三 戦う天皇ゆかりの寺院 笠置寺 巨大摩崖仏の拓本を大阪万博で見られるか。
山号 鹿鷺山
宗旨 真言宗智山派
開基 天武天皇(大海人皇子)
本尊 弥勒摩崖仏
摩崖仏
先日、笠置寺に後醍醐天皇を偲んで行って見た。しかし観光気分で行く寺ではない。標高300mほどの山自体が寺の境内であり、そこが修行の場でもある。2000年近くも前から信仰の対象であったようだが、天武天皇勅願寺として良弁僧正によって巨岩に摩崖仏を彫りそれを本尊として発足した。その後、平安時代の末法思想の中で発展し、そして歴史に名前が知れたのは、やはり太平記の時代である。後醍醐天皇が一度目の倒幕に失敗した後、ここ笠置寺に本拠地を構えたのだ。ただ、残念ながらその戦火により多くの建造物が焼失し摩崖仏も火災の熱により表面が剥落した。40分ほどの修行場巡りに挑戦したが、日頃の不摂生が祟り息が上がってしまった。しかし、朝方のにわか雨の時の水気を通じて吹く冷たい風が心地よく、一息入れて気分よく山を下った。
帰りに受付にいた地元のボランティアの方に詳しく聞くと、本尊の摩崖仏は、ほとんど何も見えないが、拓本を採ると古(いにしえ)の姿が浮かび上がるのだそうだ。高さ10m以上もある巨大拓本を地元総出で採ったらしい。ところが大きすぎて展示する場所がなく、公民館の倉庫に眠っているとの事、来るべき大阪万博での公開を目指していると言う。
三門をくぐり帰る時、野生イノシシの親子が道を横切った。現在の笠置寺は後醍醐天皇一派が、戦乱を仕掛けたとは思えない静寂の中だった。