FCC日記

子どもたちのクライミングスクールの活動記録と教育、スポーツ、そしてクライミングに関して想うこと。

『わが子を「メシが食える大人」に育てる』

2013-01-09 12:26:55 | ブックス
書店を散策中、『子育ての最終的な目的はたったひとつ。経済的、社会的、精神的に自立した「自分でメシを食っていける大人」にすること』というフレーズと「人間力を育む」というキーワードが目にとまり、思わず手にした本書。

予備校で大学受験の学習指導をしていた著者が目にした、生徒たちの「意欲の乏しさ」。
これが著者が「花まる学習会」という学習塾を立ち上げる契機になったとうことですが、
それはまさに、私がこのクライミングスクールを始めたのと同じであったのです。

その昔、私は大学院に通い自分の研究を続けながら高校や予備校で国語の教員をしていたのですが、
当時、何といっても気になったのが生徒たちの目に全く輝きがなかったことです。
彼らの目を輝かせようと、必死に教材研究をし、その餌に彼らが食いつく瞬間が仕事のモチベーションとなっていました。
・・・が、すでに育ち上がってしまった彼らを根底から変えることは、制限された学校での接触時間では限界を感じていました。

もっと、意欲的で骨太な気力を育むような関わり方がしたい!

そこで思い当たったのが、自分が必死で取り組んでいた「クライミング」というツールでした。
クライミングには、ルートを見てどう登るかをイメージし、それを完登するためにムーブを自分で考え、あきらめずに試行錯誤を繰り返しながら限界までやりぬくことが重要です。
また、仲間同士でロープを確保し合い、お互いに命を預けるためにはしっかりとしたコミュニケーションを取って信頼関係を築かなければなりません。
このスポーツには「生きる力」を育む必須要素が詰まっているように思えたのです。

今まで9年間、手探りで子どもたちと関わってきましたが、その想いは確かな手ごたえとなりつつあります。
そして、そのようなときにこの本を読み、それは確信へと変わりました。

著者は本書の中で、「子どもが真の自立を果たすために、親として育んであげたい」「メシが食える大人になるための5つの基礎力」として次の5項目を示しています。
ことばの力 ②自分で考える力 ③想い浮かべる力 ④試そうとする力 ⑤やり抜く力
そして、これら5つの力はお互いに密接にかかわっていることを踏まえながら育んでいく姿勢も大切、とも述べておられますが、これらはまさにクライミング技術を身につけて行く上で欠かせない力でもあります

そして、これらの力を真に定着させるためには、大人の価値観で押し付けるのではなく、子どもの自発的な意欲を引き出すことが大切、とも説かれています。

将来、わが子がしっかりとした仕事をし、自分の人生を充実させて生きていくことを願う親御さん必読です

● 『わが子を「メシが食える大人」に育てる』 高濱 正伸 著 廣済堂出版



岩崎由純著『子どものココロを育てるコミュニケーション術』

2012-12-26 11:55:55 | ブックス
「トップアスリートという夢に向かって」と副題が添えられている本書は、アスレティックトレーナーとして活躍される岩崎由純氏がトップアスリートを夢見る子どもを持つ親と、その周囲の大人たちへ向けて発信するメッセージ。

我が子が自らの夢を諦めずにかなえられるように成長していくために、親としてどのように接するべきか、何を心構えとするべきか、をその豊富な経験から説かれています。

「…意外と思われるかもしれませんが、プロスポーツの世界に、子どもの頃からスパルタ式に鍛えられた選手は、あまり多くはありません。もちろん、厳しいトレーニングに耐えて、努力をしてきたものだけが入れる世界なのですが、「巨人の星」の星一徹のような親の存在は、あまり見られないのです。
 どちらかというと、子どもの夢を見守り続ける「応援団」のような両親に育てられた選手が圧倒的に多いのです。」本書p40

