ファチマの聖母の会・プロライフ

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消えゆく日本の「子供の日」

2017年06月25日 | プロライフ
「見えざる人々:消えゆく日本の「子供の日」」ノボトニー ⋆ ジェローム 神父
からの引用です。


「生命のため、友人へ」 ー 日本では5月5日を「子供の日」として祝う。この祝日の起源は古く、西暦600年頃にさかのぼる。子供を大切にし、彼らの幸福を祝う日である。

国全体に鯉のぼり(鯉の形をした凧)がはためく様子を見ることができる。心から幸せな気持ちになる日だが、事態は見た目ほど輝かしいわけではない。



政府が子供の日に発表した内容によると、15歳未満の子供の数は昨年から160,000人減少している。つまり33年間連続で日本の子供の数が減少したことになる。1950年に統計を取り始めて以来、これは最低の数字である。日本の1家族当たりの子供の数の平均は1人をわずかに超えた程度であるが、人口を維持するには2.1人が必要とされている。

現在、日本の65歳以上の人口の割合は25.6%だが、子供はわずかに12.8%である。博士号を持っていない人でも日本が将来、国家として生き残れないことはわかるだろう。どう考えても不可能である。状況は悪循環に陥っている。高齢者世代は増え続けているのに、乳幼児は減少の一途をたどっている。最終的にはどちらも消えて行ってしまうだろう。

この問題の解決策は出生率の引き上げと日本への移民労働者の規模拡大であると私は考えている。

私は日本に長年住んでいるが、移民を受け入れる体制はまだまだ遅れている。国連の概算によると、出生率を引き上げない限り、日本は年間約650,000人の移民労働者を受け入れる必要がある。

また、日本では中絶件数が多く、国家存続への解決策を遠ざけているように思える。日本は子供の未来に希望を持てない中で「子供の日」を祝っている。これを幸せと呼べるだろうか?

1957年以降発表された35の論文のうちの27の論文で、中絶が乳癌に関与することが指摘されている

2017年06月18日 | プロライフ
今も無視されている中絶と乳癌の関連
医学論文の4件のうち3件は重大な因果関係を指摘している
Julie Foster(ジュリー・フォスター)」からの引用です。

英語は次で読めます。
Abortion-breast cancer link still ignored
3 out of 4 medical studies indicate significant cause and effect




1957年以降発表された35の論文のうちの27の論文で、中絶が乳癌に関与することが指摘されているにもかかわらず、『家族計画連盟』などの中絶賛成団体はそのような関連性が存在することを否定し続け、中絶手術を受けようと考えている人にその論文のことを知らせることを拒否しています。

カレン・マレック(Karen Malec)をリーダーとする、「ABC(Abortion-Breast Cancer:中絶:乳癌)連合」は、中絶提供者が概してその関連性について人々に知らせないので、そのことを人々に知らせる取り組みをしています。

「科学者は、この関連性を44年間研究し続けています。にもかかわらず女性たちがこれらの研究の存在を今まで知らされてこなかったことに私たちは大変驚いています。なぜ女性たちは自分たちの健康管理に関する議論から除外されているのでしょうか?私たちはこの重大な不公正を正すつもりです。」と彼女は話しました。

シカゴの「ABC連合」のボランティアは先月、中絶と乳癌の関連性についての研究のことを読者に知らせる冊子を配布しました。マレックは、中絶と乳癌の関連性を証明するほぼ半世紀にわたる研究にもかかわらず、「女性たちが依然として自分たちの健康管理に関する議論に加えられないでいること」に彼女のグループは驚いていると言っています。「このような情報が今まで女性たちに隠されてきたということには、弁解の余地はありません。」と彼女は話しました。

「7件のうち5件の研究で携帯電話と脳腫瘍の関連性が指摘されたとき、そのことが人々に知らされたにもかかわらず、なぜ女性たちは、20数件もの研究がこのいのちに関わる病気の危険要因としての中絶の関連性を指摘しているという情報を知る権利を与えられていないのでしょうか?悲惨なことに、この危険要因に対する、危険だと判断される基準が上げられたので、100人に1人は中絶による乳癌で死亡することになるでしょう。」とマレックは主張しました。

乳癌は生殖ホルモン、特にエストロゲンと関連があります。何が乳癌を引き起こすかはまだ科学によって特定されてはいませんが、女性が第一子を産むのが早いほど、乳癌発症の危険性は低くなるということは異議を唱えようのないことです。

『乳癌予防協会』の会長であり、いわゆる『ABC(Abortion-Breast Cancer)リンク(中絶と乳癌の関連性)』の研究の第一人者であるジョエル・ブリンド博土(Dr. Joel Brind)によると、女性のエストロゲンの値は妊娠するとすぐ通常の何百倍に増加し、妊娠した女性の身体の最初の変化のひとつが乳房に起こります。ホルモンの急増は、母体が生まれてくる赤ん坊のために母乳を作り出す準備をするために、乳房に「未分化」細胞を増加させることになります。未分化細胞は傷つきやすいのです。

妊娠の最終週には、それらの細胞はまだほとんど解明されていない過程を経て「最終的に分化」し、母乳を出す準備が整うのです。分化細胞は発癌物質の影響を受けません。しかしながら、もし万一妊娠が細胞の分化よりも早く終わってしまえば、女性の身体は未分化の細胞の数が異常に多い状態のままとなり乳癌の発症の危険性が増加することになるのです。

危険性増大の割合は、女性が思春期に達する年令と、最初の妊娠の年令と、中絶前の妊娠期間の長さに左右されます。ほとんどの研究で30%から100%まで、あるいはそれ以上危険性が増大することが明らかになっています。

ブリンド博土によると、自然発生的な中絶つまり流産は、一般的にはまずエストロゲンの不足によって起こるので、危険性の増加とは普通関係がありません。

ほとんどの避妊用ピルは、妊娠したときに起こるホルモン作用と同じホルモン作用を発生させることによって効果を発するので、ABCリンクの研究においてそれもまた乳癌の原因だとして疑われています。

『英国王立産科婦人科大学』は中絶提供者に向けて、ABCリンク研究を「無視することはできない」と警告するガイドラインを昨年の2000年3月13日に発表しました。その大学はブリンド博士によって1996年に行なわれた、世界中の研究の再調査を検証し、博士の研究は、「注意深く行われ」、「研究方法に重大な欠点はない」と発表しました。

