「頼みたいことは、とりあえず、この宿の裏庭なんだけど、草むしりを頼みたいんだ」
宿の裏は、草むしりでは間に合わないほど、自分たちの身長ほどに、うっそうと成長しきった雑草が生い茂っていた。
「シャベルは、裏の物置小屋にあるからね。私は、宿の方の掃除があるから、何かあったら声かけて!」
店主は50代の気さくなおじさん。申し訳なさそうに、仕事を頼むとバタバタと宿に入って行った。
3人は、用意してあった鎌を手に、身近な場所から草刈りを始めた。
小さな雑草は手でむしる。
「この宿、4人もアルバイト雇って、大丈夫かな?」
年上の梨花が草をむしりながらつぶやいた。
「どうして?」
「海からちょっと離れた宿だから、あまりお客が来ないんじゃない?」
「僕もそう思う」
少し離れた場所で鎌を振るっていた徹弥もつぶやいた。