初代PlayStationのユーザーには印象深い「クラッシュ・バンディクー」は,やんちゃなバンディクーのクラッシュが大冒険するアクションゲーム。1996年に初代作が発売された際は,着ぐるみが踊る「クラッシュ万事休す」というCMが強いインパクトを与えて低年齢層にも人気に。その後は開発元とパブリッシャを変えつつもさまざまな機種で展開。ここしばらくは初期3部作やレースゲームをリメイクした「クラッシュ・バンディクー ブッとび3段もり!」(PS4 / Nintendo Switch)「クラッシュ・バンディクー レーシング ブッとびニトロ!」(PS4 / Nintendo Switch)など,旧作をHDグラフィックスでアレンジした作品が発売されてきた。
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そしてついに登場した完全新作が「クラッシュ・バンディクー4 とんでもマルチバース」(以下,4)で,「クラッシュ・バンディクー3 ブッとび!世界一周」の直接的な続編となる。
すでに「クラッシュ・バンディクー4 さくれつ!魔神パワー」や「クラッシュ・バンディクー5 え~っ クラッシュとコルテックスの野望?!?」が発売されており,パート4が2つになったうえ,パート5のあとにまたパート4が出るというややこしい事態になっているが,これは旧「4」と「5」が日本でのみナンバーつきのタイトル名になっているからだ。
今回はパブリッシャがセガゲームスからアクティビジョンに変更され,「クラッシュ万事休す」のPVも2020年版が公開されている。クラッシュファンには懐かしいといえるだろう。
今回クラッシュが立ち向かうのは,ネオ・コルテックスやエヌ・ジン,ウカウカといったお馴染みの悪玉たちだ。「3」で遠い惑星に放り出された彼らだが,マルチバースの征服に着手。エヌ・ジンやブリオらを率い,侵略の魔の手を伸ばす。我らがクラッシュは,妹のココや精霊アクアクとともに冒険の旅へ出発。時空を操る「4つのマスク」の力を借り,ステージを駆け抜けるのだ。
そんな「4」だが,ゲームの基本は良い意味で従来作と同じ。クラッシュやココを操作し,危険な罠をジャンプで飛び越え,木箱や敵をスピンで攻撃しつつ,ゴールを目指していく,正統派の3Dジャンプアクションゲームだ。「2」のハイハイ&スライディングにボディプレス,「3」の2段ジャンプといった便利な技は最初から使用可能。思い出の中のクラッシュそのままの活躍がすぐにでも楽しめる。
敵に触ったり,画面下に落ちると1発でアウトの基本ルールと,ちょっと意地悪なステージ構成も従来作のまま。絶妙な位置に罠が配されており,分かっていてもついつい引っかかってしまう。
崖下に落下し,火炎の罠で消し炭にされ,敵にぶった切られて天使になるなど,コミカルなやられっぷりに,リトライを重ねていく。ミスして悔しいけれど,もう少しで先へ進めそう。果たして何が待っているのか楽しみでもどかしい。アクションゲームとしての手応えは今回も充分。お馴染みの悪玉たちや白クマに乗って疾走するステージなど,ファンサービスもぬかりないという印象だ。
早い段階で有名な没ステージ「あらしのしろ」を思わせる地形とギミックがあったりして,ニヤリとさせられる。
プレイ感を忘れている人や,3Dアクションゲームに慣れていない人にも遊びやすいよう,従来の残機制である「レトロ」と,残機無限かつチェックポイント復活の「モダン」というプレイスタイルを自由に選べる。
モダンなら,プレイヤーの気力が尽き果てるまで何度でもリトライできるし,ミスを繰り返すとダメージを1回だけ無効化してくれるアクアクがサービスされるので,従来作より遊びやすくなっている。もちろん,モダンを使っても特にペナルティはないし,いつでもレトロにできる。腕に自信のある人や,従来形式にこだわりのある人はレトロで遊ぶといいだろう。
プレイしていて,懐かしくも印象的だったのが,木箱とリンゴである。ステージ内に置かれた木箱を破壊すると評価が上がり,「みため」(コスチューム)をアンロックするための「カラーダイヤ」がもらえる。
