記述文法は、言語の現象を記述する。そのときに、ありのままのことと説明が加わる。そして、記述文法の立場を規範文法との対立で見ると、記述がその手法をとる理由がはっきりする。学習文法は規範のもとにあって、例外をも学習させるかどうか、また、それを基礎とするかどうか、その教授によって分かれる。基本用法、派生用法との見方、捉えかたはその論者によるものらしく、派生用法の拠ってってくるところが明確ではない。この例文、>夏目漱石は1867年に生まれている。(経験・記録) となるらしいが、 明治の文豪、夏目漱石は明治生まれか、慶応の生まれか。夏目漱石は1867年2月9日(慶応3年1月5日)に生まれていた。 というのはいかが。
世界大百科事典内の記述文法の言及
【文法】より
…さて,20世紀に入って〈構造言語学〉が興ると,これに基づいて文法研究も趣向を変えた。すなわち〈伝統文法〉が概して前述の〈規範文法〉としての色彩を有したのに対し,当該の言語で行われている文法の現状をありのままに記述する方針をとるようになり(これを〈記述文法〉という),研究対象もヨーロッパ以外の諸々の言語(アメリカ・インディアン諸言語など)に広げて,〈科学としての文法〉の面を強めた。方法的にも厳密さを高めたが,シンタクスの面では〈伝統文法〉よりかえって後退したうらみもあり,いわばそうした行詰りを打開すべく生まれたのが前述の〈生成文法〉の理論だといえる。…
※「記述文法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
記述文法
きじゅつぶんぽう
descriptive grammar
一言語のある一時期における状態を記述するもの。文法といっても,狭義の文法論のみならず,音韻論も含めたものであるのが通例で,史的言語学に対する記述言語学と同意に使われるのが普通。ただし,記述言語学が一般的な学問分野・方法をさすのに対し,特定言語の具体的記述ないしそのように記述された文典をさす傾向がある。ここでいう文法とは,理念的には,当該言語の話し手の頭のなかにあるといいうる言語そのもの,およびそれを恣意的な価値観を加えずにありのままに引出して記述したものをいう。この点において,実用的目的から「正・不正」を決める規範文法と対立する。
デジタル大辞泉の解説
きじゅつ‐ぶんぽう〔‐ブンパフ〕【記述文法】
説明文法・歴史文法に対するもので、一定の時期・場所においての、ある言語の文法現象をありのままに記述するもの。
derivation
派生する be derived ((from))
派生的 derivative; 〔二次的な〕secondary
名詞から派生した形容詞
an adjective derived from a noun
そこから重大な事態が派生した
A serious situation developed as a result.
それは派生的な問題にすぎない
It's purely a secondary matter.
派生語 a derivative
派生語尾 a derivational suffix
派生形 a derived form
http://estudiaesnanyol.blog58.fc2.com/blog-entry-22.html
スペイン語マスターへの道
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未来・過去未来の派生用法のまとめ
以前、「未来の時制のまとめ」で、未来に関係する時制の基本的な用法についてまとめたのですが、
今回は、それを踏まえて、それぞれの派生の用法についてまとめてみたいと思います。
基本的には未来にかかわる相対的な時制を扱うこれらの用法ですが、
派生として、推定や譲歩などの意味があり、
それぞれどの時点からみて、どの時点に対する推測・譲歩なのかによって使い分けられます。
未来(Futuro sipmpre)
(1)未来に起こる事象
Mañana irá a Madrid. (明日、マドリッドに行く。)
(2)現在の行為・状態の推定
No ha venido Juan. Estará en su casa.(フアンがこない。家にいるんだろう)
(3)現在の事象に対する譲歩&反意
Estudiará mucho, pero nunca aprueba.(彼はたくさん勉強するだろうが、決して合格しない。)
※通常<未来形, pero ~>の形で譲歩(~だろうが、~)
(4)実現可能な仮定
Si veo a Juani le daré tu recado.(フアニに会ったら、彼に君のメッセージを伝えておくよ。)
(5)驚き、不安、意外性
¿Será verdad que ha dejado su trabajo?(彼が仕事をやめたのは本当なの?)
