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羽生選手の「2014年・中国杯事故」の残した教訓~脳震盪の最前線・アメリカの現状と真実~

2016-01-06 | フィギュアスケート全般について

 2015年12月19日掲載・  2016年 1月6日 コメント返信で再UP

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羽生ファンにとって、グランプリシリーズの記憶で避けて通れないもの、それは、2014年の中国杯の事故です。

なかなか多くのマスコミでは報道されなかったものの、羽生選手本人は、中国杯で体験した脳震盪のリスクを、体験者として伝え、スポーツ界全体に貢献していきたいとの希望をもつようになったようで、最近、時々表明してくれるようになっていたのですが、これをきちんと報道してくれるのは、本当に一部の、脳震盪のリスクをよくわかっているであろう、スポーツ全体を扱うような媒体限定でした。

しかし、羽生選手の袴姿の写真が載った「家庭画報」で、羽生選手がこのことを通して、「使命を頂けた」と受け止めて、脳震盪のリスクについて将来的に訴えていくつもりであることが、明確に表明されていましたので、私個人は、そのことを大変うれしく思います。

以下、載っていた羽生選手の言葉です。

 

「6分間練習は、自分の調整を優先しなければならない時間なんですよね。

中国杯での衝突は、そういった緊張感、不安感の中で起きた事故だと思います。

でも、やはりあの衝突事故は自分でよかったと今は思います。

もちろん、自分の体は怪我をしたし、家族や周りのかたがたにはすごく迷惑をかけましたが、

僕という存在に起きたことで、その危険性を世界に発信し、議論するきっかけになったとも思うんですよね。

また新たな使命をいただけたなと、感じてもいます。」 (家庭画報2016年1月号より)

 

羽生選手の言動は、その考え方がやや欧米的であるがゆえに、一部の人からは、時にちょっと誤解を招いてしまうことがありますが、「皆様が思う以上に、自分の責任だ」などとも何度も言っていましたし、(私は決してそうは思いませんが)

基本的に自分の身に起こることを全部真っすぐに受け止めて、

「反省はしても、決して後ろ向きに後悔はしない」「誰かを責めるくらいなら、その結果責任をも自分で担う」という姿勢が一貫されているように思うので、

誰かを責めるのではなく、誰かに責任を要求するのでもなく、起こった出来事、結果をもすべて感謝して受け止めて、すべて自分で担って前を向いていこうという意欲が表れている言葉だと思います。

最初の2文は恐らく、この事故が、「意図的に引き起こされたものだ」との疑いを持った人々がいたために、そのことへの反論というか、配慮して発言した言葉なのだろうと思います。(私個人は、あれが意図的になされた事故だなどとは、全く思っていません。それこそ双方に死のリスクを生じさせるので、アスリートとしてあり得ません。)

 

 (これを言っている映像はないのですが、今まで他のところでなされてきた羽生選手の言動と合致しているし、言い回しも非常に羽生選手らしいもので違和感もないので、ご本人の言葉が正確に報じられたものとして、私は受け止めさせて頂きます。)

 

KENJIの部屋の第4回で, 中国杯のことに触れていたのですが、そこで羽生選手は、アメリカのドクターから、「英語で100から7を引いた数を順に数えろ」、と問われたのに、パニックで答えられなかったけれども、「意識はあるから大丈夫だ」と自らがドクターに語ったら、アメリカのドクターはそれで出場にゴーサインを出した、と答えていました。 

もともと、この診断に費やした時間が短すぎることから、きちんと診断したのかが疑問視されていましたけれども、これを聞いて、アメリカのドクターとやらの診断のいい加減さというか、無責任さについてはもう、「論外」だったと私は思いました。 

アメリカだったら、本当に訴訟にできるケースだと思います。

アメリカで、フィギュアスケートを放送する放送局NBCは、当時、中国杯での羽生選手の衝突シーンもその後の経過も、キスアンドクライも、得点発表の時の映像さえも、一切何も放送しませんでした。 得点だけを口頭で伝えて、次の選手の映像に移ってしまいました。

放送したら、日本以上に猛抗議が来た可能性が高く、それを許可したのがアメリカのドクターだなどと知れたら、大変でしょうから、流せなかった、流さなかったのも当然ですね。

世間へ与えるマイナスの影響力も考えたでしょうし、自国に追及される責任を回避する目的もあったかと思います。

 

 

アメリカは現在、こういうスポーツ事故の過去の甘い対応の結果、脳震盪になった人たちからの訴訟だらけです。(このことは、下のほうで動画で紹介します。)

そもそも、アメリカは訴訟大国でもあるので、普段から人々は責任を明確に線引きしている国だと言え、自分にいかにして不要な責任から逃れられるか、そういった責任回避の術において、非常に訓練されて長けている国だと私は思います。

そのため、現在ではものすごく慎重に判断して、高いリスクの責任をドクターも取らないで済むように厳しめに判断するはずですが、羽生選手は、なぜかそのように扱われませんでした。

 

そもそも、本当にドクターたちがこれらの診断に責任を取ろうと思っていたのなら、羽生選手の拠点があり、コーチの出身国でもある「カナダ」のドクターが真っ先に羽生選手を見るべきだったと、私は思っています。

そうしたら、万が一の時に、きちんと責任を追及でき、補償もされ得るからです。 それでこそ、本当に安全かどうかがわかります。

国境を越えて責任を追及するのは法律上煩雑でとても大変になるので、うやむやにされやすいですし、仮に後遺症被害が出て責任の追及のために訴訟になっても、費用ばかりが莫大にかかった挙句、訴訟で敗北しやすいです。 結果、多大な犠牲を払って、ただの泣き寝入りとなって終わってしまいます。

