カラスといちごとクロッカスと

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個人の目をとおしてお届けします。

ハニーヒル・ジョイ

2024年03月06日 08時00分00秒 | キンポウゲ科、ヘレボルス
2024.02.08撮影

わたしの庭では、ヘレボルスが自由恋愛で増え続けています。でも、形質が少々停滞して、同じような個体が隣同士に咲いています。でも、今年は、特に、勢いが弱く、それは気候変動のせいかもしれませんが、長年の近親交雑のせいもあるかも、と考えました。

それで、新しい遺伝子を注入しようと、今年は思い切って、一度に3株を新しく迎えることにしました(一昨年は1株、去年は2株)。すでにご紹介した園芸種は、次の2種。



が! その2株は、大チョンボ、発覚。子孫を残さない園芸種なんだって。そんなことは、ラベルには書いてないもん。買ってきた新しいヘレボルスを、ここのブログで自慢しようと思って、調べていて、初めて分かった。うるうるうる


2024.02.23撮影

実は、購入する時から、園芸種は子孫を残せるタネがができない場合があるからなあ〜〜、と危惧はしていたんです、特に、異種間の交配種は。でも、花の美しさにフラッとなって連れ帰ってしまいました。

今年の子孫繁栄の一縷の望みをかけた最後の1種を、ここにご紹介します。その名も、ハニーヒル・ジョイ(Honeyhill Joy)」、「ハチミツの丘の喜び」だって。(この記事を読まれているそこのあなた、何を想像しています?)

冒頭の画像と直前の画像は、満開の「ハニーヒル・ジョイ」(ヘレボルスで「満開」というのは、オシベが花粉を出し始めた時の状態です)。次の画像は、開いてすぐの花、オシベがまだ固く閉じています。

2024.02.08撮影

学名 Helleborus x nigercors 'Honeyhill Joy'「ハニーヒル・ジョイ
英名 Hellebore 'Honeyhill Joy' 
キンポウゲ科(Ranunculaceae)ヘレボルス属(Helleborus

園芸店で、ああ〜、ニゲル(Helleborus nigerにそっくり〜〜、と思ったんですね。そうしたら、名称も、 
Helleborus x nigercors 
でした。

x nigercors niger というのがその「ニゲル」です。

次のニゲル(Helleborus niger)の画像をご覧ください。この画像は、たまたま、花が開いてかなり日数が経ったものです。

2006.02.05撮影

学名 Helleborus niger
英名 Christmas Rose
和名 ユキオコシ(雪起こし)
流通名 クリスマス・ローズ
キンポウゲ科(Ranunculaceae)ヘレボルス属(Helleborus

ニゲルもお店にあったんです。でも、草丈がずっと低いので、わたしの庭の他のヘレボルスに埋もれてしまってはいけないと思い、花茎の高いハニーヒル・ジョイ」 を求めました。

x nigercors niger は「ニゲル」ですが、では、x nigercors cors は何でしょう。それは、corsicus で、イタリア半島の西にあるコルシカ島の Corsica(コルシカ)の形容詞形です。


2023.03.28撮影

学名 Helleborus argutifolius
英名 Corsican Hellebore「コルシカのヘレボルス」
キンポウゲ科(Ranunculaceae)ヘレボルス属(Helleborus

2021.02.26撮影

これ、わたしの庭では、あちこちに広がっているんですよね。多くの人に差し上げました。それでも、掘り上げてコンポストにせざるを得ないほど増えます。勘弁してくれ。きれいな花で、草の姿も美しいのだが、ほんと、勘弁して。

でも、この1月の雪害で、成長済みの個体(次の画像)は、花が咲く前の葉っぱだけの状態の時に、地上部が全滅した。地下で生きていることを祈ります。見えなくなると、恋しい。アルグティフォリウスの姿が見当たらない庭って、変〜〜〜。どうか、生きていてください。


2023.04.03撮影

今日ご紹介の交配種ヘレボルス x ニゲルコルスハニーヒル・ジョイHelleborus x nigercors 'Honeyhill Joy')は
・原種ヘレボルス・ニゲルHelleborus niger)と
・原種ヘレボルス・アルグティフォリウスHelleborus argutifolius)を
かけあわせたもの。