「また、子どもたちが夢を諦めてしまう多くの原因は、親と周りの大人たちにあります。子供の頃には、誰しもが「プロ野球選手になりたい」「歌手になりたい」といった夢を描きますが、やがて「自分には無理」と自己暗示ともいえる思い込みによって、願いを断ってしまいます。その自己暗示を形成させてしまうのが、「バカなことをいうんじゃありません」「おまえには無理」「現実を見ろ」など、親や周りの大人たちの声であり、大人の尺度を子どもに押し付けた結果です。夢をあきらめさせ、現実に戻すことが大人の役目のように考える人もいますが、本当にその夢は叶わないものだったのでしょうか?我が子の可能性を、完全に理解できていたのでしょうか?」本書「はじめに」より

このように子どもの夢を潰してしまう大人のことを、氏は「ドリームキラー」と呼びます。

たとえ結果として夢破れたとしても、「打ち込む何か」があり、それから努力をはじめ、実にさまざまなことを学びながら成長する・・・実にすばらしいことではありませんか
その経験は一生の宝です。
そして、それは若いうちに経験しておくに越したことはありません。

親は、子どもの「ドリームキラー」となってはいけません。。。よね?
我が子の夢を応援したい人、必読

●岩崎由純著 『子どものココロを育てるコミュニケーション術~トップアスリートという夢に向かって~』 東邦出版


志をもって生きる

2010-01-02 13:27:22 | ブックス
金子書房から出ている雑誌『児童心理』。2010年1月の特集号は「志ある子を育てる」というものでした。「志」。近年忘れ去られた観念ですが、混乱し迷走する現代社会を自分の足で生き抜こうとするとき、この概念が心の中にあるのとないのとでは大きな差が生じるように思われます。

では、志とはどのような定義のものなのか・・・?
「志と呼ばれるものには、損得を超えた情熱が感じられる。決意とか覚悟に近い手応えが伝わってくる。何かを目指したいと願うこと以上に、何を我慢し何を諦めるべきかといったストイックな姿勢が窺える。志とは、人生を充実させ乗り切っていくために人間が発明したきわめて高度な心の仕組なのだろう。志を持つということは、辛さに満ちた人生を生きていく上で、実に「便利」な方法論に違いないのである。」
巻頭の一文『志なき時代の中で』の中で春日武彦氏はこのように定義しています。

そう。当たり前のことながら、人生とは辛いものです。努力が必ずしも成功に結び付くものではなく、「夢」が手に入れられる保証はどこにもない。暗中模索し、もがきながらとにかく一歩一歩自分の信じる方向に進んで行くしかないのです。それはとても忍耐のいることです。
「志をもつということは、たんに『夢』を抱くこととは異なる。夢ならば幼児にも持てるのであり、それは空想と欲望が合体したものに過ぎない。志をもつとき、人は自分の人生全体をイメージしなければならない。そうして自分の弱さや矮小さを自覚し、限度をわきまえ、そのうえで目的や方向性を定めることになる。その営みには、謙虚さと『地に足のついた』理想とが求められる。」氏はこのようにも述べ、さらに「生きる意味とは『充実感』といったものをどれだけ大切と思うかといった点に関わってくるだろう」と続けておられます。

志をもって生きる。それは人生を充実感を持って生き抜いていくための重要な方法論であるのでしょう。そしてそれは、一つの技術を自分の身につけるうえでも重要な方法論でもあると思われます。クライミングにおいてもそれは例外ではありません。


繰り返し読みたい本

2007-06-29 10:21:47 | ブックス
「子どもの危機をどう見るか」 尾木直樹著 岩波新書
学校崩壊、犯罪の低年齢化、自殺、いじめ・・・。何だか暗澹たる話題の多い昨今の教育現場。

「激しい荒れや凶悪な事件の奥に潜んでいる子どもたちの叫びに耳を傾けると、危機の中にも微かな希望の声が聞こえてくるような気がしてなりません。」(本書まえがきより)

私自身が教員時代に感じていた、旧体制の学校社会と子どもたちをとりまく環境とのギャップから生じる違和感。全体主義的教育ではなく、本当の個を生かす教育に再生していくには何に指針を求めたらよいか、を明確に示してくれる。ぜひ、ご一読を。