17世紀に記述文法としてあらわされた書、ロドリゲスの文典がある。日本語訳、影印書と出版されて、文典を大文典、もうひとつ、小文典をあわせると、中世日本語のようすがわかる。それぞれに日本語記述の興味を沸かせる。そしてそのロドリゲスの研究書が、最近のものとして出ているのを、ネット検索で知って、アマゾンから買い求めた。ロドリゲス日本大文典の研究、というタイトルの書名で、記述文法のまさに模範書であるロドリゲスの文典を解説する。著者は、小鹿原敏夫、出版社は、和泉書店、2015年刊行である。著者あとがきによると、2012年12月に課程博士論文にまとめて、それを基にした著作だというから、7年前の業績で、序にあるように、土井忠生氏以来の本格的研究となる。ちなみに序には、>「主語」が思弁文法から導入されたものであるということなども、欧州の文化に対する広い知識がなければとても論じることなどはできないだろう と、木田彰義が賛辞にして言及する。
http://www.izumipb.co.jp/izumi/modules/bmc/detail.php?book_id=107323
和泉選書176 ロドリゲス日本大文典の研究
おがはらとしお
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イエズス会士ジョアン・ロドリゲスが1604年に長崎で出版した『日本大文典』は西洋人によって書かれた日本語文典の白眉である。当時の西洋人はラテン文法を規範とするしか未知の言語を体系的に記述する術がなかったが、ロドリゲスは様々な創意を持ってラテン文法の規範からはみ出る日本語の特質を良く記述しており、同書は室町後期、江戸時代初期の日本語資料として大いに活用されて来た。
本著は、同時代に中南米からアフリカまで世界各地に派遣された宣教師たちが出版した、いわゆる宣教師文典の一つとして『日本大文典』を再評価する。中性動詞や条件法の分析をはじめとし、他の多くの宣教師文典の分析も踏まえ、クロフォード家本大文典の調査や、『日本大文典』からの影響がみられる『コリャード日本文典スペイン語草稿本』についての論考も含む、待望の本格的な研究書である。初学者向けの解説も含む。
目次
第一章 宣教師文典としての大文典
(1)宣教師文典について
(2)大文典とラテン文典について
(3)思弁文法学(Grammatica speculativa)について
(4)ネブリハのラテン文典について
(6)大文典と天草版アルヴァレスのラテン文典について
(7)大文典と小文典について
(8)まとめ:大文典巻I・IIにおける独創性とはなにか
第二章 大文典における文法記述について
(1)大文典における語構成について
(2)大文典における品詞分類について
(3)大文典における動詞の法について
(4)大文典における「主格」と「主語」について
(5)小文典における「主格」と「主語」について
第三章 大文典における語根について
(0)はじめに
(1)大文典における語根と動詞の活用分類について
(2)ラテン文典と語根について
(3)俗語文典と語根について
(4)新エスパーニャの文典と語根について
(5)新エスパーニャの文典と大文典の共通点について
第四章 大文典における中性動詞について
(0)はじめに
(1)形容詞から形容動詞へ
(2)形容動詞から形容中性動詞へ
(3)「文法家(たち)」による中性動詞三分類
(4)大文典における絶対中性動詞とは何か
(5)おわりに
第五章 大文典の「条件的接続法」から小文典の「条件法」へ
(0)はじめに
(1)アルヴァレスのラテン文典(1572)と条件法について
(2)天草版ラテン文典(1594) と条件法について
(3)大文典(1604) と条件法について
(4)小文典(1620) と条件法について
(5)おわりに
第六章 大文典における「同格構成」と「異格構成」について
(0)はじめに
(1)思弁文法における統語論について
(2)天草版アルヴァレスのラテン文典におけるintransitivaとtransitiva
(3)大文典におけるtransitivaとintransitiva
(4)おわりに
第七章 大文典クロフォード家本について
(0)はじめに
(1)大文典版本二部について
(2)クロフォード家本の伝来について
(3)クロフォード家本の書入について
(4)おわりに
付章 『コリャード日本文典スペイン語草稿本』について
(0)はじめに
(1)大英図書館蔵スペイン語草稿本『八品詞による日本文典』(S本)について
(2)S本とL本に関するこれまでの研究
(3)S本以外の『八品詞による日本文典』について
(4)L本へのネブリハの影響について
(5)L本における不規則動詞について
(6)L本における第一活用動詞と第二活用動詞の混用について
(7) L本とS本における大文典からの範例文引用の相違
(8)S本とL本の関係についての考察
(9)おわりに
付 キリシタン資料について
初出について
参考文献
あとがき
Precis 英文梗概
著者略歴
1959年大阪生れ。
2013年京都大学大学院文学研究科文献文化学科博士課程(修了)。博士(文学)。
Toshio Ogahara
Born in Osaka,Japan 1959.
Ph.D. Department of Letters Kyoto University 2013.
ロドリゲス日本大文典の研究 (和泉選書)
単行本: 240ページ
出版社: 和泉書院 (2015/3/21)
言語: 日本語
ISBN-10: 4757607334
ISBN-13: 978-4757607330
発売日: 2015/3/21
内容紹介
イエズス会士ジョアン・ロドリゲスが1604年に長崎で出版した『日本大文典』は西洋人によって書かれた日本語文典の白眉である。これまで同書は室町後期、江戸時代初期の日本語資料として大いに活用されて来た。しかしながら同時代に中南米からアフリカまで世界各地に派遣された宣教師たちが出版したいわゆる宣教師文典のひとつとして『日本大文典』を評価する試みはまだ行われていなかったと思われる。彼らは当時の規範文法であったラテン語文法を規範として未知の言語を記述していることで共通している。ロドリゲスも同様にラテン文法を出発点としているが、彼はそこに収まりきれない日本語の特質を積極的に独自の観点で把握し体系化を試みていることにおいてユニークである。本書はロドリゲスがルネッサンスの西洋人としてどのように日本語を体系化したかという足跡を辿る試みである。
内容(「BOOK」データベースより)
天正5年(1577)に来日した西洋人・イエズス会士ジョアン・ロドリゲスが著した『日本大文典』に新しい知見を提示する。1604年に長崎で出版した『日本大文典』は日本語文典の白眉であり、同書は室町時代後期から江戸時代初期の日本語の実態をよく伝える資料として大いに活用されている貴重な文献である。本書は、同時代に中南米からアフリカまで世界各地に派遣された宣教師たちが著したいわゆる宣教師文典の一つとして再評価し、西洋人・ロドリゲスがラテン語文法を規範に、日本語の特質をいかに独自の観点で把握し体系化したかという足跡を辿る。
(アマゾンより)
ロドリゲス日本大文典の研究 - J-Stage
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nihongonokenkyu/12/3/12_149/_pdf/-char/ja
川口敦子 著 - 2016
ロドリゲス日本大文典の研究』(和泉書院,2015 年 3 月)は,著者・小鹿原敏夫氏が. 京都大学大学院に 2012 年 12 月に提出した博士論文「ロドリゲス日本大文典の研究」を. 基にしたものである。第一章から第七章までは博士論文に基づき注 1,それに付章「『 ...