(6)命令
Te quedarás en casa y estudiarás.(あなたは家にいて、勉強しなさい)
過去未来(Condicional sipmpre)
(1)過去から見た未来
Ayer vi a Pedro y me dijo que vendría hoy. (昨日ペドロに会って、彼は今日来るだろうと私に言った。)
(2)過去の行為・状態の推測・想像
Por aquella época tendría 25 años.(その頃、25歳だっただろうか。)
(3)過去の事象に対する譲歩&反意
Estudiaría mucho, pero nunca aprobaba.(彼はたくさん勉強したのだろうが、決して合格しなかった。)
※通常<過去未来形, pero ~>の形で譲歩(~だろうが、~)
(4)実現性の低い仮定
Si viera a Juani le daría tu recado.(もしフアニに会ったら、彼に君のメッセージを伝えておくよ。)
(5)丁寧な表現
¿Podría decirme qué hora es, por favor?(今、何時か教えていただけますか?)
未来完了(Futuro compuesto)
(1)未来のある時点までに完了する行為・状態
Cuando volvamos a casa ya habrán terminado las obras.(私たちが家に戻ったときには、すでに工事は終わっているだろう。)
(2)近接過去(現在完了)の推定
No está Javi. Se habrá ido a su casa.(ハビがいない。家に帰ったのかも。)
(3)近接過去(現在完了)の譲歩・反意
Habrá estudiado mucho esta semana, pero no ha aprobado.(彼は今週一生懸命勉強したのだろうが、合格しなかった)
過去未来完了(Condicional compuesto)
(1)過去のある時点から見て、すでに完了した行為・状態
Ayer pensé que a las diez ya habrían terminado.(昨日の時点では、10時には終わっていると思っていた。)
(2)過去のある時点から見て、すでに完了した出来事の推定(過去完了の推定)
Fui a ver a Ana, pero no estaba; habría salido.(アナに会いに行ったがいなかった。多分出かけたんだろう。)
(3)過去のある時点から見て、すでに完了した出来事の譲歩・反意
Habría tenido muchos problemas, pero nunca nos dijo nada.(多くの問題があったのだろうが、我々には何も言わなかった。)
(4)過去の実現不可能な行為・状態を表す仮定法
Si me hubiera tocado la lotería me habría comprado un coche.(もし宝くじに当たっていたら、車を買ったのに。)
From: 張 麟声
Sent: Monday, June 19, 2017 9:12 AM
To: 'IORI Isao'
Subject: 張:これで十分です
庵さん、みなさん:
今のご説明で、「ている」と「ていた」を分けて取り扱う理由について、みんな納得できたのではないかと思います。ただし、こういうことならば、そもそも日本語記述文法のほうでもこのレベルの違いを記述しておかなければなりませんよね。だったら、そのような、日本語記述文法のことに対して、日本語教育文法では何をすべきなのかということが問題となってきます。
この段階で、先ほど言っておられた「大」のほうの質問も含めてお聞きしますが、先ほどのメールで英語の話をしておられたのですね。そうすると、この「ている」「ていた」について、今庵さんが考えようとしているのは、学習者の母語を特定しない日本語教育文法のことなのでしょうか、それとも、英語を母語とする宅習者のための日本語教育文法になるのでしょうか。
とりあえず、このあたりのことについて、お考えを教えていただければと思います。
張
From: IORI Isao [mailto:isaoiori@courante.plala.or.jp]
Sent: Monday, June 19, 2017 9:01 AM
To: 張 麟声
Cc: 庵 功雄
Subject: Re: 張:RE: [研究会ML] 張:「ている」と「ていた」を分けて取り扱う理由
Importance: High
張さん、みなさん:
メールありがとうございました。
張さんのご指摘を受けて、先ほどのメールの内容を少し詳しく説明します。
・昨日の3時ごろ、雨が降っていた。(過去の進行中)
・私が部屋に入ったとき、窓ガラスが割れていた。(過去の結果残存)
・会場に着いたとき、コンサートは始まっていた。(過去完了)
・あのときお金を持っていたら、あのカメラを買っていた。(過去の反事実)
このうち、「てい」(アスペクト)+「る/た」(テンス)の組み合わせと考
えられるのは、「基本用法」と呼ばれる「進行中」と「結果残存」だけです。
「派生用法」である「完了」と「反事実」の場合、対応の仕方はかなり異なり
ます。(詳しいことは時間の関係でここでは割愛します)
また、次のような「経験・記録(パーフェクト)」の場合、通常、「ていた」
は存在しません。
・夏目漱石は1867年に生まれている。(経験・記録)
このような違いが見られるのは、基本用法と派生用法では「る/た」の機能が
異なるためです。この点については、庵・清水(2016)を見てください。
とりあえずこんなところですが、これでよろしいでしょうか。
よろしくお願いいたします。
http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/2011-05-14-1.html
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#747. 記述と規範[prescriptive_grammar][popular_passage]
2011-05-14
英語を数年間学んで大学に入学してきた学生が,言語学の授業で最初に習うことの1つに記述 (description) と規範 (prescription) の違いがある.言語学において,記述文法 (descriptive grammar) と規範文法 (prescriptive grammar) の区別は最重要項目である.