そして今年の初めに、閉経後の女性に行なわれるエストロゲン補充療法薬(ERT)が発癌物質の全国リストに加えられました。ERTは、妊娠の際に女性の卵巣で自然に作られるエストロゲンとほぼ同じ化学物質です。乳癌の危険因子として知られているものの大多数は、エストロゲンの影響を過度に受けることと関連があります。

世界の最も有力な医学雑誌、『ニューイングランド医学ジャーナル』でさえ、密かにABCリンクについての姿勢を変え始めています。3年前、『ニューイングランド医学ジャーナル』は、中絶と乳癌の関連性を否定するデンマークの論文を発表しました。それはメルビー論文として知られていますが、その研究者たちは、「人工中絶が乳癌の危険性全体に与える影響は全くない」と結論づけました。また、女性が中絶を考えるとき、「乳癌の危険性を心配する必要はない。」と断言する国立癌協会の疫学者による論説も、『ニューイングランド医学ジャーナル』に掲載されました。

しかし、ペンシルバニア医科大学のカトリーナ・アームストロングを中心とする研究者たちによる『乳癌の危険性の査定』と題した咋年の記事の中で、次のような見解が述べられました。それは、「ダイエットや経口避妊薬の使用、授乳、中絶といった他の危険因子は、乳癌との関連性における一貫性が少ない」というものでした。大々的な宣言では決してありませんが、その発表は、その雑誌が以前とっていた姿勢からの大きな転換を表しています。

しかし、中絶や避妊薬の使用が乳癌を引き起こす危険性があるという明白な証拠があるにもかかわらず、収益性の高い中絶産業はいかなる関連性も存在しないと否定し続けています。ブリンド博士や他の研究者が行なった研究の信頼性を攻撃して、中絶擁護団体はその問題に関して科学者の見解は一致していないと主張し、患者たちは乳癌の危険はないと教えられているのです。

『家族計画連盟ロサンゼルス支部』の代表、ナンシー・L・ササキは次のように述べています。「『家族計画連盟』の見解は、中絶によって健康にもたらされる実証された危険はないというものです。人工中絶と乳癌の関連性は、その安全性にもかかわらず中絶に反対している人々が唱えている理論なのです。その理論は研究によって生み出されたものではありません。『家族計画連盟』は、女性は病気の危険性に影響するすべての要因についての情報を手に入れることができるべきだと信じていますが、『家族計画連盟ロサンゼルス支部』はまた、女性には医学的に実証され、政治的な問題に染まっていない情報を受ける価値があると信じているのです。研究者たちが、乳癌と中絶に関して一致した見解を持つには至っていないので、『家族計画連盟』は、その要因(中絶)だけが原因だと断定できるだけの現在実証済みの健康への危険性はないと、妊娠を終わらせようと考えている女性たちにアドバイスしているのです。」

中絶と乳癌の関連性を女性たちに教えることに関わっているマレックや他の人々は、中絶支持者には女性たちに知らせないでおく政治的な動機があると言います。もしABCリンクについての情報が広く認識されれば、『安全な』中絶という神話が修復できないほどダメージを被るかもしれないのです。

「我々の組織は、女性のために中絶反対の立場をとっています。残念ながら、この政治的に間違った情報のこととなると、誰もが女性の健康を第一には考えているわけではないのです。」とマレックは断言しました。


For Your Information

次の記事「堕胎と乳がんとの関係がある証拠はもっとある」も参考にして下さい。
More evidence linking abortion, breast cancer
Planned Parenthood, other advocates deny any connection despite studies

これによると、クリス・カレンボーン医学博士(Chris Kahlenborn, M.D.)の6年間に亘る堕胎と乳がんとの関連性の研究書が発表されています。
Breast cancer: Its link to abortion and the birth control pill”です。

カレンボーン医学博士によると、若いときに堕胎や避妊薬を体験すると、乳がんの危険性が大きくなります。

  もしも女性が最初の完全な妊娠出産の前に堕胎をすると、乳がんになる危険が少なくとも50%増加する。
  女性が最初の子供が生まれる前に避妊薬を飲むと、乳がんになる危険が少なくとも50%増加する。
  女性が最初の子供が生まれる前に避妊薬を4年以上飲むと、乳がんになる危険が少なくとも72%増加する。

さらに、アミー・ソビー及びデビッド・リアドンの「思春期の中絶の有害な影響」
Detrimental Effects of Adolescent Abortion
By Amy R. Sobie and David C. Reardon, Ph.D.

によれば、

ある程度の年齢に達して中絶をした女性と比較して、10代で中絶をした女性は、中絶と関係のあるより深刻な精神的外傷を受けたという場合が極めて多い。

大人になって中絶をした女性と比較して、10代で中絶をした女性は、

自殺をする可能性が2~4倍高い。(7)
精神的な問題を発症しやすい。(8)
人間関係に問題を生じやすい。(9)
一般的に、中絶に関するカウンセリングとガイダンスの必要性が高い。(10)
普通の女性より、精神病院に入院する可能性が約3倍高い。(11)

(7) M. Gissler, et. al., “Suicides after pregnancy in Finland: 1987-94: register linkage study,” British Medical Journal, 313:1431-1434, 1996; and N. Campbell, et al., “Abortion in Adolescence,” Adolescence, 23:813-823, 1988.
(8) W. Franz and D. Reardon, op. cit..
(9) J. Marecek, “Consequences of Adolescent Childbearing and Abortion,” in G. Melton (ed.), Adolescent Abortion: Psychological & Legal Issues (Lincoln, NE: University of Nebraska Press 1986) 96-115.
(10) J. Gold, “Adolescents and Abortion,” in N. Stotland (ed.), Psychiatric Aspects of Abortion (Washington, DC: American Psychiatric Press, 1989) 187-195.
(11) R. Somers, “Risk of Admission to Psychiatric Institutions Among Danish Women who Experienced Induced Abortion: An Analysis Based on National Report Linkage,” (Ph.D. Dissertation, Los Angeles: University of California, 1979. Dissertation Abstracts International, Public Health 2621-B, Order No. 7926066)

以上の事実と研究は、あまりにも知られていないので、拡散をお願いします。

中絶された赤ちゃんの死体部分を売買するというビジネスがある事実

2017年06月10日 | プロライフ
中絶された赤ちゃんの死体部分を売買するというビジネスがある事実を知っていますか?