この場合は、x nigercors とはっきりと系統が明示され、わかりやすかったです。

そして、有効なタネができるかどうかの最終判決が出た、と一瞬思った。英語の記事ですが。不妊だそうです。これで、3打席続けて三振。


ところが、他の有名サイト(英文)には、
>> 花芽の発達を促すために、タネが必要でない人は、
>> タネができる前に花茎を切り取るように
と書いてある。


はい、はい、はい、インターネット上の情報を無批判に信じたりしませんからね。それにしても、両者とも、それなりのサイトである。でも、この場合は、どちらかと言えば、わたしは「不妊」の方を信じます。

なぜなら、
>> タネができる前に花茎を切り取るように
というのは、ヘレボルスの記事全てにデフォルトで入れた可能性がある上、「不妊」というのは、わざわざ書き加えなくては書かれないことであろうので。

でも、わたしにはできることがある。うちの「ハニーヒル・ジョイ」の観察を続けること。タネのサヤはできるであろうか。タネはこぼれるであろうか。

2024.02.08撮影

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ピッパズ・パープル

2024年03月04日 08時00分00秒 | キンポウゲ科、ヘレボルス

2024.02.05撮影

このヘレボルスも、遺伝子の多様化を図って庭に導入したヘレボルスの株のひとつです。園芸種名を「ピッパズ・パープル(ピッパの紫)」('Pippa's Purple')といいます。

先日ご紹介した「アイスンローゼズ、ピコティ」は、去年買った真っ白な「アイスンローゼズ、ホワイト」の兄弟姉妹、ということで、園芸店で目が留まりました。

今日ご紹介の「ピッパズ・パープル」は、「アイスンローゼズ」と同じように、花茎が高くて目を惹くんですが、それより、「ピッパズ・パープル」、花びらの色、バラ色が、夢見心地できれいだと思いました。葉っぱも美しく、模様が入ります。

2024.02.23撮影

こういうピンクって、わたしの経験上、うちにあるようなフツーの雑種のヘレボルスには、なかなか現れないんですよね。赤紫系やピンク系はたくさん生まれるんですが。

次の画像3枚をお比べください。大きい画像が「ピッパズ・パープル」、小さい画像2枚がわたしの庭で生まれたオリエンタリス系の個体です。画像上の色は、もちろん、撮影条件に左右されます。

2024.02.05撮影(ピッパズ・パープル」

 
2022.03.01撮影(オリエンタリス系)     2022.03.13撮影(オリエンタリス系

オリエンタリス系のヘレボルスは、通常斜め下向きに咲きます。それで撮影の時には、カメラを斜め下から斜め上に向けて構えるか、あるいは、片手で花茎を支え、花の顔の向きを変え、もう片方の手でシャッターを切ることになります。後者はなるべくしませんが。花が不自然な向きになるばかりでなく、手ブレが起こりやすいですから。

「アイスンローゼズ」や「ピッパズ・パープル」は、園芸種として開発され、花の顔を人間が目で捉えやすい、ほぼ横向きの姿で咲いてくれます。新しいヘレボルスを開発するヘレボルスの園芸家たちは、ヘレボルスを横向きに咲かせよう、と長らく努力してきました。

2024.02.23撮影

「ピッパズ・パープル」を改めてご紹介します。
学名 Helleborus x iburgensis 'Pippa's Purple'「ピッパの紫」
英名 Lenten Rose 'Pippa's Purple' 
キンポウゲ科(Ranunculaceae)ヘレボルス属(Helleborus

Pippa「ピッパ」というのは、ギリシャ語由来の英語の女性名 Philippa「フィリパ」(男性形は Philip「フィリップ」)を短くした愛称で、最近では、愛称形 Pippa そのものも実名として使われることもあります。イギリスのウィリアム皇太子妃キャサリンの妹が、Philippa で、この人は、通常 Pippa と愛称形で呼ばれます。

2024.02.23撮影

では、「ピッパズ・パープル」の Helleborus x iburgensis は、何と何(と何と何・・・)がかけあわされて、出来上がったのでしょうか。名称からは分からないので、調べてみました。

交配種ヘレボルス x イブルゲンシス(Helleborus x iburgensis)は
・交配種ヘレボルス x ヒュブリドゥス(Helleborus x hybridus)と
交配種ヘレボルス x バラーディアエ(Helleborus x ballardiae)を
かけあわせたもの。