記述とは言語のあるがままの姿を記録することであり,規範とは言語のあるべき姿を規定するものである.言語学は言語の現実を観察して記録することを使命とする科学なので,「かくあるべし」という規範的なフィルターを通して言語を扱うことをしない.文法や語法が「すぐれている」,「崩れている」,「誤っている」という価値判断はおよそ規範文法に属し,言語学の立場とは無縁である.確かに,規範文法そのものを論じる言語教育や応用言語学の領域はあるし,英語史でも英語規範文法の成立の過程は重要な話題である (prescriptive_grammar) .しかし,言語学は原則として記述と規範を峻別し,原則として前者に関心を寄せるということを理解しておく必要がある.
2017-06-19 23:26:57 | 日本語教育
日本語教育文法を学習文法と見る。規範文法を目途する教科文法である。日本語学習に、外国人のための、外国語としての日本語の文法は、汎用であり得ない。日本文法研究と構えるなら、そこには学習文法、教科文法を含みうるだろうか、なれば、国語文法も、文語文法も口語文法も、文法研究のそれぞれであるが、その文法研究によって立つ日本語教育文法は、おのずとその領域を決めることになる。文法現象を言語現象と見るか、文法には現象となるものはないとするか、記述文法が目指すものはなにか。規範に対する誤用を網羅すること、あるいは例外規則の文法であるからして、文法が文法足りうるのはその言語現象の発掘にある。日本語教育の中級文法を見よ。そこに見るものはイディオムである。
2017-06-18 11:38:01 | 日本語教育
日本語文法が日本語教育と密接な関係にあるという案内文を見て、これはと思った。これは、というのは、日本語学と日本語教育の関係で日本語学が研究を展開してきた事実と、日本語文法研究が日本語学習者のためのものとして作られたというふうに、そこを飛躍する形でこの考えを結びつけること、説明をすることの当否である。これは日本語教育という分野をどう見ているかと、この主張に思わせられる。語学教育すなわち第2言語習得における文法論として見ることを、日本文法研究そのものとしてだけとらえようとする見方である。そこには日本語教育文法と日本文法研究の違いを明らかにするものではない。学校教育の教科目文法、学習用文法、そこに対照文法研究を位置させようとしてはばからないのは、学習者のためのものとして作る文法の取り違いを示すものである。教育文法から得るものをそのままに言語研究にしようとすることの狭隘さがある。
<内容>
庵 功雄(一橋大学国際教育センター教授)
「日本語教育文法から見た「ている」と「ていた」」
張 麟声(大阪府立大学人間社会システム科学研究科教授)
「中国語話者のための日本語教育文法から見た「ている」と「ていた」」
<趣旨>
日本語文法研究(日本語学)は、日本語教育との密接な関係のもとに誕生しました。つまり、日本語文法研究は、学習者のためのものとして作られたとも言えるのです。しかし、現在、日本語文法研究と日本語教育が互いに相手のことを考えようとしない状況が続いています。中国語話者の日本語教育研究会では、そうした状況を打破すべく、中国語話者のために特化した研究のあり方を考えてきました。今回の講演会では、同研究会の創設者である張麟声氏をお招きし、学習者の母語を特定しない日本語教育と、中国語話者に特化した日本語教育という2つの立場から、日本語教育文法について考えます。そのことを通して、日本語学習者にとって習得が難しいことが知られている「ている、ていた」について、どのような説明の仕方が可能なのかについて考えてみたいと思います。
(庵功雄記)
世界大百科事典内の記述文法の言及
【文法】より