ノボトニー ⋆ ジェローム 神父様による
とんでもない恐怖:中絶された赤ちゃんの器官を売ることの記事を以下に掲載します。


毎年、家族計画連盟は中絶を資金的に援助するために米国民の税金5億ドル以上を受け取っています。その上、 中絶された赤ちゃんの死体部分を売ることによってさらに多くの利益を上げていることを最近公表しました。そうなのです !家族計画連盟はまだ生まれていない赤ちゃんの生命を終わらせるだけでなく、 中絶された赤ちゃんの死体部分を売ることで更なる利益を得ているのです。

Live Action)は次の情報を公表しています。家族計画連盟の医療責任者、 Deborah Nucatola 博士は、違法なパーシャルバース・アボーション(妊娠後期中絶)の方法で、 まだ生まれていない子どもを巧みに処理し、赤ちゃんの体の不要とされた他の部分を押しつぶし、 売れる価値のある部分を完全に取り出す方法について、自らテープで語っています。 これは吐き気を起こさせる残忍なもので、家族計画連盟のとんでもない恐怖の正体を暴いています。 このビデオをCenter for Medical Progressのリンクで見ることができ、記事はここで読むことができます。





このショッキングなビデオを見た後では、家族計画連盟を擁護する人がいるということを理解することは困難です。 73年前に類似した犯罪を犯したナチスと私たちは、どう違うというのでしょうか?アメリカ合衆国は、 すべての人々の権利を保護することを誇ります。どんな根拠で、その同じアメリカ国民は、 この殺戮産業に資金を提供して積極的に支持するような政府を自由のうちに選ぶのでしょうか?  考えようとすると頭が全く混乱に陥ります!

一方、米国は中国、北朝鮮、ロシアなどの国に対し、人権違反行為を非難しています。アメリカ合衆国は、 真剣に自らを振り返るべき時に来ているのではありませんか。多くのアメリカ人は中絶を“人権”ととらえています。 女性は生きている子どもを中絶する“憲法上の権利”を持つと最高裁判所は判決しています。

もはや驚きませんが、オバマ政権はこのスキャンダルについて「倫理的なことだ」とさえ答えています。 Lifenews.comは書いています:「バラク・オバマ大統領の首席報道官ジョシュ・アーネストは、今日、 妊娠中絶ビジネスが中絶された赤ちゃんの部位をどのように売っているかについて、 家族計画連盟のトップの医者が説明している衝撃的な新しいビデオが放映された後、 家族計画連盟の妊娠中絶ビジネスを擁護しました。家族計画連盟は「最高の倫理指針」に従っていると、 アーネストは言います。しかし、妊娠後期中絶や人間の部位を売ることは、米国の全域で違法ではないのですか? すべてのアメリカ人(オバマ政権と家族計画連盟を含む)に対し、これらの法律は拘束力があるのではないですか?

ビデオに対するある関連企業の反応:家族計画連盟から中絶された赤ちゃんの死体部分を購入している会社: そうすることを「我々は誇りに思っている」

生まれる前の子どもは自分の妊娠中絶に同意していないし、ばらばらに切り刻まれ、 個人の経済的利益のため売られることに確かに、同意していません。人間としての尊厳は、まだ生まれていない赤ちゃんが 、まさしくそのいのち始まりの時から、法律の下で人間としての完全な保護を受けることを要求します。

死の文化を終わらせましょう。1973年中絶合法化以来、 5800万以上の中絶がアメリカ合衆国の大人たちによって行われてきました。信じられないことです! 5800万人の赤ちゃんの生命が終わったのです。ふさわしい埋葬も行われず、そのうちどれほどの多くが、 一般市場に死体部分として売られたでしょうか???

殺戮をやめましょう! 国として神の言葉を聞き、 いのちの文化の重要性を認め、生まれてない赤ちゃんが生きるための自然的権利を求める声となりましょう。

使徒行録18-9 恐れるな。語り続けよ。黙っているな。わたしはお前とともにいる。

ノボトニー・ジェローム、OMI
英語原文  ー Unimaginable Horror: selling aborted baby parts


For Your Information:



Planned Parenthood video: If media found out we sell aborted babies it ‘would be a disaster’

秋葉悦子氏の論文から

2017年06月07日 | プロライフ
とても興味深い論文をご紹介します。

バチカン生命アカデミーのメンバーとして活躍する随一の日本人が、刑法学者の秋葉悦子教授です。秋葉さんは、ヒト胚研究の倫理的側面を論証してきた第一人者で、始まりのいのちが不可侵である真理を説く日本では稀有な存在です。( プロライフ.jpのエデュケーションのWEBページより )


秋葉悦子氏(富山大学経済学部経営法学科教授)
「イタリアとカトリックの生殖補助医療をめぐる倫理問題」
 2010年3月21日

※実際のプログラムの表紙に使われた14世紀の絵に近いものです。

【引用開始】
これは、ヒト胚をテーマに2006年に開催された生命アカデミーの国際会議のプログラムの表紙に使われた14世紀の絵です。右側の赤い服を着ているのがマリアです。マリアのおなかの中にはイエスがいます。そして左側にいる女性、エリサベトのおなかの中には洗者ヨハネという預言者がいて、2人が出会ったとき、おなかの中の子が喜び躍った、と聖書には記されています。

この絵を生命アカデミーが使ったのは、生まれる前の子どももコミュニケーションしていること、人と人とのかかわりをしていることを示したかったからだと思います。そして、次のような人格概念を提示します。「個人」だけが孤立してあるのではなくて、人と人とのかかわりが人格にとって不可欠な要素である。その人格的なかかわりは、自意識のレベルに限られません。ヨハネと洗者ヨハネは、母胎内にあって自意識はなかったかもしれないけれども、何かを察知してコミュニケーションしていた。それは、精神的なコミュニケーションなのですが、それを示したかったのだと思います。

