2012年7月12日(木)
蟹田行き電車に乗り込み津軽線を北上します。外は本格的な雨で気分も沈みがちです。晴れていれば、午前中は津軽線で列車撮影するつもりでしたが、今のこの状態では叶う筈もありません。中沢駅でED79重連回送と交換。今となっては貴重なED75-50を初めて撮影する事が出来て、少し元気が出てきました。好天の下でED79重連貨物の写真が撮れれば言う事は無いのですが、ED79自体が北海道新幹線新函館開業までの短い命です。次のチャンスはめぐってくるのでしょうか。おそらくは後継機EH800に、新幹線開業より前に電圧を上げて早めに置き換わってしまうのでしょう。同じED79でもED75改造の基本番台と違い新製の50番台は、新鋭機関車のイメージを持っていましたが、もう製造から20年以上経っており、もう先は見えています。諸藩の事情はあるのでしょうが平成生まれの車両でさえ置き換わってしまう現実にものの哀れを感じてしまいます。
蟹田から1両編成の ディゼルカーに乗り換え、津軽線をさらに北上します。キハ40単行でコトコト、揺られること40分。最果てムード漂う終着駅に到着します。本州最北端の駅、三厩駅です。無人駅かと思っていましたが、駅員が居ます。けれども、駅前には何もありません。昔はあったのかも知れませんが、夏草がその痕跡すら、覆いつくしてしまいました。ある意味、期待以上のさびれ方で、旅情を掻き立てるべきところなのですが、ここまで何もないと・・・・。400~500m程海岸方向に歩けば集落があるのですが、激しく降る雨の中、歩いていくほどポジティブな気持ちにはなれません。静かに待合室で折り返し列車を待ちます。今回の津軽線乗車により私はJR(旧国鉄含む)全線を完乗した事になります。長い道のりでした。10年以上前に95%の乗車率となっていましたが、それ以降は、乗りつぶしに対して興味がわかなくなりました。最近になって各地で新幹線が開業し、それに刺激されて(そのついでとして)今回の完乗となった面があります。実のところ、感慨は湧いて来ません。好天でしたら気分もハイになったかもしれませんが、今日の様な荒天では、ため息しか出てきません。折り返しの車内で、今までの完乗への道を走馬灯のように思い浮かべる事もありませんでした。ただ、私の大学時代の鉄研同期で隣室の住人で25年以上前に国鉄を完乗したE上氏に<本日、JR完乗せり>とメールを打つと、<私鉄も完乗めざしてがんばってください>との返事が返ってきました。けれども今の自分にとっては<まだやるの・・・>という気持ちの方が強いようです。
いったん蟹田駅に戻り、スーパー白鳥で北を目指します。と言っても、そのまま北海道入りするのではなく青函トンネル内の竜飛海底 駅で下車して、竜飛海底駅・青函トンネル記念館見学コースに参加します。参加者はスーパー白鳥2号車のドア付近に集合します。駅に到着すると車掌が車内のドアコックを開け、見学者を降ろします。海底駅の極めて幅の狭いホームに降り立ち、作業坑の方へと誘導されます。海面下140mの地下施設の見学を開始します。海底下ということで気温は20度で1年を通して一定ですが湿度が高い。肌がべっとりとして気持ちのいいものではありません。作業坑は北海道 まで通じており、職員は自動車で行き来するそうです(バッテリーカーでなく普通のガソリンカーでしかも年式の古い車を選んで使用。湿気ですぐボロボロになる為)。トンネルの漏水を地上に酌み出すポンプ施設や多方向に分岐していく坑道など、興味は尽きません。安全に関する設備のメンテは充分に行われている事を感じますが、一方で見学者用展示物は湿気にやられて動かないものや、腐食して無残な姿をさらしているものも多く、言葉は悪いですが、場末の遊園地の様な状態です。それはそれで面白いですが・・・・。とは言えガイドさんの熱心な解説がそれらを十二分に補っています。作業抗を歩き続けた先にケーブルカーの駅がありました。海面下140mの体験坑道駅です。ここから地上の記念館駅までの778mの距離をケーブルカーで移動します。劣悪な環境下なので揺れも尋常でなく、全区間トンネルですので楽しいものではありませんが、ここも鉄道の範疇です。乗っておかねば、私鉄を完乗出来ません。10分足らずで地上の青函トンネル記念館駅に到着。ここでいったん自由行動となります。記念館 内の展示物を見させていただきますが、とりあえず説明しましたといった内容に、正直もう少し何とかならないかなと言う感想を持ちました。外を眺めると工事に活躍した車両達が展示してあります。外は雨交じりの強風が吹き荒れていますが、意を決して見に行きます。近寄って見て<何じゃ、これ・・・・。ひどすぎいない・・・。>との感想が湧きおこります。何年もの間、潮風にさらされて車両達は朽ち果て、土に帰ろうとしています。少なくとも、普通鋼の車両を海辺に置けばどうなるかは最初から分っている事なのに・・・。ここまで朽ちたものは、観客に見せられるものなのかの判断をする必要があるのではと思い、少々悲しくなりました。少なくとも職員が常駐している施設の展示物では無いように思えます。もっとも、奥が居展示物に関心を向けるギャラリーなぞ、私以外いませんでしたが・・・。ほんの数分の屋外行動でしたが、身体はずぶ濡れになってしまいました。時間が来て再度、ケーブルカーで竜飛海底駅に戻ります。ガイドさんの話によると3年後の新幹線開業で竜飛海底駅を利用したツアーも廃止でしょうが、工事の進捗によっては今シーズン限りの可能性もあるとのこと。節目を迎えた海底駅から函館行きスーパー白鳥に乗り込み、今度は海峡を渡ります。
函館駅で荷物をロッカーに預けて街にい出ます。海鮮丼をいただき、市電に乗り込み谷地頭温泉に向かいます。前回来た時は青函連絡船最後の年でした。あれから歳月は流れ建物は新しく、大きくなっています。けれども茶色くしょっぱい温泉は以前のままです。竜飛で濡れた身体をコーヒー色の温泉で温めます。今夜は急行<はまなす>で一夜を明かします。1時23分の函館発車まで時間はたっぷりあります。