蝉しぐれ
2007-03-01 | 本
大きな声で言うことではないし、むしろはずかしいことだが、私はあまり本を読まない。買ってはみたものの、途中で嫌になってしまうことが多かった。読めない漢字が多いというのもネックかもしれない・・・。
ブログの場を借りて、あまり本を読まない自分が読んだ(読みきった)数少ない本の記録を残しておこうと思う。
藤沢周平作品、『蝉しぐれ』。これは私が初めて読んだ時代小説だ。
この本を買うきっかけになったのは、山田洋次監督の映画『たそがれ清兵衛』だった。下級武士の暮らしを通じて、はたから見れば不憫(ふびん)に映る生活の中であっても、そこで暮らす家族の絆は、ひっそりと、しかし強く結ばれている様を観ることができた。地味だけど、強さを感じた。
こんな話を書いた作家の作品を本で読んでみたくなったのだ。ここで『たそがれ清兵衛』を買わずに、『蝉しぐれ』を買うところが私の天の邪鬼(あまのじゃく)なところなのだが。
先にも触れたが、不勉強なので読めない漢字が多い。なので電子辞書が手放せなかった。調べて読みがわかっても、時代物なのでその意味がわからない。広辞苑と百科事典、ときには漢和辞典と、あれもこれも引っ張り出してきて意味を理解しつつ読んだ。
恥さらしのついでに。普請組(ふしんぐみ)。これがなかなか読めなかった。
請求書の“せい”だから“ふせいぐみ”と思っていたら違った。
四苦八苦しながらも、だんだんと言葉の意味がわかってくると、藤沢作品の美しい自然描写やその場面の情景も浮かぶようになってきて、登場人物の行動を頭の中でイメージしながら読み進めることができた。
内容についてはうまく書けそうにないので省略する。この作品を読んで思ったのは、藩の中で藩命に従って生きる人間の有り様と、現代の個人主義について。どちらがいい悪いではない。それぞれの時代に生きている人間像が、同じ日本でありながらこんなにも違ってくるんだなと思った。