生命アカデミーの文書は、この絵について直接解説しているわけではありませんが、先ほど水野先生がおっしゃっていた「胎児と母のコミュニケーション」が生化学のレベルで行われていることを、子細に証明しています。受精卵、胚が子宮に着床する時期はごく短期間に限られていて、子宮はこの期間を過ぎれば胚を受け入れません。この着床期の子宮の受精卵に対する許容状態は窓にたとえられて「着床ウィンドウ」と呼ばれています。このウィンドウが開くのに合わせて、胚も着床できる状態に変化するのだそうです。このように、母と子の間では、生化学レベルで非常に猛烈な対話が交わされています。したがって、着床は、母親が一方的に決めるのではなくて、子どもと子宮との間のクロストークなのです。双方の条件が整わなければ着床は起こらないことが、生物学的に明らかにされています。ヴァチカンは胚が母との間でこのような生化学的なコミュニケーション、物理的な対話が交わされることを証明して、胚が人格であることを示そうとしているのです。
【引用終わり】

全文はこちら

『胎児も立派な人間です』 3.心理学的証拠

2017年06月03日 | プロライフ
3 心理学的証拠

(注記:以下の質疑応答は1990年に人工中絶を経験したことのあるパメラ・カーにインタビューを行った際のものです。)

問: あなたは人間の生命が壊されているという感じがしましたか。もし、そうお感じになったのでしたら、それについて説明をお願いします。

答: 人工中絶を行う施設は、胎児のあらゆる組織および/又は物質(matter)を廃棄処分する権利を認める書類にサインするよう言われたことを記憶しています。どうしてこんな書類にサインしなくてはいけないのかと自問したことを覚えています。手術室に連れて行かれたとき、無知のベールが取り払われました。私は気づいたのです。自分の赤ちゃんを殺してしまったと。

人工中絶を受けたことのある女性、その夫または「愛人」ならびに医療関係者は調査の結果、ある人を失ってしまったという感覚、およびその他人工中絶にまつわる否定的な感情を抱くことが知られています。また人工中絶のあと、自殺志向の感情が生じることもあります。
以下の資料は、胎児の人工中絶に関連する感情がどのようなものであるかを示すものですが、その中には人工中絶の前、最中、そしてとりわけその後に見られる心理的証拠を含んでいます。
(中略)

3.1 人工中絶トラウマ
人工中絶トラウマとは、中絶の後に続いて起こる典型的な感情群のことです。「人工中絶トラウマ」という言葉は、次のような感情を含んでいますが、これが全てというわけではありません。
憂鬱(感)
後悔
悲しみ
罪悪感
喪失感
恐怖(悪夢あるいは突然起こる追想の際に経験される)

3.2 女性と人工中絶
最近、雑誌や新聞に掲載された数々のエピソードは、人工中絶に続いて起こる女性の感情的および心理的状態を明らかにしています。これらの記事は多岐にわたっていますが、自分の人工中絶する決断について否定的な感情をあらわした数多くの女性の体験から取られているという点では共通しています。彼女たちが体験した感情とは重度のうつ[憂鬱感]、罪悪感、悲しみ、喪失感などです。若干の女性の体験談は、彼女らが人工中絶トラウマの徴候(となる症状)を少しももっていないことを示唆するものです。しかし、多くの研究は、往々にして女性は人工中絶に続いて生じるつらい感情を抑圧ないし抑止してしまうという結論に達しています。例えばカナダで行われた研究は、アンケートの際には人工中絶後、いかなる悔恨の念も抱かなかったとしていた女性たちが多くの場合、人工中絶後生じた深い感情的・心理的影響を隠し、あるいは抑圧していたことを確証しました。次のウィルケ著『人工中絶Q&A』からの引用は、この研究についてふれています。

問:しかし、大部分のアンケートの結果は、ほとんど感情に関しての問題がないことを示しているのではないのですか。

答:はい。しかし、人工中絶について女性が実際に心の最も深いところで感じることは、その同じ女性がアンケートに答えて言うこととは、非常に異なるのです。カナダのある研究では、一定数の女性を選んで質問し、そのグループの中から無作為に半数をぬき出し、何の[感情的な]問題もないと言っている彼女たちに深層心理療法を受けさせました。カナダの研究の結果は以下のことを含んでいました。

心理療法をとおしてあらわれてきたことは、[アンケートの結果とは]まったく対照的でした。それは当の女性が人工中絶を不可避かつ唯一の[選択可能な]行動として理性的に考え、見なしていた場合も同様です。」これにより、意識的かつ理性的思考によって正当化された人工中絶の決断は、それに対する最も深いレベルでの拒絶と共存し得ることが証明されました 。この記事は、次のように続けています。「表面上の見かけに関わりなく、人工中絶はより深い感情、すなわち「いずれの場合にも激しい苦痛、悲嘆、および胎児と自分とを同一視する感覚を含んだ
を後に残すのです。」

以下は人工中絶の後、女性たちが共通して訴えた感情的・心理的症状の例のごく一部です。

女性たちは人工中絶の後、時には自殺を考えるほどの憂うつ感に見舞われます。何千という数の、この種のケースが報告されていますが、次のエピソードはその一例です。ある女性は、こう述べています。「私が憂うつを感じ始めたとき、それは本当につらい時でした。人工中絶のことが心の中にあらわれ出しました。つまり、自分が人工中絶したという意識です。それは非常に長い間抑圧されていました。夫は私が人工中絶をしたということを全く知りませんでした。そのことを私は誰にも打ち明けていなかったのです。それはただ、私の過去の一部でしかなかったのです。私がついに夫にそのことを言うときがやって来ました。と言うのも、そのときには、すでに私はほとんど何も出来ないような人間になっていたからです。私はただ椅子にこしかけて一日中壁を見つめ、どうしたら自殺できるかと考えていました。 」

別の女性は、こう言っています。「そのとき、私は学校をやめました。そのとき、私は自殺しようとしました。そのとき、私はどんな人間関係も続けていくことができなくなりました。家族とも、ボーイフレンドとも、友達とも。そのこと[人工中絶したこと]のために、全てが崩れ去ってしまいました。 」

