Fuji Trip!

水豚先輩の週末旅日記

春の中央線の旅 その3

2015-04-19 00:20:02 | とりっぷ!


続いて、大月駅から乗車するのは甲府行きの普通列車。
重厚ながらも可愛らしい古参の車両に乗れるのも中央線の魅力である。

車内はボックスシート。
甲府までの区間は是非とも進行方向左側の座席に座っておきたい。

出発してもまだまだ山の中。
車両も、うんうんと唸りながら走っているから頑張っている感じが伝わってくる。
車内放送などは聞こえない。

ずいぶん長いトンネルに入った。
笹子峠の下を潜る笹子トンネルであろう。
全長4656kmもの長大トンネルで、並走する中央自動車道でトンネル天井崩落事故が起こったことは記憶に新しい。



眺めるものもなくなって、しばらく風を切る轟音を聞きながらぼんやりしていると不意に太陽光が射しこんできた。
目を細めつつ、車窓に目をやると、先程までのどんより空が嘘のように晴れ渡っている。

山を一つ越えただけで、こんなにも天候が変わるものなのかと驚いた。
陽ざしが暑いくらいに射しこんで、一気に春になった。


 




もう一度、新御日影トンネルと呼ばれる長いトンネルを抜ければ、いよいよ春景色も最高潮に達した。
甲府盆地の平野が目の前に広がり、その景色を邪魔するかのように満開の桜。


「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった。」とは有名な川端康成の小説の冒頭文だが、まさにトンネルを抜けると春なのである。

ぼんやりとしていても列車は進んでいることを実感せずにはいられない。

東京も3月下旬から悪天候が続いており、なんとも久々の青空だ。
目の前の桜に目を奪われていると、列車は勝沼ぶどう郷駅に停車した。

この区間は中央線沿線でも屈指の絶景区間で、次の塩山駅までの間に平野まで一気に駆け降りる。
この眺望を楽しむため、席はなるべく左側がいい。
それでも満開の桜と青空のサプライズはまったくの予想外であった。





さっきまで唸り続けていた車両も心地よさそうに坂を下っていく。
遠くには雪を載せた南アルプスの山脈が望める。
近景に目を移すと、たくさんのぶどう畑だ。「駅前足湯」なんて看板も見かける。

駅間隔が短くなって、多くの乗客が乗ってくると、いよいよ山梨県の中心部へとやって来た感じがする。


甲府城の城郭が見えたら、終点の甲府に到着。
といっても、一休みするまもなく、隣のホームに停車中の松本行きに乗り継ぎ。
次の車両は残念ながらロングシートだ。



甲府市も桜が満開で、車窓風景には事欠かない。
ついでに市街地を出ると、富士山も顔を出した。
富士と桜なんて、なんとも近代日本や日本好きの外国人が好みそうな日本風景である。

通勤車両から見る富士山もなかなか悪くない。
日常的に富士山が見えるっていうのは羨ましい限りだ。


列車はまたしても平野から山地へと向かうため、標高を上げている。
勝沼あたりで見た、雪を載せた山々も、もうすぐそこまで迫っている。
本当に日本は山ばかり。山に挟まれた小さな平地に人間がひしめき合って暮らしているのだ。

 


山梨県も北東のはしっこ、小淵沢駅の一つ手前の長坂駅で下車。
上り坂の途中に設けられた簡素な駅だ。

ホームからは爽快なほどのマウントビューである。

降りたのは私たちくらいなもので、列車が去ってしまうと、聴こえる音は鳥の鳴き声くらいなものだから驚いた。
はたして、なぜこんな自然豊かな途中駅で下車したかというと、今回共に旅しているT氏の目当ての美術館がこの地にあるからである。

清春芸術村――。
私も美術館特集の雑誌で、名前だけは知っていた。
T氏はその芸術村にある「光の美術館」を見てみたいという。

駅前の小さなロータリーから出る公共バスは1日に4本。
やって来たマイクロバスには「芸術村」の文字がないので、不安になったが運転手さんに聞けば確かに経由するという。
公共交通機関で、その芸術村を訪れる人は少ないと見た。

そして、バスは運賃表も案内放送もない。
なんだかタクシーのようである。

乗客は私たちと、あとひとり。
アットホームな雰囲気のバスは、私たちの知らない行先目指して進んでいく。

 



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