遠い目をした祖父に、夕美はすかさず、祖父が飲みかけのビールを注いだ。
「いろいろって?」
「いろいろは、いろいろだ」
やっぱり話してくれないのか…。
「ところで、『いさみや』の物置小屋から小さくて重たい箱見つけたんだけど、それって何だかわかる?」
「箱?!」
祖父は急に険しい顔をした。
「うん、箱。」
「なんで、物置小屋になんて…」
「知ってるんだね。箱。え?どうして物置小屋にあったらいけないの?」
「『いさみや』の裏の山に防空豪があっただろう…。」
「防空豪?」
「その箱は、そこに置いてあったはずだが…」
祖父は酔いが覚めたかのように、目が泳いだ。
「防空豪なんてあったの、知らなかった…。で、その箱は、防空豪に入れて置かなくちゃならない物なんだね。…という事は、その箱は何かあるの?禍々しいこととか…」
「いや…。詳しくは知らん。」
祖父は席を立って、部屋へ行ってしまった。
おそらく、箱の件を話したくないのだろう…。