もう一人の女性は、同様に激しい憂うつ感に襲われました。
「私は、この名門大学の教員という立場にありましたが、それでもこの自己嫌悪の念をふりはらうことができませんでした。ですから私は、家族が私を拒絶したとき、もう自殺しようと決めました。」

あるレポートは、2人の10代の母親が人工中絶の後、「自分の赤ちゃんが産まれることになっていた、その同じ日に自殺を図った」と伝えています 。

後悔と悲しみ
人工中絶を経験した女性がしばしば経験する他の徴候は、後悔と悲しみです。
人工中絶[手術]の後、私はすぐに後悔と悲嘆を感じて目を覚まし、叫び声を挙げたのを覚えています。そして私はそんな状態に耐えられませんでした。私はそこから抜け出さなければなりませんでした。」

別の女性は言っています。
「自分の赤ちゃんが子宮から引き剥がされる感じは、これまで経験した最悪の感覚の一つでした。機械が私の内側にあるものを吸い出そうとする間、体の中では全てが、引き出されるのを逃れようとして盛んに動いていました。その振動を感じて、私はものすごく気分が悪くなりました。自分がどれだけこれに耐えられるのか定かではありませんでした。カウンセラーは、私の動揺に気づいたに違いありません。彼女は、もうすぐに終わると言って励まそうとしてくれたからです。私は彼女の手をつかみ、強く握りしめました。機械が止まるまでの間...。クリニックから出てきた私は、まるで自分がつい今まで悪夢を見ていたように感じました。私は卑しめられ、保護をうけ、辱められ、つまらなく、堕落した存在であると―つまり、女性が体験し得るもっとも否定的な感情のすべてを味わったのです。私はあまりにも気分が悪く、[手術が終わって]ほっとすることさえありませんでした。

罪悪感
罪悪感は、女性が人工中絶の後にしばしば経験するもう一つのつらい感情です。ある女性はこう言っています。
「私がこの人工中絶の後、3、4か月の間なんとか対処しようとしながらできないでいる苦痛、つまり私の中に巣食い、どうしても取り除くことのできない自己嫌悪と恐ろしい罪悪感...」

罪悪感が人工中絶の後にしばしば現れることは、医学的研究によっても確証されています。例えば、「アメリカン・ジャーナル・オブ・サイカイアトリー」誌は「患者たちは明らかに、人工中絶以前にはよく機能していたが、その後、人工中絶に対する罪悪感によって引き起こされた種々の精神病を経験した。」 と、伝えています。

喪失感、突然の想起、悪夢、およびその他の否定的な感情
人工中絶後の女性が経験する感情には、しばしば喪失感が含まれ、この感情は突然の想起、悪夢などを伴います。「選択」という著書の中で、「人工中絶の合併症」を論じるジュディー・ブラウンは、こう述べています。
「ミネソタ大学のアンヌ・スペックハード博士による研究は、人工中絶をした女性の半数以上が中絶の体験に関連した悪夢や突然の想起に悩まされていることを発見しました。ほぼ4人中1人が幻覚を体験しています。35パーセントの女性は、死んだ赤ちゃんが夢や幻のかたちで戻ってきて現れると信じています。 」
この問題についての他の心理的研究は、人工中絶後のストレス障害についての、更なる証拠を提供しています。


3.3「父親になるはずだった男性」に対する人工中絶の影響
トラウマ後のストレス障害
それでは、もし人工中絶が行われなかったら、当の赤ん坊の父親となるはずだった男性についてはどうでしょうか。

複数の研究の結果は、男性も、特に自分の子供が人工中絶されたことを知ったとき、激しい否定的な感情を経験することを示しています。様々な理由により、胎児の解任に関わった男性は時として、人工中絶について全く何も知りません。これは第一に、女性が人工中絶のことを極秘にしておこうとすることが原因です。その結果、男性が自分の子供の人工中絶に対して示す反応については、女性の場合より、少ない報告しかありません。自分の子供が人工中絶されたことを知った男性に生じる人工中絶のトラウマ的影響の典型的なケースを以下に示します。この述懐は、胎児が人間であることの更なる心理的な証拠となっている点で非常に重要です。

ベトナム戦争の退役軍人が、説かれることの罪悪感や抑圧した感情のために、どんな風になってしまったかをきっとあなたは読んだことがあるでしょう。それは「トラウマ後ストレス障害」と呼ばれています。これは基本的に、彼らを取り巻いた市と暴力に対する激しい反応を心から消し去り、抑圧しようとする結果生じるものです。そしてこれは、私が妻の人工中絶に対して示したのと同じ種類の反応でした。私の場合、妻と一緒にクリニックから出て行くとき、ことが終わったのではありませんでした。
もう1人別の父親となるはずだった男性は、人工中絶するという妻の決定に同意したこの男性は、クリニックに入る前の体験をベトナム戦争中、彼が経験した感情の同様になぞらえて語っています。
「あの待合室に入っていくときの感じをけっして忘れることはないだろう。私はこの感じのために、その場を離れなければならなかった。私は、自分がそこで感じるだろうことについて直接の知識があったのだ。」

私はベトナム戦争末期(1970―73年)に兵士として加わり、陸軍を辞めた後は、救助隊で働いていた。私が人工中絶のクリニックで感じたのは死の空気だった。救いのない漢字、そして絶望がきりのようにかかっていた。私はそこにいることができなかった。妻にもそこにいてほしくなかった。

