第1回アカデミー賞(1927年)で作品賞を獲った映画。
当時は芸術作品賞ってのもあってそれは『サンライズ』ってのが獲ってまして、確かに『つばさ』はアクションあり恋愛あり友情あり笑いと涙ありのエンタメ映画でございます。
目次
- 意外と面白かったです。
- 戦闘機アクションがすごい。
- 宝井琴星さんによる講談がついたバージョン
- それにしてもとどまるところを知らない女性差別。。
- どんだけ製作費かけたんだろう
- ノーマンズランドを挟んだ鉄条網地獄と塹壕地獄。
- ラストネタバレは以下に。
意外と面白かったです。
冒頭
「戦争ってカッコイイ!」「国家って最高!」みたいな感じで始まるので観るのやめようかと思ったのですが、
終盤では戦争の残酷さが描かれるし
反戦のセリフが繰り返されるので
1927年のエンタメ戦争映画でもこんなに色濃く反戦のメッセージがあったんだなと感心しました。
戦闘機アクションがすごい。
地球上に飛行機というものが生まれてそんなに経っていない頃ですから
とにかく空飛んでるだけでも相当な興奮があったはず。
でもそれだけに頼らずにカメラアングルが多彩。
主観もあれば、
操縦士のアップもあれば、
何機もある戦闘機同士の戦いの様子とさらに高いところから撮影したり、
下から撮ってみたりと
ちょっとびっくりするくらいのアクションです。
第一次大戦の戦闘機ですから軽くて頼りない感じ。。
ちょっと紙飛行機くらいに見えるんです。。
それに乗って殺し合いをしてるわけですから余計怖い。。
で、
結構なアクションシーンをやってるんで、心配。。
何人か死んでんじゃねえかってなくらいに、、なんか雑なんですよ。。アクションシーンが。。
車とかも平気でクラッシュしてるんですが、明らかに人間が人形のように飛んでるんです。。骨折はしてると思いますよ。。
宝井琴星さんによる講談がついたバージョン
今回は宝井琴星さんによる講談がついたバージョンを観ました。
本編は無声映画ですから音声のセリフはナシで、
たまに字幕が入る程度。
宝井琴星さんがナレーターとして
めっちゃしゃべるので話はとてもわかりやすい。
セリフも喋るし、話の筋も喋るし、全然関係ないことも喋る。
***
「天晴!飛行士にも武士道精神があったのでありました!」
とか
「石原裕次郎並みの腕っぷしの強さ!」
とか
「お前の彼女、洗濯板だな!などと言っても若い人には伝わらないでしょう」
とか
何時代のどこの国の話なんだと分からなくなるんですが、、それはそれで面白い。
昔はサイレント映画上映には生演奏がついていたり、
複数の俳優がセリフを生で話したり
一人の弁士がナレーションからセリフから全て喋ったり、と
かなり自由度高く映画を楽しんでいたわけですので、
まぁこのバージョンも、当時のリアリティとして楽しめました。
それにしてもとどまるところを知らない女性差別。。
「現代女性ならパンチの一つでも飛んできそうですが
昔の女性は奥ゆかしい!
怒りの心をグッと抑えてひたすら耐え忍ぶのであります!」
「口では拒んでも体は許してしまう悲しい女心!」
「お前も制服を脱いだら女だな〜〜〜」
もう、、すげえなと思いますよ。。
この時代だからしょうがないよね、と思っちゃいますが。
ってことは現代の映画を未来人が観た時も
「この時代って差別すげえな」って思うってことですよね。
「まぁ、古い価値観の人たちだからなぁ」って。。
そんな風に思われんの嫌だ〜。。
現代にも差別主義者たちがいるせいで未来人に現代の映画をバカにされんのか〜〜。。
どんだけ製作費かけたんだろう
140分ありますけど意外と飽きない。
宝井琴星さんの功績がだいぶ大きいと思いますが
やっぱアクションがリアリティがあって面白いんですよ。
町が爆撃されるシーンがあるんですが、
爆撃機目線のアングルがなんか客観的で怖いですし、
当時の爆弾なので、多分火力がそんなにないんですよ。
爆破が「映画的」ではなくて、それがリアルで怖い。。
でも民家は容赦無く破壊されていって、、
どんだけ製作費かけたんだろうって感じ。。
町ひとつなくなってますからね。。
***
ドイツ軍の偵察気球も面白い。