…さて,20世紀に入って〈構造言語学〉が興ると,これに基づいて文法研究も趣向を変えた。すなわち〈伝統文法〉が概して前述の〈規範文法〉としての色彩を有したのに対し,当該の言語で行われている文法の現状をありのままに記述する方針をとるようになり(これを〈記述文法〉という),研究対象もヨーロッパ以外の諸々の言語(アメリカ・インディアン諸言語など)に広げて,〈科学としての文法〉の面を強めた。方法的にも厳密さを高めたが,シンタクスの面では〈伝統文法〉よりかえって後退したうらみもあり,いわばそうした行詰りを打開すべく生まれたのが前述の〈生成文法〉の理論だといえる。…
※「記述文法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
記述文法
きじゅつぶんぽう
descriptive grammar
一言語のある一時期における状態を記述するもの。文法といっても,狭義の文法論のみならず,音韻論も含めたものであるのが通例で,史的言語学に対する記述言語学と同意に使われるのが普通。ただし,記述言語学が一般的な学問分野・方法をさすのに対し,特定言語の具体的記述ないしそのように記述された文典をさす傾向がある。ここでいう文法とは,理念的には,当該言語の話し手の頭のなかにあるといいうる言語そのもの,およびそれを恣意的な価値観を加えずにありのままに引出して記述したものをいう。この点において,実用的目的から「正・不正」を決める規範文法と対立する。
デジタル大辞泉の解説
きじゅつ‐ぶんぽう〔‐ブンパフ〕【記述文法】
説明文法・歴史文法に対するもので、一定の時期・場所においての、ある言語の文法現象をありのままに記述するもの。
derivation
派生する be derived ((from))
派生的 derivative; 〔二次的な〕secondary
名詞から派生した形容詞
an adjective derived from a noun
そこから重大な事態が派生した
A serious situation developed as a result.
それは派生的な問題にすぎない
It's purely a secondary matter.
派生語 a derivative
派生語尾 a derivational suffix
派生形 a derived form
http://estudiaesnanyol.blog58.fc2.com/blog-entry-22.html
スペイン語マスターへの道
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未来・過去未来の派生用法のまとめ
以前、「未来の時制のまとめ」で、未来に関係する時制の基本的な用法についてまとめたのですが、
今回は、それを踏まえて、それぞれの派生の用法についてまとめてみたいと思います。
基本的には未来にかかわる相対的な時制を扱うこれらの用法ですが、
派生として、推定や譲歩などの意味があり、
それぞれどの時点からみて、どの時点に対する推測・譲歩なのかによって使い分けられます。
未来(Futuro sipmpre)
(1)未来に起こる事象
Mañana irá a Madrid. (明日、マドリッドに行く。)
(2)現在の行為・状態の推定
No ha venido Juan. Estará en su casa.(フアンがこない。家にいるんだろう)
(3)現在の事象に対する譲歩&反意
Estudiará mucho, pero nunca aprueba.(彼はたくさん勉強するだろうが、決して合格しない。)
※通常<未来形, pero ~>の形で譲歩(~だろうが、~)
(4)実現可能な仮定
Si veo a Juani le daré tu recado.(フアニに会ったら、彼に君のメッセージを伝えておくよ。)
(5)驚き、不安、意外性
¿Será verdad que ha dejado su trabajo?(彼が仕事をやめたのは本当なの?)