この男性と彼の妻とは、人工中絶をすることなしにクリニックを立ち去りました。とは言っても、彼は「自分自身のオフィスで人工中絶をしてくれる医者に診てもらう」ことに決めたのでした。始めのうち、その医師のオフィスの「優しく」、「こざっぱりとした」雰囲気は、とてもよく思われました。人工中絶は「滞りなく」済み、「そして、その日の午後は、妻と私が結婚生活の中で過ごした最も親密な時間の一つだった。すべてが済んだ。あるいは、そう私たちは思った。」
多くの人工中絶をした男女の場合と同じく、長く残る人工中絶の感情面での影響は、この2人の結婚生活を破壊してしまいました。男性はそのときの心情を次のように描写しています。
「その頃ずっと罪悪感が私の心を責めさいなみ、私は軍隊で非常にうまくやっていたことをしなければならなくなった。私は心を頑なにし、自分の感情を押し隠したのだった。だが私は感情にいつもフタをしておくことはできなかった。ちょうど兵役についていた頃の押し隠された苦痛と嫌悪感が時おり火山のように爆発したように、子供失った苦渋も火をふいてでてくるのだった。
この夫妻は人工中絶の1年後に別居し、その数か月後離婚しました。人工中絶は彼らの離婚の唯一の原因ではないとしても、たしかにその引き金となったのです。この男性は自分の体験談を次のように結んでいます。
妻と私がこの決断[人工中絶についての決断]に直面したとき、私たちは診療所からも、中絶クリニックからも、事実を聞かされていなかったのです。誰も私たちに、人工中絶が後々までおよぶ影響を残すとは言いませんでした。誰も私たちに、人工中絶に関わった人の多くが、中絶そのものが済んだ後も、罪悪感、憂鬱、後悔の念に苦しんでいるとは言ってくれなかったのです 。
この男性は、人工中絶は人生において「長い影響をもたらす決断」 の一つであると考えるようになったと述懐しています。

3.4 医療従事者からの証言
悲しみや、生命を失わせたという感覚といった消極的な感情は、人工中絶に携わる医療従事者の証言においても、はっきりと表れています。そしてこのことは胎児が人間であるという事実の心理的証拠に、さらなる重みを与えます。たとえば、人工中絶手術についてある看護婦が率直に語っていることを聞いてみましょう。

私たちは、ここで人工中絶をしています。それが私たちの仕事のすべてです。時々、もうこれ以上、[胎児の]血まみれの残骸の入ったボウル[たらい]を手にすること、[人工中絶を行った女性へ]優しい、励ましの言葉をかけることに耐えられないと感じる、気だるく、殺伐とした瞬間(とき)があります。ですから私は処置室を後にして、新たなカルテを取りに行くのです...。[そして]もう一つ別のボウルを準備します。また一つの手短で心をささくれ立たせる[生命の]喪失です。」

この看護婦はさらにこう自分の気持ちを伝えています。「女性のふくれ上がった腹部がぎこちなく流れる数秒間の中に元の柔らかな状態に戻っていくのを見て、私自身のおなかも悲しみで急変します。」 さらに、彼女は「けれども多くの女性は、その音を聞くとき、悲嘆の大海が自分の下に開けるのを感じるようです。」

別の記事は医療従事者が胎児が単なる「かたまり」でないことをわきまえているという事実を明るみに出しています。人工中絶を執り行った医師についてのこの記事には、次のようなくだりがあります。
『人工中絶の後、医師は残余物を調べて胎児の全ての部分と胎盤とが取り除かれていることを確認しなければなりません。何であれ、子宮内に残る組織があれば、感染の原因となってしまいます。ブース医師はsocの中身を浅い皿に絞り出し、指であちこちつつきました。「ほら、ちっちゃなちっちゃな手が見えるでしょ。」と、彼は言いました 。
同じ職場にいる別の従業員は、こう言いました。「私たちはみんな、それ(人工中絶された胎児)が形が無ければいいと思っている。だけど[実際は]そうじゃない...。そして、それは苦しいことだ。大きな感情の痛みがあるんだ。」』
これらの証言は人工中絶の際に人間[の生命]が失われるという意識があることを証明しています。医療従事者はしばしば、術後に感じる悲しみ、およびその他のネガティブな感情について物語っています。

外科医のマグダ・デネス氏は自著の研究の中で人工中絶は悲しみであると同時に必要なことであると主張しています。同氏によれば人工中絶は必要なことです。なぜなら、女性はこれを必要としているのだから。そして、それは悲しみです。なぜなら、人間の生命が取り去られてしまうのだから 。

別の医師は『沈黙の叫び』(人工中絶についてのドキュメンタリー)有名な映画を観た後、非常に「気分が悪く」なりました。この医師は映画の製作者であるナタンソン医師の同僚でした。しかし、ナタンソン医師が人工中絶を行うのをやめたのに、この医師はそれを続けていました。この映画を見るまでは...。

ジャーナリストのジム・エドワーズは同映画がこの医師に与えた心理的影響をこう表現しています。「しばらくその映像を見るだけで十分だった。超音波技術者と同様、人工中絶手術を行ってきたこの医者はスクリーン上で見たことのために。

『沈黙の叫び The Silent Scream』(1984)は、YouTubeでも視聴できます。
https://www.youtube.com/watch?v=4Hb3DFELq4Y




バーナード・ナサンソンは産科医で、妊娠中絶を推進するNARAL(National Abortion Rights Action League 妊娠中絶権擁護全国連盟)の創始者でしたが、中絶で何が起こっているかを深く知るにつれ中絶反対の活動家に転向しました。

ナサンソンは、『理性の陰り Eclipse Of Reason』という続編映画も製作しました。
YouTubeでも視聴できます。
https://www.youtube.com/watch?v=_nff8I2FVnI


『胎児も立派な人間です』 1.生物学的証拠 2.医学的証拠

2017年05月27日 | プロライフ


『胎児も立派な人間です』 エリック・パストゥーシェク 著

以下は、TAN Booksで出版された “Is the Fetus Human?” by Eric J. Pastuszek の抄訳です。


前書き


出産前の子供たちが人間であるかどうかという問いは、そもそもまやかしに過ぎない。もし、それが人間でないとしたら、いったい何なのだろう。エリック・パストゥーシェクは出産前の幼児が人間であるだけでなく、かつて彼に与えられていた法的保護に値するものであるという事実に興味を寄せる人に説得力のある数々の証拠を提示している。
カール・トーマス (コラムニスト)


序 [Introduction]


受胎後18日ですでに脈打っている心臓、まつ毛も爪もそなえながら、24週間目で人工中絶された胎児の写真、以前人工中絶を行った経験のある人たちの証言、―これらは「胎児は人間なのか」という問いを発さざるを得なくする圧倒的な証拠のごく一部です。1973年の1月22日、合衆国最高裁判所はロー・ウェイド裁判(410 US 113)において同国内で妊娠9ヶ月[まで]の胎児に事実上、希望があれば即人工中絶を施すことを合法化しました。この判決は、人工中絶を非合法とするか、あるいは厳しく制限していた大部分の州の法律をなし崩しにしてしまうものでした。(最高裁判所はかろうじて、最後の3分の1の期間―すなわち最後の3か月間になされる人工中絶を禁止する選択の余地を各州に残しました。しかし、これさえ母親の生命を守るためという名目がある場合は、人工中絶する自由を母親に認めなければなりません。

