7月17日(土)その3
大沼から函館市街をかすめて、進路を東にとります。やがて道が尽きたと思われる所が、北海道渡島半島の東南端、恵山岬です。この岬のすぐそばにある水無海浜温泉に着いたのが正午を少しまわった頃。ついにやって来ました。一度は訪れたいと思っていた、海の中から湧いている温泉です。海岸へ降りるコンクリで固めた道をずんずんと歩いて行くと。目の前に青い海原が広がります。コンクリで固めたプールのような湯船が2つ海に突き出ている状態です。一方は、バーベキューを楽しむグループに占領されていましたので(水着着用組)、私は
人気のないもう一方の湯船に入ります。泉質はナトリウム-塩化物・硫酸塩泉で源泉の温度は約50℃程との事ですが、私の入った時間帯は、海水が流入していたので少しヌルメでした。さすが海の中の温泉です。湯船の中には、巨大な昆布が漂い、底には茹であがった蟹が自らの不明を恥じるように、鋏を空に突き出して無残な姿をさらしています。何か、出汁の効いた鍋の中にいるような感じです。湯船に入っている自身も鍋の具になったみたいで、奇妙な感じです。とはいえ、朝とは打って変わった快晴の状態に戸惑いつつも、青い空を流れてゆく白い雲と飛び交う海鳥の鳴き声が、疲れた心を癒してくれます。
とはいえ、湯船の淵は、大量の巨大なフナ虫が動き回り、それらを意識し出すと、気持ちが現実に引き戻されるのも事実。イメージと現実との落差を感じさせられました。
岬の上にある灯台付近からの眺めは、まさに絶景でした。とはいえ、遠くのほうから海霧が近づいてくるのが分ります。このすばらしい晴天も、気まぐれなお天気の悪戯の様です。
国道278号を海沿いに車を走らせます。途中の道の駅「なとわ・えさん」にて、根ぼっけ蒲焼丼(900円)をいただきます。
通常の回遊しているホッケとは異なり、海の底で殆ど動かずに小エビなどを食べているホッケを根ぼっけと呼び、大型で、肉厚で脂がたっぷりのっている魚との事。そんな根ぼっけを蒲焼風に調理して、ご飯にのっけたのがこれ。確かに、これでもかと思うほど肉厚で、 同じくこれでもかと思うほど脂っこい!たちまち満腹感を覚えます。とはいえ北海道らしい味覚に出会えたと思い、完食します。食事を終えると、外の世界はほんの少し前までの晴天がまるで嘘のような、白い霧に覆われていました。スティーブン・キングの「霧」(数年前公開されたミストの原作)を思わせる世界が広がっています。うかうかしていると、霧の中からモンスターが襲ってくるとも限りません。一刻も早く、白い世界から抜け出すべく、車を東へと走らせます。