでした。でも、カバー写真を見てオーと唸りました。端整な顔立ちの、大阪府野中寺の金銅弥勒菩薩半跏像が写っていたからです。十数年前、レンタカーで府内の古寺を訪ねたときに出向いたのが野中寺でした。古寺・仏像マニアの私は、毎月18日開帳を知ってここを訪れたました。数人の参詣客と一緒に寺の座敷で拝観したのを覚えています。
それでは、道昭と弥勒菩薩はどういう関係なのでしょうか。
種明かしをする前に、『道昭』の基本情報をみておきましょう。
■『道昭-三蔵法師から禅を直伝された僧の生涯』石川逸子著、コールサック社、478頁、2016.11
〔オビ〕本書は読者を七世紀の日中韓の世界にタイムスリップさせる。
主人公の遣唐使の道昭は、三蔵法師と寝食を共にした愛弟子であり、日本に初めて禅の神髄を伝え、日本で初めて火葬を遺言した僧侶。詩人の想像力は当時の東アジアの情勢と道昭の精神性をしなやかに描く。
〔発刊にあたって〕(著者)
アジアの端にあるこのくに。
古代史を読み直してみても、アジア、特に朝鮮・中国との密なかかわりは、驚くほどです。中国の玄奘三蔵ほか百済・新羅の僧たちにも学んだ道昭の成長は、そのまま、このくにのひとびとの成長でもあったでしょう。
○目次
・歴代大王・天皇系図/道昭系図
1 「異神」の渡来
2 馬子とウマヤト
3 大王の座
4 上宮一族のほろび
5 血したたる刃
6 謀反人
7 遣唐使船
8 先住民族の歌語り
9 朝鮮高僧譚
10 唐王室と玄奘三蔵
11 玄奘との約束
12 求法の記
13 長安を歩く
14 廃墟の月
15 中国巡礼の旅
16 弟子入り
17 玄奘の四つの危機
18 ほろびゆく父祖の国
19 波乱の帰国
20 倭国敗戦
21 父鎌足、子定恵
22 天智の夢
23 壬申の乱
24 道昭の禅院
25 大津皇子と草壁皇子
26 持統の思惑
27 アズマへ
28 井戸を掘り、橋を架ける
29 役小角との対話
・発刊にあたって
・参考文献
道昭は百済からの渡来人の子孫で、遣唐使として唐に赴き、あの三蔵法師から禅を直伝された僧なのです。道昭は小さな木彫りの弥勒像を唐から持ち帰ったというのです。その像に似せて一族の氏寺の野中寺のために仏師に作らせたのが金銅弥勒菩薩半跏像だったのです。
さて、本書は道昭の生涯を、100冊にわたる文献を読みこなしながら、史実に基づいてドラマチックに再現構成した歴史小説といえそうです。『日本軍「慰安婦」にされた少女たち』(岩波ジュニア新書)の著者紹介を読んで合点がいきました。史家としての面目躍如といったところです。
「石川逸子 : 1933年東京に生まれる。お茶の水女子大学史学科卒業。詩人。公立中学校の社会科教師をつとめるかたわら、詩作をつづけ、1983年退職。ミニ通信「ヒロシマ・ナガサキを考える」を100号まで発刊。」
三蔵法師、行基、藤原鎌足、大津皇子、草壁皇子、天武天皇、持統天皇、役小角…といった歴史上の人物が、古代の日本や唐や朝鮮半島を舞台に、躍動感をもって登場するのです。まさに「詩人の想像力は当時の東アジアの情勢と道昭の精神性をしなやかに描」いているということばが大仰ではなくしっかり当てはまった本でした。
それにしても、もう一度読み返さないと私には理解が難しいことを告白しておきます。
「道昭」という僧の名前を私は知りませんでした。でも、カバー写真を見てオーと唸りました。端整な顔立ちの、大阪府野中寺の金銅弥勒菩薩半跏像が写っていたからです。十数年前、レンタカーで府内の古寺を訪ねたときに出向いたのが野中寺でした。古寺・仏像マニアの私は、毎月18日開帳を知ってここを訪れたました。数人の参詣客と一緒に寺の座敷で拝観したのを覚えています。
それでは、道昭と弥勒菩薩はどういう関係なのでしょうか。
種明かしをする前に、『道昭』の基本情報をみておきましょう。
■『道昭-三蔵法師から禅を直伝された僧の生涯』石川逸子著、コールサック社、478頁、2016.11
〔オビ〕本書は読者を七世紀の日中韓の世界にタイムスリップさせる。
主人公の遣唐使の道昭は、三蔵法師と寝食を共にした愛弟子であり、日本に初めて禅の神髄を伝え、日本で初めて火葬を遺言した僧侶。詩人の想像力は当時の東アジアの情勢と道昭の精神性をしなやかに描く。
〔発刊にあたって〕(著者)
アジアの端にあるこのくに。
古代史を読み直してみても、アジア、特に朝鮮・中国との密なかかわりは、驚くほどです。中国の玄奘三蔵ほか百済・新羅の僧たちにも学んだ道昭の成長は、そのまま、このくにのひとびとの成長でもあったでしょう。
○目次
・歴代大王・天皇系図/道昭系図
1 「異神」の渡来
2 馬子とウマヤト
3 大王の座
4 上宮一族のほろび
5 血したたる刃
6 謀反人
7 遣唐使船
8 先住民族の歌語り
9 朝鮮高僧譚
10 唐王室と玄奘三蔵
11 玄奘との約束
12 求法の記
13 長安を歩く
14 廃墟の月
15 中国巡礼の旅
16 弟子入り
17 玄奘の四つの危機
18 ほろびゆく父祖の国
19 波乱の帰国
20 倭国敗戦
21 父鎌足、子定恵
22 天智の夢
23 壬申の乱
24 道昭の禅院
25 大津皇子と草壁皇子
26 持統の思惑
27 アズマへ
28 井戸を掘り、橋を架ける
29 役小角との対話
・発刊にあたって
・参考文献
道昭は百済からの渡来人の子孫で、遣唐使として唐に赴き、あの三蔵法師から禅を直伝された僧なのです。道昭は小さな木彫りの弥勒像を唐から持ち帰ったというのです。その像に似せて一族の氏寺の野中寺のために仏師に作らせたのが金銅弥勒菩薩半跏像だったのです。
さて、本書は道昭の生涯を、100冊にわたる文献を読みこなしながら、史実に基づいてドラマチックに再現構成した歴史小説といえそうです。『日本軍「慰安婦」にされた少女たち』(岩波ジュニア新書)の著者紹介を読んで合点がいきました。史家としての面目躍如といったところです。
「石川逸子 : 1933年東京に生まれる。お茶の水女子大学史学科卒業。詩人。公立中学校の社会科教師をつとめるかたわら、詩作をつづけ、1983年退職。ミニ通信「ヒロシマ・ナガサキを考える」を100号まで発刊。」
三蔵法師、行基、藤原鎌足、大津皇子、草壁皇子、天武天皇、持統天皇、役小角…といった歴史上の人物が、古代の日本や唐や朝鮮半島を舞台に、躍動感をもって登場するのです。まさに「詩人の想像力は当時の東アジアの情勢と道昭の精神性をしなやかに描」いているということばが大仰ではなくしっかり当てはまった本でした。
それにしても、もう一度読み返さないと私には理解が難しいことを告白しておきます。