しかし、人工中絶を妊娠期間全体を通じて、事実上、求めがあり次第許すこととした判決は胎児の「人間性」に関する生物学的およびその他の事実を考慮に入れていませんでした。様々な証拠が示すかぎり、子宮内の胎児は、はっきりそれと分かる、他の誰とも違う人間なのです。ロー・ウェイド訴訟の判決以来、進歩する科学技術―たとえば子宮内の胎児を見ることを可能にする胎視鏡など―によってさらに多くの証拠が生み出されています。

米国政府の立法府も司法府(即ち最高裁判所)も「胎児は人間か」という問いにふれていません。もし胎児が人間なら、求めに応じて人工中絶を行うことは、私たちの社会があらゆる倫理を放棄し殺人を許すのでないかぎり、まちがっています。ただ胎児が人間でないとすれば、その場合のみ、法律は人工中絶を許すことができるのです。

ここ10年の間、特に80年代後半では、人工中絶の枠を制限することに重点が置かれています。裁判所での判決ならびに立法のレベルでは、こうした制限を設けるのに幾分成功しましたが、それでもロー・ウェイド裁判で判決を下したブラックマン判事が1973年に直面せず回避した問題、つまり胎児が人間であるのかという問題にいまだ取り組んでいません。

たとえ人が胎内における生命の存在を示す全ての証拠を否定し、胎児をただの「かたまり」に過ぎないものとして片付けてしまおうとしても、胎児が一の日か、他の誰とも違う大人に成長する、かけがえのない生命であることには変わりありません。一旦胎児が抹殺されてしまうと、他の誰とも違う、世界でたった一人の大人は、その存在を永久に打ちなわれてしまいます。一体、どれほど多くの偉大な政治家、建築家、聖職者、―そして医師たち―が人工中絶のために失われてきたことでしょうか。


1 生物学的証拠


以下の問答は、以前2つの人工中絶クリニックを所有し、2つの人工中絶クリニックを
経営していたキャロル・エヴァレットとのインタビューからの抜粋です。

問:クリニック内の会話であなた、あるいはあなたの同僚は人工中絶されるものを男の子とか女の子、または赤ちゃんと呼びましたか。

答:私たちは1度も男の子とか、女の子とか読んだことはありません。私たちはそれを赤ちゃんと呼んでいました。私たちはよく「今日は何人の赤ちゃんを殺すことになっているの?」と言っていました。

はっきりとした心臓の鼓動、他の誰のとも違う独自の人間としての遺伝子構成、動き、音を聞き、さらに光を感知さえする ―これらは、子宮内の胎児が持つ多くの生物学的側面の一部です。心臓の鼓動は受胎後18日ですでに確認されます。遺伝子的構成(たとえば一人々々の大人のほかの誰のとも違う遺伝子的構図である46の染色体)は、受胎のときから胎児の中に存在しています。胎児は妊娠期の最初の3分の1で動き始め、視聴覚は妊娠中のさまざまな段階で発達します。胎児は痛みの感覚さえ持つようになります。

この章で取りあつかわれる問題は次のとおりです。

生物学と胎児学
胎児に関する基本的な生物学的事実
胎児の遺伝子的構成
胎内における人間の生命の存在を裏付ける科学的根拠
人工中絶を行ったことのある人たちの証言


1.1 生物学と胎児学
胎児に関する生物学的証拠は20世紀以前にも、すでに存在していました。この研究においての生物学的証拠というのは、胎児が人間であるかどうかという問題にかかわる科学的、医学的、およびその他の事実です。元人工中絶支持者だったある人はこう書いています。「19世紀に生み出された数多くの生物学的発展は、人工中絶の倫理性についての医師たちの考えに影響を及ぼした。胎内の生命が「胎動」[女性が最初に胎児ガ動くのを感じること]を待って始まるという考え方は、新たな勢いを得た胎児学の分野[の研究]により衰えていった。この胎児学というものは1827年にフォン・バウアーが初めて哺乳類の卵子を視覚化して報告した後、広まり発展しました。 」

近年、生物学の領域において蓄積された胎児の「人間性」に関する証拠も、強い説得力をもっています。たとえば、合衆国最高裁判所判事のサンドラ・デイ・オコーナーは、こう述べています。「医学が胎児の[母親から]分離した生存をより可能にするにしたがって、生存可能性はますます受胎[の時点]へとさかのぼってゆきます。」 「生存可能性」とは、胎児が子宮外で生存できる能力のことを言います。医学の進歩のおかげで、早い時期での胎児の生存と早産を可能にする医学の進歩のおかげで、胎児の生存可能性は、妊娠の中頃の時期にまで及んでいます。
胎児学という分野は子宮内における生命に関する近年の研究の一例です。胎内の胎児の写真を撮る胎児鏡によって、誕生前の生命を見ることできるようになりました。


1.2 胎児に関する基本的な事実
胎児に関する基本的な事実として次のことが挙げられます。

心臓は受胎後18日目で早くも動き出す。
20日目までに、神経系の全てが出来上がる。
42日目には骨格が完全に出来上がり、反射運動も見られるようになる。
8週間の時点で胎児の鼻をくすぐると、頭を後ろにのけぞらせ、当の刺激から逃れようとする。
9から10週間目には、胎児は目を細め、飲み込み、舌を動かす。手の平をなでれば、握りしめる。
11から12週間で、胎児は親指をしきりにしゃぶり、アミノ酸質の流動物を吸っては吐いて、呼吸器の発達をはかる。 
11から12週間で指の爪が生え揃い、16週間で眉毛も出てくる。
胎児は母親が感じ取る前に、すでに胎内で動いている。
12週間で、身体の全ての系統が機能している。
胎児は母親のそれとは別個の血液供給を有している。
 