ヘレボルス x バラーディアエ(Helleborus x ballardiae)って、どっかで見たよねえ〜〜〜、と自分の写真の記録を見てみると、去年、遺伝子注入のために来てもらった 'Merlin'「マーリン」 Helleborus x ballardiae でした。これも葉がきれいな園芸種です。

 
2023.03.05撮影(マーリン)         2023.03.28撮影(マーリン)

 
2023.05.11撮影(マーリン)         2023.04.30撮影(マーリン)

この「マーリン」くんは、今年1月に、雪でコテンパンにやられ、葉はなんとか少々生き残りましたが、花芽を(多分)全部失いました。普段は、上右の画像のようにきれいな葉を繁らせています。

では、交配種ヘレボルス x バラーディアエ(Helleborus x ballardiae)の出自は、というと、
・原種ヘレボルス・ニゲル(Helleborus niger)と
・原種ヘレボルス・リヴィドゥス(Helleborus lividus)を
かけあわせたもの。

ここまでさかのぼって行って、やっと原種の名前が出て来ました。

2024.02.08撮影

さて、「マーリン」は有効なタネを作るのか。続けて調べていくと、え? 「マーリン」は・・・不妊? そんなあ・・・。言われてみれば、確かに、タネのサヤが結実したのを見たことないわ。

じゃあ、「マーリン」と近縁関係にある「ピッパ」は? と懸念しながらあっちこっち情報を探すと、うそやん、「ピッパ」は「完全に不妊」と書いてある。じゃあ、わたしがお迎えに行ったのは、庭の繁栄のためにはムダだったのか?

なぐさめに、「ピッパズ・パープル」の美しい葉をご覧ください。左下の画像では、ピンクの模様が、右下の画像では、黄色の模様が出ています。

 
2024.02.23撮影               2024.02.23撮影

やっぱりねえ、異種間の交配種は、自然繁殖が難しいのか・・・

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アイスンローゼズ

2024年03月01日 08時00分00秒 | キンポウゲ科、ヘレボルス

2024.02.05撮影

新しいヘレボルスさんをお迎えしようと、2月の初めに園芸店へ行ってきました。目的は、新しい遺伝子の注入。

まず見つけたのが、このピンクの縁取り(ピコティ)のヘレボルス。花茎をすくっと伸ばし、大型の花を横に向けて咲かせている花で、その葉の特徴とも合わせ、去年求めたヘレボルスと同じ園芸種の色違いだ、とすぐにわかりました。

2023.02.04撮影

直前の画像が、去年購入した
ヘレボルス x グランドルフェンシス「アイスンローゼズ、ホワイト」です。
Helleborus x glandorfensis 'Ice N' Roses' white
(この株は、今年1月の雪害で、花芽がほぼ全滅、上の画像は去年の画像。)

冒頭の画像が、今年購入した、白地にピンクの覆輪(ピコティ)
ヘレボルス x グランドルフェンシス「アイスンローゼズ、ピコティ」です
Helleborus x glandorfensis 'Ice N' Roses' picotee

2024.02.19撮影

どんなお花かは、写真を見ていただくとして、今日は、名称に噛みついてみたいと思います。ただし、ヘレボルスはやや毒性がありますから、植物自身には噛みつきません。

園芸種では、その園芸品種名を一重引用符「' '」で囲んで示します。今日の品種では、'Ice N' Roses' と書かれた部分が園芸種名です。

'Ice N' Roses' は、カタカナで「アイスンローゼズ」としておきましたが、ちょっと変な名前。英語の単語を使っているというのは分かります。Ice「氷」と Roses「バラ(複数)」なんですから。

でも、「氷」と「バラ」をつなぐ N' が曲者ですよ。and の省略だろうというのは文脈でわかるのですが、なぜ後ろにだけアポストロフィがついている???

英語の辞書の権威、オクスフォードの辞書によると、and の省略形は、
'n'
'n
n
しかないんです。

つまり、
n'
というのは、ないんです。

まあ、商標「氷とバラ」ということで、許してあげますわ。少なくとも、N' のついた 'Ice N' Roses' いう命名は、わたしの注意はしっかりと引いたので、宣伝効果は最低ひとりにはあったということです。2年続けて買いましたもん。


2024.02.08撮影

Helleborus x glandorfensisヘレボルス x グランドルフェンシス)のx」は、交雑種・交配種であることを示しますが、それに続く glandorfensisグランドルフェンシス)は、系統を示しているのよね〜〜、と思いません?

