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大原真一(橋爪功氏)の妻・千賀子(高畑淳子さん)は、定年退職後ずっと自宅に居る真一が原因で“主人在宅ストレス症候群”に陥り、離婚寸前だった。そんな中、2人の娘・亜矢(剛力彩芽さん)は、葬儀社に転職した許りの菅野涼太(水野勝氏)と出会い、紹介された終活フェアを母に勧める。終活フェアを訪れた千賀子は、人生を整理する大切さを実感するが、真一は終活に否定的だった。
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終活とは“人生の終わりの為の活動”の略で、「人間が自らの死を意識して、人生の最期を迎える為の様々な準備や、其処に向けた人生の総括。」を意味する。“人生100年時代” とも言われる今、定年を迎えて以降の日々が長くなり、如何に有意義に“残りの人生”を生きるかが問われている。でも、「我が国では概して、女性は生き生きと余生を過ごせているのに対し、“会社人間”だった男性は、生き甲斐を見出だせずに戸惑っている。」という現実が在る。そんな男女の違いを、コメディータッチで描いたのが、今回見た映画「『お終活』熟春!人生、百年時代の過ごし方」だ。
「私生活では共に、息子に苦労させられた。」という共通点を持つ橋爪功氏と高畑順子さん。実は共に、自分の大好きな俳優で在る。演技力の高さに加え、思わずニヤッとしてしまう個性が堪らなく好きで、「此の2人が共演するなら、何としても観ないと。」と、公開を楽しみにしていた。(大好きな剛力彩芽さんが出演しているというのも在る。)
「会社人間として必死で働いて来たけれど、定年を迎えると“頼るべき存在”の会社から切り離され、自身の存在意義が見出せなくなってしまう夫達。」は、少なく無いと思う。そういう夫達にストレスを感じる妻の話も、良く聞く。同性としては夫の状況に同情の気持ちが無い訳では無いが、ストレスを感じる妻の立場というのも理解出来る。
そんな彼等がぶつかり合う姿を描くだけではギスギスした内容になってしまうけれど、深刻な内容を取り上げたと思えば、笑わせたり、しんみりさせたりと、抑揚の付いた喜劇になっているのが良い。又、母の死によって、父・敬一(西村まさ彦氏)との関係が拗れていた菅野涼太が、終活フェアで懇意になった大原家と接して行く中で、蟠りが消えた場面は、思わず涙。チューリップの名曲の数々が使われていたのも、世代的にぐっと来た。
総合評価は、星3.5個とする。