ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「片桐大三郎とXYZの悲劇」

2016年05月26日 | 書籍関連

*********************************

歌舞伎俳優の家に生まれたものの、若くして映画俳優に転身、世界的な人気を博す監督の映画や、時代劇TVシリーズ等に主演し、日本に知らぬ者は無い程の大スターとなった片桐大三郎(かたぎり だいざぶろう)。然し古希を過ぎた頃、突然其の聴力を失ってしまった。

 

役者業は引退したものの、体力、気力共に未だ充実している大三郎は、其の特殊な才能と抜群の知名度を活かし、探偵趣味に邁進する。後に続くのは彼の「耳」を務める新卒芸能プロ社員・野々瀬乃枝(ののせ のえ)。スター・オーラ撒き散らし乍ら、捜査する大三郎の後を追う!

*********************************

 

2016本格ミステリ・ベスト10【国内編】」の2位、「2015週刊文春ミステリーベスト10【国内編】」の6位、そして「このミステリーがすごい!2016年版【国内編】」の7位に選ばれた小説片桐大三郎とXYZの悲劇」(著者:倉知淳氏)は、4つの中編小説で構成されている。

 

ミステリー好きを公言している自分だが、読み漁っているのは専ら日本人作家の作品で、海外の作家の作品は意外と読んでいない。(アーサー・コナン・ドイル氏及びアガサ・クリスティ女史の作品は、全て読んでいるが。)登場人物達の名前が覚え難いというのが大きな理由だが、ミステリー界の大御所で在るエラリー・クイーン氏の作品は1つも読んだ事が無いのだから、駄目なミステリー・ファンだ。

 

エラリー・クイーン氏の作品は全くの未読なれど、タイトルは幾つか知っている。ドルリー・レーンを探偵役とした4つの長編小説、後に“悲劇4部作”と呼ばれる事になる「Xの悲劇」、「Yの悲劇」、「Zの悲劇」、そして「レーン最後の事件」で在る。「片桐大三郎とXYZの悲劇」は、此の“悲劇4部作”へのオマージュ作品の様だ。

 

“日本に知らぬ者は無い程の大スター”という片桐大三郎は、三船敏郎氏をモデルにしたキャラクターだろう。ハリウッド製作で、世界的に大ヒットし、世紀跨いで続編が作られているSF映画作品の第1作に出演オファーが在ったものの、『SFなんて子供騙し見世物映画なんぞに出たくねえ。』と片桐大三郎が断った。」という記述は「『スター・ウォーズ・シリーズ』と三船氏の間の有名なエピソード。」だし、他にも実在の有名人を思わせるキャラクターが登場。

 

の章 途切れ途切れの誘拐」は、後味が悪い作品では在るものの、設定は面白かった。ネタバレになってしまうので詳細は書かないが、「“”で在ると思い込んでいた事柄が実は“”で在り、逆に“従”と思い込んでいた事柄が“主”だったというどんでん返し。」は見事。

 

残りの3章に関しては、正直そんな高い評価を与えられる内容では無かったのだが、“悲劇4部作”の梗概を確認すると、「片桐大三郎とXYZの悲劇」が上手く其れ等の設定に重ね合わされている事が判った。なので、“悲劇4部作”を読んだ人達からすると、更なるプラス評価が加わる事だろう。

 

総合評価は、星3.5個


コメント    この記事についてブログを書く
« 2014年度は約150万人 | トップ | 「イラストで見る 昭和の消... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。