(6)命令
Te quedarás en casa y estudiarás.(あなたは家にいて、勉強しなさい)
過去未来(Condicional sipmpre)
(1)過去から見た未来
Ayer vi a Pedro y me dijo que vendría hoy. (昨日ペドロに会って、彼は今日来るだろうと私に言った。)
(2)過去の行為・状態の推測・想像
Por aquella época tendría 25 años.(その頃、25歳だっただろうか。)
(3)過去の事象に対する譲歩&反意
Estudiaría mucho, pero nunca aprobaba.(彼はたくさん勉強したのだろうが、決して合格しなかった。)
※通常<過去未来形, pero ~>の形で譲歩(~だろうが、~)
(4)実現性の低い仮定
Si viera a Juani le daría tu recado.(もしフアニに会ったら、彼に君のメッセージを伝えておくよ。)
(5)丁寧な表現
¿Podría decirme qué hora es, por favor?(今、何時か教えていただけますか?)
未来完了(Futuro compuesto)
(1)未来のある時点までに完了する行為・状態
Cuando volvamos a casa ya habrán terminado las obras.(私たちが家に戻ったときには、すでに工事は終わっているだろう。)
(2)近接過去(現在完了)の推定
No está Javi. Se habrá ido a su casa.(ハビがいない。家に帰ったのかも。)
(3)近接過去(現在完了)の譲歩・反意
Habrá estudiado mucho esta semana, pero no ha aprobado.(彼は今週一生懸命勉強したのだろうが、合格しなかった)
過去未来完了(Condicional compuesto)
(1)過去のある時点から見て、すでに完了した行為・状態
Ayer pensé que a las diez ya habrían terminado.(昨日の時点では、10時には終わっていると思っていた。)
(2)過去のある時点から見て、すでに完了した出来事の推定(過去完了の推定)
Fui a ver a Ana, pero no estaba; habría salido.(アナに会いに行ったがいなかった。多分出かけたんだろう。)
(3)過去のある時点から見て、すでに完了した出来事の譲歩・反意
Habría tenido muchos problemas, pero nunca nos dijo nada.(多くの問題があったのだろうが、我々には何も言わなかった。)
(4)過去の実現不可能な行為・状態を表す仮定法
Si me hubiera tocado la lotería me habría comprado un coche.(もし宝くじに当たっていたら、車を買ったのに。)
From: 張 麟声
Sent: Monday, June 19, 2017 9:12 AM
To: 'IORI Isao'
Subject: 張:これで十分です
庵さん、みなさん:
今のご説明で、「ている」と「ていた」を分けて取り扱う理由について、みんな納得できたのではないかと思います。ただし、こういうことならば、そもそも日本語記述文法のほうでもこのレベルの違いを記述しておかなければなりませんよね。だったら、そのような、日本語記述文法のことに対して、日本語教育文法では何をすべきなのかということが問題となってきます。
この段階で、先ほど言っておられた「大」のほうの質問も含めてお聞きしますが、先ほどのメールで英語の話をしておられたのですね。そうすると、この「ている」「ていた」について、今庵さんが考えようとしているのは、学習者の母語を特定しない日本語教育文法のことなのでしょうか、それとも、英語を母語とする宅習者のための日本語教育文法になるのでしょうか。
とりあえず、このあたりのことについて、お考えを教えていただければと思います。
張
From: IORI Isao [mailto:isaoiori@courante.plala.or.jp]
Sent: Monday, June 19, 2017 9:01 AM
To: 張 麟声
Cc: 庵 功雄
Subject: Re: 張:RE: [研究会ML] 張:「ている」と「ていた」を分けて取り扱う理由
Importance: High
張さん、みなさん:
メールありがとうございました。
張さんのご指摘を受けて、先ほどのメールの内容を少し詳しく説明します。
・昨日の3時ごろ、雨が降っていた。(過去の進行中)
・私が部屋に入ったとき、窓ガラスが割れていた。(過去の結果残存)
・会場に着いたとき、コンサートは始まっていた。(過去完了)
・あのときお金を持っていたら、あのカメラを買っていた。(過去の反事実)
このうち、「てい」(アスペクト)+「る/た」(テンス)の組み合わせと考
えられるのは、「基本用法」と呼ばれる「進行中」と「結果残存」だけです。
「派生用法」である「完了」と「反事実」の場合、対応の仕方はかなり異なり
ます。(詳しいことは時間の関係でここでは割愛します)
また、次のような「経験・記録(パーフェクト)」の場合、通常、「ていた」
は存在しません。
・夏目漱石は1867年に生まれている。(経験・記録)
このような違いが見られるのは、基本用法と派生用法では「る/た」の機能が
異なるためです。この点については、庵・清水(2016)を見てください。
とりあえずこんなところですが、これでよろしいでしょうか。
よろしくお願いいたします。
http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/2011-05-14-1.html
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#747. 記述と規範[prescriptive_grammar][popular_passage]
2011-05-14
英語を数年間学んで大学に入学してきた学生が,言語学の授業で最初に習うことの1つに記述 (description) と規範 (prescription) の違いがある.言語学において,記述文法 (descriptive grammar) と規範文法 (prescriptive grammar) の区別は最重要項目である.
