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11月が去る、ことば

2015-11-30 | 日本語文章
11月の言葉、朝日新聞の天声人語より。

君たちに憎しみという贈り物はあげない、君たちの望み通りに怒りで応じることは、君たちと同じ無知に屈することになる、という、ことば。

映画ジャーナリスト、レリスさんが、パリの多発テロで妻を亡くした。怒りに耐えて、亡き人を思う気持ちが伝わってくる。

次は、難しい。

わたしは双方の壁を認めたうえでの対話がしたい、この壁があってこその、橋を架けたい、という、ことば。

在日4世の、チョンリエさんが、合同美術展に向けて、隣接する大学との壁を超えて橋を架けようというのだが、その壁のままにというのは、果てしなくつらいことだ。

そのつぎに、ともに楽しむ共楽、共に学ぶ共学、友に育てる共育、何より僕は、ともに笑う、ともえが大切だと思う、いまの世の中では、片方ばかりわらっている、という、ことば。

スリランカの、にしゃんたさん、大学教授である。



(天声人語)11月の言葉から

 卑劣なテロに襲われたパリからの、一つの発信が世界を巡った。「君たちに憎しみという贈り物はあげない」。残忍な蛮行に立ちすくむ中、人間の気高さに胸を打たれた11月の言葉から
 惨事で妻を亡くした映画ジャーナリスト、アントワーヌ・レリスさん(34)はテロリストに向けてこう続けた。「君たちの望み通りに怒りで応じることは、君たちと同じ無知に屈することになる」。深い悲しみの底から響くメッセージは、歯車の狂った世界に示された羅針盤である
 東京で隣接して立つ武蔵野美大と朝鮮大学校。合同美術展の期間中、学生らが境界の壁を越える木の橋を架けた。壁を外そうとの案もあったが、在日4世の鄭梨愛(チョンリエ)さん(24)は言った。「私は、双方の壁を認めた上での対話がしたい。この壁があってこその、橋を架けたい」
 スリランカ生まれの大学教授、にしゃんたさん(46)が言う。「共に楽しむ共楽、共に学ぶ共学、共に育てる共育……何より僕は、共に笑う共笑(ともえ)が大切だと思う。今の世の中では、片方ばかりが笑っている」
 島根県の山あい。野生のイノシシを解体する体験イベントで、料理店を営む猟師の今田孝志さん(64)に参加者が質問した。「残酷って言われませんか?」「言われるけど、じゃあ、あんたの食べてるものはなんだ、って言い返すね」
 霜月深し。先週の朝日俳壇に〈落葉なほ命たのしみ風と舞ふ〉鈴木七郎さん、〈落葉降る軌跡おそらくみな違ふ〉内田恒生さん。雑木林に静謐(せいひつ)と華やぎあり。


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