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「われわれにかまうな かまうとアケミ しぬ。」
首都圏で、烏が人を襲う事件が増えている。其の事実に気付き、調査を始めた新聞記者の権執印怜一(ごんしゅういん りょういち)は、烏から恋人のアケミを狙う様な内容の脅迫を受ける。更に、怜一が取材をした教授の1人が自殺。事件の裏に大きな陰謀を感じ取った怜一の下に、今度は「烏に襲われた人々が、鳥インフルエンザに感染した。」という情報が入り・・・。
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第19回(2020年)「『このミステリーがすごい!』大賞」の隠し玉に選ばれた小説「クロウ・ブレイン」(著者:東一眞氏)。「最近、首都圏で烏が人を襲う事件が続出している。」という事実に気付いた新卒2年目の新聞記者が、取材を続けて行く中で、『人を襲うのが“特定の烏”で在り、“彼等”には“共通の秘密”が存在している事。』を掴むが、其の事実を知った事で、どんどん窮地に追い込まれて行く。」というのが、此の作品のストーリー。
著者の東一眞氏は、読売新聞の編集局員を務めているのだとか。だから、“様々なデータを集めた上での筆力の高さ”は、確かに在ると思う。「そうなんだ。」と勉強になる点も、結構在った。
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・「脊椎動物では、体重が増えるほど脳の重量も増える。おおむね比例関係にある。しかし、体重と脳の重さの比は、どの動物でも同じかといえば、そうではない。体重を分母とした脳との単純な重量比で言えば、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類の順で、比は大きくなる。つまり体重に比べて大きな脳を持つようになる。もちろん人間は、脊椎動物の中でも特に比が大きい。人間の脳は、1,300グラム程度で体重の1.9%ほどもある。クジラの脳は3,000グラムもあるが、体重比をとれば0.01%と極めて小さくなる。チンパンジーや犬、猫、馬など多くの哺乳類は0.3%~0.8%といった範囲に収まる。ところがカラスはずっと重いのだ。ハシブトガラスで1.4%、ハシボソガラスで1.7%と人間に近く、カレドニアガラスに至っては2.7%と人間を超える。」。
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詳しくは書けないが、“今を生きる人々”にとっては、色々考えさせられるテーマが扱われている。様々なデータが盛り込まれている事で、作品を面白くさせている部分“も”在るとは思う。でも、専門用語やデータが余りにも多い記されている事で、読み辛さが在るのも事実。
主人公の権執印怜一は新卒2年目の記者だが、新人の年に誤報を生み出してしまった事により、異動させられてしまう。「何としてもスクープを掴み、汚名返上したい。」という気持ちが強いのは判るけれど、短慮な行動に何度も突っ走り、どんどん窮地に追い込まれてしまう。「こんな事をしたら、立場が悪くなるだけなのに。」と思ってしまう様な言動が彼には目立ち、呆れるしか無い。判官贔屓な自分ですら、感情移入出来ないレヴェルの浅はかさと言って良いだろう。
又、“理解不能な設定”が幾つか存在するのも、自分には興醒めだった。「或る人物が、或る人物を2度裏切る。」のだが、2度目の裏切りの理由は判るが、1度目の理由が全く判らない。「或る人物が“パスワード”のヒントを残し、其のヒントからパスワードを導き出す場面。」も、「何故、そんなヒントからパスワードを当てられたのか?」という不自然さが在る。「巨大な陰謀が存在している割には“御粗末過ぎる状況”。」というのも気になるし。
総合評価は、星3つとする。