カラーダイヤを手に入れるもう一つの手段が,リンゴを回収すること。リンゴは木箱の中に入っているほか,ステージの要所に置かれており,できるだけ多く手に入れる必要がある。つまり,新たなコスチュームが欲しければ,できるだけ多く木箱を破壊しつつ,リンゴも回収しなければいけない。もちろん,木箱もリンゴも危険な場所に置かれていることがあり,リスクを冒さなければならないわけだ。
ここで面白いのが,木箱にはいくつかの種類があり,対応を変えなければならないところである。
スピンや頭突きで壊せる,通常のもの。スピンではリンゴが手に入らないが,踏みつけや頭突きを繰り返すと沢山のリンゴがでるもの(旧「シマ箱」)。「TNT」と書かれていて,踏むと3秒後に,スピンを当てると即座に爆発するもの(旧「バクダン箱」)。そして「NITRO」の文字も恐ろしい,触れると爆発するもの(旧「ニトロ箱」)など,種類も豊富だ。
NITRO箱やTNT箱は,沢山の木箱の中など,事故が起こりやすいところに置かれている。カラーダイヤのことを考えるなら,触れないようにして周囲の木箱を壊さなければならず,慎重な操作が求められる。そして,NITRO箱はやっぱり今回もピョコピョコ動く。安心して飛び越えようとしたらNITRO箱がジャンプしてお陀仏ということもあり,懐かしくも心臓に悪い。
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NITRO箱はステージギミックで一気に破壊できるが,TNT箱はそうはいかず,1つ1つ起爆させる必要がある。爆発に木箱を巻き込んでしまうと,中に入っていたリンゴが手に入らないので,周囲の木箱をすべて壊してからこれらのNITRO箱を処理しなければならない。木箱を見つけたら,まずは配置をチェックしてから動かなければならないわけだ。
そして,木箱やシマ箱は何もないところの足場として配されていることがある。踏みつけて壊しながら先へ進まなければならないのだから,なかなかにスリリングだ。特にシマ箱は,1回踏んだだけではすべてのリンゴが手に入らないため,何度も踏んで壊しつつ,自分は安全圏に脱出しなければならない。まるでチキンレースか我慢比べのようで,プレイしていてドキドキしてしまうのだ。
もちろん,慣れないうちはヤバそうな木箱は無視してOK。まずはとにかくクリアし,後から戻ってきて残りを処理すればいいのだ。
壁を走ったり,レールに乗って滑ったり,ロープを飛び渡ったり,「マスクパワー」を使うといった新要素も存在している。特に大きな影響を及ぼすのが「マスクパワー」。特定のエリアで[△]を押すと,時空を操る4つのマスクの力を借りられるというフィーチャーで,重力を操ってステージを逆さにしたり,時間の流れを遅くしたりと様々な変化を起こす。
中でも目を惹くのが次元のマスク「ラニロリ」。空間を操作して足場や壁を出し入れするというもので,具体的には画面内にある特定の地形の透明化と実体化を切り替える。実体の壁が行く手を塞ぐなら透明にし,足場が透明なら実体化させて上に乗る……というように,状況に応じて切り替える必要がある。
こう書くとパズル要素に見えるが,実際はアクションへの影響が大きい。実体と半透明の足場が交互にある場所でジャンプ中に切り替えて足場を確保するような局面も多く,なかなかにスリルがある。そして,次のマスクはどんな力があるのか,と先へ進めるのが楽しみになってくるのだ。
今回のグラフィックスはCG映画を思わせるもので,なかなか美しい。カットシーンからそのままプレイに突入することもあり,没入感がある。
クラッシュとココも,従来の洋ゲー的デザインからアレンジされている。特にココは可愛らしくなっており,日本のプレイヤーにも違和感なく受け入れられるのではないだろうか。
奥方向へ進むステージで地形が少し見づらいのが気に掛かったが,クラッシュの足元には黄色いリングがでるので,ジャンプの際などにはこれを参照するといいだろう。複数のプレイヤーが交代しつつ腕を競い合う「ハチャメチャ!バンディクーバトル」というモードもあり,みんなで遊ぶのも盛り上がりそう。シンプルで遊びやすい正統派ジャンプアクションを求める人にオススメのタイトルだ。