後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔289〕松本キミ子さんの「私の久美子」を読んで私の絵画教育修行を思い出しています。

2020年08月02日 | メール・便り・ミニコミ
  松本キミ子さんは東京芸術大学彫刻科を卒業し、1973年、産休補助教師として都内の学校に勤めた方です。1975年には「美術教育についてのまったく新しい理論・指導法を提唱。これは後に『キミ子方式』として知られるようになった。」と著書『教室のさびしい貴族たち』(1984年、仮説社)の奥付には書かれています。
*松本キミ子・堀江晴美共著として『絵のかけない子は私の教師』(仮説社)、『三原色の絵の具箱』(全3巻、ほるぷ刊)、松本キミ子『絵を描くっていうことは』(仮説社)が我家の本棚に並んでいます。
 まさに美術教育に画期的な方法論を提起した方です。私の理解では、3原色と白を駆使して、植物や動物などの生物については輪郭を取らず「隣から隣へ」という描き方を提唱されました。(人工物は輪郭を取ってから色塗りという工程を踏んでいましたが。)
 私の教師人生のなかで、6年間、家庭科専科と同時に3年生だけ図工科を担当したことがあります。清瀬七小でのことでした。この時期に図工教育について自分なりの研究をしたのですが、清瀬十小の図工専科の滝口泰正先生(美術教育を進める会)が3原色と白の描画法や人体の描き方の提案をしていて、何度かお話をうかがったことがありました。キミ子さんも彼から学んだことは多かったようです。

 何冊か本を読んで、キミ子さん講師の講習会(「ひと塾」だったかもしれません)に1度だけ参加したことがあります。講習後に彼女の連絡先を知り、夫婦のミニコミ「啓」を勝手に送りつけたのでした。読んでもらいたい人に相手の迷惑も顧みずミニコミを送るというのが我々の流儀でした。(後に福田緑著『祈りの彫刻 リーメンシュナイダーを歩く』を購入してくださいました。)
 そうこうするうちに彼女の発行する月刊「The Beginning News」(キミ子方式 芸術の原点)という8頁立ての冊子が届くようになりました。
 巻頭に必ずキミ子さんのエッセイが掲載されています。キミ子さんは名文家です。これがとても読ませられるもので、いつも真っ先に愛読します。

 2020年8月号の巻頭はやはりキミ子さんの「私の久美子」というエッセイでした。久美子さんはいわゆる教え子の1人です。
 『シーラという子』(トリイ・ヘイデン著、入江真佐子訳、早川書房)を彼女が手にする経緯から文章は起こされます。彼女はこの本を読んであまりに御自身の著書『教室のさびしい貴族たち』と内容が似ていることに戸惑いますが、『シーラという子』のほうが12年後に出版されたということでほっとするのです。
  私は未読ですが『シーラという子』は情緒障害児との関わりを著者が綴った実践記録のようです。さらにこの出版の7年後、今度はシーラがどう成長したのか、『タイガーと呼ばれた子』として出版されたといいます。
 さて、松本キミ子さんは自身を振り返って、彼女の教え子がどう成長しているのか、ということに思いを馳せるのでした。エッセイの結末を知りたい方は以下に連絡し購読されるといいと思います。

*発行所:キミコ・プラン・ドウ
〒153-0041 東京都目黒区駒場4-7-8 リバティハウス
TEL.03-3467-3657
「The Beginning News」定価 80円