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祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響あり
沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす
驕れる者久しからず ただ春の夜の夢の如し
猛き人もついには滅びぬ ひとへに風の前の塵に同じ。
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「平家物語」の冒頭に記された、余りにも有名な文章。昔から「盛者必衰」を感じる事柄に多く触れて来たけれど、6年前には業績の悪化なんて想像するしなかった任天堂の今を思うと、改めて「盛者必衰」という言葉を思い浮かべてしまう。
1970年代から1990年代に掛けて、ずっと“勝ち組”だった日本マクドナルドも、2002年に初めて赤字決算になって以降、苦戦状態に陥っている。幼少期よりマクドナルドの商品に慣れ親しんで来た身としては、同社の厳しい現状が残念だったりもする。
幼少期から慣れ親しんで来たので、マクドナルドに関する思い出は幾つか在る。小学4年の頃だったか、近所のマクドナルドでは、数ヶ月に1回位の割合で、店頭にてクーポン付きのカレンダーを配布していた。縦長のぺら紙の上部3分の2位がカレンダーで、残りの3分の1は何種類かのクーポンが印字されていたのだが、其のクーポンが子供にとっては“宝物”。と言うのも、其のクーポンを(期間内に)店頭に持って行けば、マックシェイクやらビッグマック等が、“子供に限って”無料で貰えたのだ。「今と比べると割高な感じだったマクドナルドの商品が、他に何も買わなくても無料で貰える。」というのは、意地汚い餓鬼だった自分には非常に魅力的で、店の前を何度も通ってはクーポン付きのカレンダーを貰い、そして何度も何度も無料で商品を貰ったもの。今となっては、恥ずかしい思い出だ。
バブル期のマクドナルドの迷走振りも、忘れられない思い出だ。「何を販売しても、絶対に売れる。」と思ったのだろうか、当時を知らない若い人達には信じられないだろうけれど、「マックチャオ」なる飲茶セットやカレーライス、御握りなんかも販売されていた。何でも在りという感じで、“バブル期の徒花”という印象。
最近、マクドナルドに関するがっかりな出来事が在ったのだが、其れを記す前に、紹介したい記事が。
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「北斗晶がTDLでファンとの写真撮影を断った理由・・・心遣いに称賛の声」(6月5日、トレンドニュース)
元女子プロレスラーでタレントの北斗晶が、6月4日にブログで、東京ディズニーランドでファンからの写真撮影の頼みを全て断った理由を明かし、理解を求めた。
同日、夫で在る元プロレスラーでタレントの佐々木健介と、結婚記念日を祝う為に東京ディズニーランドでデートをした北斗。園内で撮影したツーショット等、仲睦まじ気な写真と共に、「此れからも、手に手を取り合って、仲良く遣って行きます。」と幸せそうに綴っている。
園内では、多くの人々から撮影を求められたと言う。北斗は「此の仕事をしている上では、とても在り難い事です。」と前置きした上で、「夢の国には、沢山の可愛い可愛いキャラクターが居ます。そんな中で、沢山の人が私達の回りに集まって写真を撮る事は、ディズニーランドで一生懸命働く皆さんに、大変失礼になる行為になると思います。」と自身の考えを示す。其の為、撮影の依頼は全て断ったそうだ。
北斗は、「夢の国では、キャラクター以外の者が目立つ行為は、絶対に宜しく無いと思っています。写真を断られて腹が立った方も居るかと思いますが、どうぞ御理解の程、宜しく御願い致します。」とファンに理解を求め、更に「出来ましたら、目立つ仕事をされてる方々が夢の国に居るのを見掛けた時は、皆さんと同じく夢を見させて上げて下さいね。」と続けた。
北斗の心遣いにネット上では「完璧な正論」、「此れぞ正に、気遣いに長けた大人の対応ですね。」、「自分達の都合だけで無く、園の立場も考慮しての対応。素晴らしいよね。」といった称賛の声が挙がっている。
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“鬼嫁”という愛称が在る北斗さんだが、彼女の心遣いを感じる言動には、常日頃より感心させられる事が少なく無かった。ディズニーランドと言えば、来園する人々は「日常を忘れ、夢の世界に浸る。」事を目的とし、同所で働いているスタッフ達はそんな来園者達の為、一生懸命夢の世界を作り上げている訳で、北斗さんの今回の対応は素晴らしいの一言。
で、話をマクドナルドに戻すが、最近がっかりした出来事というのは、ディズニーランドのスタッフ達とは正反対の行為に付いて。1ヶ月程前の休日、と或るショッピング・モールを訪れた所、同所に在るマクドナルドのイヴェントで、キャラクターのドナルド・マクドナルドが来訪者達と触れ合っていた。外で記念撮影をしている時には微笑ましさを感じていたのだが、店内に入って来た際、がっかりしてしまった。
其のドナルド・マクドナルドに扮していたのは、どうやら店の若いスタッフだった様だが、店内に入って来るなり、他のスタッフ(若い女性)に向かって「今日はドナルド遣るって事で、ばっちりメークして来たっす!結構イケてるっしょ?」等と、地声且つ大声でぺちゃくちゃ話し出したのだ。
大昔に放送されていたマクドナルドのCMでは、ドナルド・マクドナルドが話す場面は在ったもの、多くの人達にとって彼は“パントマイムで喜怒哀楽を表現するピエロ的存在”だと思う。詰まり、マクドナルドの利用者が彼に求めるイメージは“無言のピエロ”で在り、子供なら一層の事。人前にて地声且つ大声でぺちゃくちゃと話すなんていうのは論外で、実際、其の場に居合わせた幼児は、引き攣った顔をしていたし。
「利用者が期待するイメージを崩さない。」というのは、企業にとって大事な事。そういう教育を末端迄徹底する事も、マクドナルド再生の為には必要な気がした。
子供でも着ぐるみの中には人が入っていることを知っている子はそれなりにいるでしょう。中に人がいることをわかった上で世界観を楽しんでいる。だから演じる側も世界観に徹しなければいけない。
>「利用者が期待するイメージを崩さない。」というのは、企業にとって大事な事。そういう教育を末端迄徹底する
学生時代のバイト先にいた先輩男子の一人は、仕事自体はテキパキしていて1つ1つの作業の意味もきちんと教えてくれる人でしたが、問題な点もあって、店のホール内で「仕事おもろない」「暇や」などという発言を、聞き取れるレベルの音量でやってしまう人でした。しかし、エース格の戦力であったことから上司も咎めなかったため、そういう言動をよくしていた。「利用者が期待するイメージを崩さない」という教育をする際には、エース格とされる人だからわかっているだろうと思い込まずに、改めて徹底する必要があるのかもしれません。この前読んだ本に「能力的な長所短所と性格的な長所短所を混同してはいけない。問題があっても出来る奴だからと不問にすれば、そこから大きなほころびが起こる」とありました。
子供のみならず、大人も時には「夢」を見たくなる。実際はこうなのだという事が判っていても、其れを頭ごなしに示されてしまうと、幻滅感は可成りの物。「サンタクロースの存在」なんていうのもそうで、現実を知っている人は知っているで構わないのだけれど、存在を信じている子供達の夢を叩き潰す様な事だけは、嘗ての子供としては止めて欲しいと思ったりします。
「能力的な長所短所と、性格的な長所短所を混同してはいけない。問題が在っても、出来る奴だからと不問にすれば、其処から大きな綻びが起こる。」というのは、凄く深いですね。能力の高さを以てして、其の人の問題点を過小評価し、看過してしまう事で、其処から大きな問題となってしまう。「蟻の一穴」という表現が在りますけれど、其れと重なる部分が。