2021.09.19撮影
今の季節のカナダ南部(アメリカとの国境線に近いところ)やアメリカでは、アスターがきれいに咲いています。上の画像は、アスターのうちでも、ニューヨーク・アスター(Aster novi-belgii)のものです。
頭花の構造は、冒頭の画像のように、舌状花と筒状花がはっきりと分かれているものが基本ですが、園芸種の「八重」のは、真ん中の部分がほぼ舌状花に変わっているものもあります。
用語については、昨日もご紹介しました以下のサイトなどでお確かめください。大阪大学全学教育推進機構のものです。
英語で Aster(アスター)と呼ばれているものは多岐に渡り、それは、日本語でも「キク」と呼ばれているものが多岐に渡るのと似た事情だと思います。
キク科(Asteraceae)の植物は膨大な数である(英語版Wikipediaによると、3万種以上)上に、庶民が「キク」、あるいは、Aster(アスター)と命名するものが必ずしも学問的な分類とは一致していない。それどころか、学問の方でも、かなりな頻度で分類を改定する(汗)。結果、名称が交錯します。
そのひとつは、Asteraceae(キク科)という科名にしても、英語では Aster(シオン属)から、日本語ではキク属(Chrysanthemums)から、来ている。ですから、ヨーロッパ系の人が Asteraceae(キク科)と聞けば、アスターを思い浮かべ、日本人が聞けばキクを思い浮かべるんでしょう。
おまけに、南北アメリカ原産の「アスター」と呼ばれているものは、現在は、Aster 属(シオン属)から独立させられ、他の複数の属に分けられています。今日取り上げているニューヨーク・アスターの新しい属名は、Symphyotrichum です。和名は今のところないようです。現在でも Aster 属のままの植物の例としては、日本のヨメナ(嫁菜 Aster yomane)などが挙げられます。
2021.09.27撮影
Symphyotrichum は、一般の人々の間では、根強く Aster と呼ばれています。その中で代表的なのが、次の2種です。原産は、いずれも北アメリカ。
学名旧名 Aster novae-angliae
学名新名 Symphyotrichum novae-angliae
和名 ネバリノギク(粘り菊)
英名 New England aster「ニューイングランド・アスター」
特徴 総苞片がそり返る、粘った毛がある、草丈は高め
学名旧名 Aster novi-belgii
学名新名 Symphyotrichum novi-belgii
和名 ユウゼンギク(友禅菊)
英名 New York aster「ニューヨーク・アスター」
特徴 草丈は低め(園芸種に高いものはある)
ここでお見せしている画像は、全て、うちのニューヨーク・アスターです。前には、わたしは、各種何種類もアスターを育てていたんですが、ほんと、全滅なんです、大木に成長した木々のおかげで。今は、新しく導入したこれしかありません。
次の画像の花の下の総苞の部分(「ガク」に当たる)をご覧ください。その下の小さい葉も。そこには、粘り気の出た毛はありません。目で見てもわかりますが、指で触って確かめておきました。よって、これは、ニューヨーク・アスターです。(この画像はフラッシュをたいて撮ったので、花の色が赤目に出ていますが、他の画像と同じ個体です。)
2022.10.09撮影
わたしの住むカナダで一般の人がニューイングランド・アスターとニューヨーク・アスターを区別することは、ほぼありません。そっくりだし。「アスター」と言うだけ。
園芸種が数えきれないぐらいあり、多種の花の色(藤色、青紫、赤紫、紅色、バラ色、ピンク、白、等)を楽しませてくれます。また、他の近縁種との掛け合わせもあります。庭にどれを植えるかは、最終的にはどの種か、より、どの園芸種か、になります。草丈、姿、花の色、など。
ところで、Aster novae-angliae が New England aster「ニューイングランド・アスター」と呼ばれるのは、納得がいくと思います。novae が英語の new に当たる「新しい」で、angliae が英語の England に当たる「イングランド」です。イギリスからの移民がアメリカ大陸に至り、ニューイングランドを築き、その地で見たアスターを New England aster「ニューイングランド・アスター」と名づけ、それがそのまま学名になった。
でも、Aster novi-belgii がなぜ New York aster「ニューヨーク・アスター」と英語では呼ばれる? belgii は「ベルギー」じゃないの? それは、現在「ニューヨーク」と呼ばれる地が、オランダの植民が始まったころには Belgica Foederata「ベルギー合衆国」と呼ばれ、そのころ、ベルギーはオランダの一部だった。また、汗。
以下の画像では、アスターが季節の推移を感じさせる時期に咲くことがわかります。背景に夏に咲いた植物の薄茶色い葉が見えます。
2022.09.22撮影
花盛りもご覧ください。
2022.10.01撮影