それが違うんですよ(その場合もあるんですが)。そのxの後の部分は、その園芸種の開発者が好きに名づけることができるんです。つまりは、x」というのは、交雑種・交配種である、ということを示しているだけで、それに続く部分は、必ずしも出自を表さない。

Helleborus x glandorfensisヘレボルス x グランドルフェンシス glandorfensisグランドルフェンシスの場合は、開発者の故郷、ドイツの Glandorfグランドルフ)に因むそうです。


2024.02.23撮影

さて、ヘレボルス x グランドルフェンシス「アイスンローゼズ」(Helleborus x glandorfensis 'Ice 'n Roses')の系統は? と言いますと、
ヘレボルス x エリックスミシイ(Helleborus x ericsmithii
ヘレボルス x ヒュブリダ(Helleborus x hybrida
がかけあわされたものであります。

ちょっと待って。
ヘレボルス x ヒュブリダ(Helleborus x hybrida) 
がすでに「ヘレボルス交雑種・交配種」って意味じゃないのか? そして、x hybrida というのは、系統を明記しない書き方。

これは、要するに、開発者が企業秘密ということでこの園芸種の出自を隠してあるの? それとも、開発者自身が、系統を把握していないの???

2024.02.19撮影

さて、グランドルフェンシスglandorfensis)のもうひとつの親、
ヘレボルス x エリックスミシイ(Helleborus x ericsmithii
は、どこのだれさん? これも交雑種・交配種なのね、「x」がついているから。そして、これも系統を必ずしも表すとは言えないのよね。

でも、このx」から後の部分 ericsmithii には、最後にii」がついている。そして、それは、学名の規約上、人名につく語尾。つまり、これは、Eric Smith(エリック・スミス)という人の名前に因む名称です。

2024.02.22撮影

実際、エリック・スミスという人は、園芸家で、難しいとされた
・中間種のヘレボルス・ニゲル(Helleborus niger)と
・有茎種のヘレボルス x スターニイ(Helleborus x sternii)と
のかけあわせを、世界で初めて成功させ、
ヘレボルス x エリックスミシイHelleborus x ericsmithii)を作出しました。
(無茎種、中間種、有茎種、については日を改めて。)

ほ〜、これはそんなにすごい交配種なのか、と感心しながら説明を読み進むと、エリックスミシイ子孫を残すタネを作れない、って。え? わたしは遺伝子注入のために新しいヘレボルスを導入しているのに!!!!!

2024.02.23撮影

エリックスミシイが有効なタネを作らないなら、それを片親とした x グランドルフェンシスアイスンローゼズ」は、どうなの? 「アイスンローゼズ」も不妊なの? そんな〜〜

上の画像をちょっとご覧ください。この緑の花(実は、ガク)は、先日撮影したアイスンローゼズ、ピコティ」です。オシベと蜜線が落ち、メシベの根元の子房がふくらみかけている段階の花です。子房の状態から見て、そのうち、タネができるわ〜、と思っているのですが、、、

2023.05.01撮影

実は、去年買った白い「アイスンローゼズ、ホワイト」がタネを産出するかどうか、去年からすでに心配だったんです。それで、わたしは、このヘレボルスを4〜5ヶ月間見張っていました、いつ妊娠、出産するか、と。うまくタネのサヤがプックリとふくれた時には、安堵しました。上の画像をご覧ください。

ただ、タネは、できるが有効でない、ということもあります。それに、わたし、日本とバンクーバーを行き来していて、観察を続けられず、タネがこぼれるところまで成熟したかどうか、確認できていないんです。バンクーバーに帰って来てから、サヤが開いて空になっているのは見ましたが。

「アイスンローゼズが子孫を残すかどうかに関しては、今後に請うご期待。数年後にご報告できるかもしれません。

ただ、多数ある実生、どの個体が親かは推測の域を出ない、という現実があり、「アイスンローゼズの貢献度は、分からないままになるのでは・・・

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