メロディー・グリーン氏が報告しているその他の生物学的な事実は次のとおりです。胎児は「6週目までには手足を動かし、43日目には脳波を読み取ることができます。」「8週目には、その赤ちゃんは自分の指紋を持ち、受精から老年期にいたるまでの発達の各段階は、最初の時点で全部出揃っているものが成熟するだけのことです。」 もう一人別の著作家ボブ・ラルソンは、胎児の早期の発達についてさらに詳しい情報を提供しています。

[受胎後]1週間で、脊髄、背骨、それに神経系が形成され、また腎臓、肝臓、および消化器系が発達し始めます。18日目には原初的な心臓が自前の血液を送り出すようになります。30日目には、手足の基礎が現れます。骨格は1ヵ月半で成立し[出来上がり]、最初の動きを始めます。5週間目で能力は3つの部分に分かれ、休息に発達していきます。[受胎後]8週間経った胎児の体長はかろうじて1インチといったところですが、ほとんどの内臓器官はそろっています。胎児は対象物をつかみ、泳ぎ、しゃっくりをし、親指をしゃぶり、目を覚まし、規則的に眠ります。」 ラルソン氏はさらに、「11週間後の段階で身体系統の全てが形成され、機能しています。」 まだ十分に発達していないとは言え、胎児は2歳の子どもと比較できます。例えば、2歳の子どもの骨は十分に発達していません。同様に、胎児も体の部分を全てを具えていながら、発達の段階にあるのです。


1.3 胎児の遺伝子的組成
一部の科学者は胎児を魚あるいはおたまじゃくしと似たようなものだと主張していますが、しかし、胎児は実にヒト的な諸機関をそなえているため、人間にきわめてよく似通っています。事実、科学者たち自身、胎児の器官を「人体実験」のために取り出して使うのです。(1.8項参照)胎児は子どもと同様、十分に発達しきっていない唯一無二の生物学的存在です。一人々々の人は、受胎のときから、成人の段階にいたるまで、同じ遺伝子的組成をもっているのです。胎児の細胞は、大人の細胞と同数の染色体を含んでいますが、この染色体こそ、一人々々の人が、どのような人になるのかを決定する、他の誰のとも違う遺伝子的特長をもっているのです。健常な人は46の染色体を持っていますが、例外としてたとえば、ダウン症の子どもは47個の染色体を持っています。[24ページ]


2 医学的証拠

この章に載せてある写真は人工中絶の結果を示しています。これらは3つとも合衆国内で合法的に人工中絶された胎児の写真です。科学的な定義にしたがえば、胎内の幼児は[妊娠後役12週間で胎児(fetus)と呼ばれ、それ以前は胚種embryoと呼ばれますが、実際の人間の発達は継続的に起こるものです。3枚の写真は、それぞれ妊娠後6.5週間、19週間、24.5週間後の胎児の姿を明らかにしています。妊娠後8~10週間後以内の人工中絶には、すでに人間の全ての器官がそなわっています。

一番若い6.5週間の胎児は、まだ全ての器官を持っていませんが、主要な器官―例えば男性の生殖器官など―人間を人間ならしめる遺伝子的構成をすでに持ち合わせています。残りの胎児は、毛髪、鼻、まゆ毛など細かいところまで人間の姿・かたちを示しています。人工中絶には7つの基本的なやり方があります。(RU-486と呼ばれる薬品を用いる、最近開発された方法は、ここでは取り上げません。本書が出版された1992年の時点では、まだこの手段は合法化されていませんでした。)

「D&C(dilation-and-curettageの略)式人工中絶」 は、輪が先に付いたナイフで胎児を切り刻み、子宮から取り除くというものです。この方法は妊娠後7から12週間目(あるいはそれ以降)の胎児に対して用いられます。

「拡張・摘出式人工中絶」 は歯の付いたピンセットを用います。この方法は、先のD&C 法に似ています。ただこの手法が用いられるのは、比較的成長した胎児(受胎後12から20週間、あるいはそれ以降)であるため、胎児の頭部をくだき、体を引き裂いた後に、そのバラバラになった各部分を子宮から取り除くことになります。

「プロスタグランディン人工中絶」 では、早産を招くプロスタグランディンというやくざいをちゅうにゅうしておこなわれます。この手法は妊娠後12から20週間あるいはそれ以降の胎児に対して用いられますが、妊娠7、8、9か月目に至っている場合には、ふつう決まって使われる手段です。もし、プロスタグランディンによる中絶の結果、生きた胎児が出産された場合(そして実際、こうなることが多いのですが)、その赤ちゃんはほとんどの場合、放置して死なせます。

「塩分中毒人工中絶」 では、高濃度の塩素の溶液を注入して胎児に中毒と火傷を負わせます。このようにして殺傷された胎児は人工的な流産によって体外に排出されます。この方式は妊娠後14週間かそれ以降の胎児にしか用いられません。

「D&X(Dilation-and-Extractionの略)式人工中絶」 では、吸入カテーテルを使って、まだ子宮内にいる生きた胎児から、脳を引き出します。こうすれば胎児の頭蓋骨はくずれやすくなり、体の残りの部分と共に頭部を簡単に取り出すことができ、この手法は妊娠期間の第2三半期末期から第3三半期初頭にかけて用いられます。

[26ページの写真説明]
ステファンは妊娠後約6.5週間目でした。身長は2インチで体重は3分の1オンスでした。ステファンの体は、保存のためホルマリンの溶液に浸されました。この段階の胎児は、大部分の臓器がそろっているくらい発達しています。手足は、はっきりそれと分かり、へその緒付近に小さな男性生殖器官がみられます。

[27ページの写真説明]
エステルは妊娠後約19週間でした。身長は14インチで、体重は283グラムありました。エステルは高濃度の塩水の注入によって、皮膚の外層を焼かれ、中毒症状を起こして亡くなりました。写真では、頭髪と爪の存在が分かります。黒いまだらの点は、火傷を起こした皮膚の部分です。この段階の胎児は、全ての臓器をそなえているほど発達しています。

[28ページの写真説明]
グレースは妊娠後約24.5週間目でした。身長は19インチ、体重は519グラムありました。グレースはプロスタグランディンという薬剤によって中絶されました。この写真では、頭髪と爪が生えているのがよく分かります。また、この写真は、この段階での胎児は全ての臓器をそなえているほど発達していることを証明しています。

(続く)