記述とは言語のあるがままの姿を記録することであり,規範とは言語のあるべき姿を規定するものである.言語学は言語の現実を観察して記録することを使命とする科学なので,「かくあるべし」という規範的なフィルターを通して言語を扱うことをしない.文法や語法が「すぐれている」,「崩れている」,「誤っている」という価値判断はおよそ規範文法に属し,言語学の立場とは無縁である.確かに,規範文法そのものを論じる言語教育や応用言語学の領域はあるし,英語史でも英語規範文法の成立の過程は重要な話題である (prescriptive_grammar) .しかし,言語学は原則として記述と規範を峻別し,原則として前者に関心を寄せるということを理解しておく必要がある.
2017-06-19 23:26:57 | 日本語教育
日本語教育文法を学習文法と見る。規範文法を目途する教科文法である。日本語学習に、外国人のための、外国語としての日本語の文法は、汎用であり得ない。日本文法研究と構えるなら、そこには学習文法、教科文法を含みうるだろうか、なれば、国語文法も、文語文法も口語文法も、文法研究のそれぞれであるが、その文法研究によって立つ日本語教育文法は、おのずとその領域を決めることになる。文法現象を言語現象と見るか、文法には現象となるものはないとするか、記述文法が目指すものはなにか。規範に対する誤用を網羅すること、あるいは例外規則の文法であるからして、文法が文法足りうるのはその言語現象の発掘にある。日本語教育の中級文法を見よ。そこに見るものはイディオムである。
2017-06-18 11:38:01 | 日本語教育
日本語文法が日本語教育と密接な関係にあるという案内文を見て、これはと思った。これは、というのは、日本語学と日本語教育の関係で日本語学が研究を展開してきた事実と、日本語文法研究が日本語学習者のためのものとして作られたというふうに、そこを飛躍する形でこの考えを結びつけること、説明をすることの当否である。これは日本語教育という分野をどう見ているかと、この主張に思わせられる。語学教育すなわち第2言語習得における文法論として見ることを、日本文法研究そのものとしてだけとらえようとする見方である。そこには日本語教育文法と日本文法研究の違いを明らかにするものではない。学校教育の教科目文法、学習用文法、そこに対照文法研究を位置させようとしてはばからないのは、学習者のためのものとして作る文法の取り違いを示すものである。教育文法から得るものをそのままに言語研究にしようとすることの狭隘さがある。
<内容>
庵 功雄(一橋大学国際教育センター教授)
「日本語教育文法から見た「ている」と「ていた」」
張 麟声(大阪府立大学人間社会システム科学研究科教授)
「中国語話者のための日本語教育文法から見た「ている」と「ていた」」
<趣旨>
日本語文法研究(日本語学)は、日本語教育との密接な関係のもとに誕生しました。つまり、日本語文法研究は、学習者のためのものとして作られたとも言えるのです。しかし、現在、日本語文法研究と日本語教育が互いに相手のことを考えようとしない状況が続いています。中国語話者の日本語教育研究会では、そうした状況を打破すべく、中国語話者のために特化した研究のあり方を考えてきました。今回の講演会では、同研究会の創設者である張麟声氏をお招きし、学習者の母語を特定しない日本語教育と、中国語話者に特化した日本語教育という2つの立場から、日本語教育文法について考えます。そのことを通して、日本語学習者にとって習得が難しいことが知られている「ている、ていた」について、どのような説明の仕方が可能なのかについて考えてみたいと思います。
(庵功雄記)