偵察気球なんて標的でしかないはずなんですけど、フワ〜っと飛んでくるんです。
で、もちろん撃たれる。
燃える気球から脱出してパラシュートで地上へ落ちるドイツ軍人。
それがすごい速度で、、すごい衝撃、、骨折だか気絶だかしてますよ。。
大丈夫でしょうか、あの人。。
ノーマンズランドを挟んだ鉄条網地獄と塹壕地獄。
中盤までは空中戦が多くて、それも面白いんですが
後半は塹壕戦になります。
規模がすごい。。
面積もすごいし、人数がすごい。。エキストラ何百人といますよ。。
ホントに豆粒にしか見えない人たちも遠くの方でせっせと戦っているし、足元には死体の山。。
『1917 命をかけた伝令』と規模感はそれほど変わんないですよ。
アクションシーンとかが雑なので、、
ほんとに死んでる人いるんじゃねえかという心配もあって、かなりの迫力。。
このエキストラの人たちのモチベーションって何なんでしょうか。。
たまに現代映画のブルーレイなんか見ると奥の方で「早くおわんねえかな」みたいな顔してるエキストラの人いますけど、
この人たちは命かけて撮影してますよ。。
塹壕目線。歩兵の足しか見えない視界。そこで機銃掃射。音もなく(サイレント映画だからね)倒れる数十人の兵士たち。
ナレーション「連合軍はただひたすら前進を続けます。」
そう、前進し続ける。
なぜなら後退したら味方に撃たれるからね。
「下がったら撃つ。ただ前進しろ」って言われてますから。
進んでも死ぬし後退しても死ぬ。
2020年1月公開の映画『彼らは生きていた』観ましたか?観てくださいね。
ラストネタバレは以下に。
捕虜として捕まっていたデヴィットは隙を見て脱走。
敵機(ドイツ軍機)に乗って基地に戻ろうとしている。
そこに戦いに勝利したジャック。
ドイツ軍の飛行機とみるや否や射撃。
デヴィット「ジャック!俺だ〜」
その声も聞こえぬまま、勝利で興奮してるジャックは攻撃を続け、デヴィットの機は墜落。
教会?
十字架の置いてある家に墜落。
現代の映画だったら家ごと爆破されそうだけど
結構「クシャっ」ってな感じで家にぶつかる。
そのままその家に住めそうな程度の破壊しか起きない。
飛行機が軽いんでしょうね。
で、デヴィットは死にそう。もう助からないなって感じ。
そこにジャックが降りてくる。
墜落した敵機の前で写真撮影。わ〜いってな感じ。
で、操縦していたドイツ兵の顔でも見てやろうと近づくと、それはデヴィット。
「デヴィット生きてたのか!!でもそれを俺が撃ったのか!!」と複雑な表情のジャック。
デヴィットはそんなジャックを見てニッコリ。
「敵から飛行機を奪って逃げてきたんだ」とデヴィット。
ジャック「かすり傷さ!すぐ医者を呼ぶ!」
他の兵「こればかりは仕方のないことです。これが戦争なんです。」
デヴィット「ジャック、しばらくはそばにいてくれ」
ジャック「俺はお前の敵討ちのために。。」
デヴィット「お前は何も悪くない。お前が撃墜したのはドイツの戦闘機だ」
ジャック「お前との友情ほど大切なものはない」
キスすんのか(してる)って感じに抱き合い、互いの顔を愛撫しながら会話。
デヴィット、死亡。
ジャックはデヴィットを抱えて、ドイツの国旗を踏んで、台車に載せてデヴィットを移送。
戦争の喧騒は終わった。
臭い煙ももうない。平和が戻った。
デヴィットの恋人シルヴィアの手紙を読むジャック。
「ジャックは私がジャックを愛していると勘違いしているわ」
ジャック、シルヴィアの気持ちを初めて知って落ち込む。
英雄凱旋帰国!
盛大なパレードで迎えられる。
ジャックが帰ってくることを知っているだろうにパレードに参加しないメアリー。泣いている。
帰宅。
母、父、犬がジャックを温かく迎える。
気丈な母、涙を流す。
母「あなたを憎もうとした。でも悪いのは戦争よ。」
ジャックとメアリーの会話
ジャック「メアリー、ある夜パリで一人の娘と会った。俺は酔っ払っててあれが誰だったのか思い出したくもない。それと。。。」
メアリ「私も戦争を経験したわ。でも誰も責められない。大事なのはこれからの人生でしょ」
二人の前に流れ星が流れる。
ジャック「流星を見たときにするべきことはなんだ」
メアリー「愛する娘にキスをするのよ」
キスする二人。
おわり。