梅雨明けも近い日の夕暮れ、小さな入道雲が湧き立ち、ひぐらしが啼いていた。ひぐらしは梅雨明けと同時にさざなみのように啼くそうだから、間違いないだろう。日が暮れると啼くから、ひぐらしというのだろうなあ。入道雲が涌くと、いよいよ夏の到来だ。夏の空は白い雲が綿菓子のように湧き立ち、懐かしい人の顔に見えることもある。自分の生きてきた夏が今まで何回だったのか、これから何回あるのか、空の果てがみえそうな青空の奥と縁続きのようで、この世とあの世の境目が薄くなる季節と思うのだ。お盆が近くなるせいだろうか。
詰将棋を作るときは寝転んでミニの板盤を使う。駒もミニで、普通の駒の半分以下の大きさで、これだと何時間でも疲れない。このミニ駒をよく見ると、何枚かの駒に歯型がある。我が家のパグ、「トビオ」が噛んだせいである。トビオ君は私が詰将棋創作の仕事をしていると、必ず手伝ってくれる。それはいいのだが、長時間になると「もう辞めて遊ぼうよ」と盤の間に入ってきてストップをかける。知らん振りで徐々に徐々に割り込んでくるのだ。犬とは思えないくらい、頭脳プレーを発揮する。
仕事を終えて、トビオもミニ盤駒も一休みだ。
仕事を終えて、トビオもミニ盤駒も一休みだ。