でも、この中国杯の時、カナダのドクターは、なぜか中国のハンヤン選手を診察し、カナダを拠点にしている羽生選手を、なぜかアメリカのドクターが診察しました。

これを聞いただけで、普通に知識があれば、「ああ、ドクターに責任を取らせる気がないんだな」と、普通の人は思うでしょう。

 

カナダのドクターが中国のハンヤン選手にこの時に下した診断は、結果的にはミスで、中国のハンヤン選手は、本当は脳震盪を起こしていたと、後から中国のドクターによって最終診断がなされました。 本当なら、恐ろしいことです。 これがもし羽生選手だったら、日本はどうしたでしょうか。

 

私は昨シーズン、既に心身ともにズタズタな羽生選手にさらにショックを与えて追い詰めるだけだったり、多方面をかばおうと気丈にふるまっていた羽生選手の立場を、必要以上に追い込むのは嫌だったので、とても悩みましたが、これらをあえて書きませんでした。 他にも、私を激怒させた、羽生選手が守られていないことの証拠となる情報があったのですが、立場を考えて、それもあえてここでは書きません。

羽生選手は賢いので、自分で本気で調べれば、本来は何が正しい対応だったのか、すぐに分かることだとも思ったからです。

 

 

フィギュアスケート界で、今現在、実際に脳震盪で苦しんで欠場している選手たちがいます。

やはり、うやむやにされてはいけないことなのだと、思います。

 

 個人的に思っていたのは、2014年当時、「五輪王者」であり「3冠王者」でもあった世界ランキング1位の羽生選手が、こういう目にあったことには大きな意味があり、認識の甘かったフィギュアスケート界への、未来に対する重大なる警告であっただろうと思っています。

 

どんな事情があろうとも、あの時、羽生選手は「19歳」であり、「未成年」でした。

守るべき責任は、周囲の大人にあります。

 

未来ある子供たちへ、もし同様な甘い対応を繰り返していれば、いつか必ず、犠牲者が出ます。

私は、そういったことが、羽生選手をきっかけに起こってほしくはないのです。

羽生選手に憧れてマネして、「あのくらい大丈夫!」と思い込んだ子供が、いつの日か、取り返しのつかない後遺症に悩まされたとしたら、羽生選手を応援した結果に起きたこととして、こんなに悲しいことはありません。 

 

 

2014年時点で、アメリカの「脳震盪」リスクの認識は、日本よりも進んでいて、訴訟大国でもあるアメリカでは、すでにスポーツ事故を甘く見た結果の脳震盪に絡んだ訴訟だらけになっていたのです。 

ですから、アメリカでは、公立学校でも、ほんのちょっと頭を軽く打っただけでも、「あなたのお子さんは今日頭を打ちましたので、24時間は安静にしていてください。安静にしていても、ちょっとでも異変が見られたら、直ちに医者に行ってください。これを守らなかった場合、どのような(後遺障害の)結果を招いても、こちらは一切責任を負いませんので、よろしく。」というような手紙が直ちに親に来ます。

それが実態です。

 

この記事のタイトルには「最前線」とは書いたものの、これからご紹介するのは「2012年のアメリカの実情」を特集した、NHKの番組であり、既に3年も前のもので、もはや全然最前線ではありません。(苦笑)

2014年時点で、羽生選手を診察したはずのアメリカのドクターの出身国”アメリカ”が、「脳震盪」に対して、どんな態度をとっている国で在り、どれほど敏感であり、どのような状態だったのかを知っておくことは、フィギュアスケートファン、または羽生ファンなら、とても意味のあることだと私は思いますので、ご紹介します。

 アメリカの脳震盪問題の最前線を扱った、日本のNHK番組の動画で、2012年のものです。

できれば、全ての人に見て頂きたいですね。  15分程度です。 後半が特に重要です。

 

 

全米で、後遺症により400人以上が訴訟を起こしているという、大変な実態。

ライステッド君の悲劇、彼の脳震盪への警鐘活動により、「ライステッド法」が成立し、教育現場でも非常に慎重になっています。

最初の24時間が最も重要です。 

アメリカンフットボールだけでなく、サッカーや陸上などでも、脳震盪が疑われる生徒がいれば、試合や練習を中止させます。」

 

9分30秒から、日本の脳神経外科の権威の先生が、スポーツの現場における注意を呼びかけています。

競技中に、選手が脳震盪を起こしたかどうか、その場で診断するためのシート。 

国際競技団体が作った、とのことです。

ここでは、24項目があって、一つでも当てはまれば、「脳震盪の疑いあり」だと言っています。

その中に、「いつもより感情的」「感情的になりやすい」というのがあります。 

あの時の羽生選手の様子を見て、そう感じなかった関係者、観客や視聴者がいるのかどうか、私には大いに疑問です。

 

 

 こちらは、その、日本ラグビー協会が出している、非常に詳細にまでわたった説明と警告、啓蒙の動画。

約30分あり、ちょっと長いですが、わかりやすいです。

安全が確保されていなければ、ラグビーを楽しむことはできない」と、安全を第一にしています。

安全が確保されていなければ、フィギュアスケートも楽しむことはできません。

 

 

「安全推進講習会2012ラグビーの脳震盪」

 

 非常に詳しく解説されています。 難しさについていけるかたは、ご覧ください。 ↑

7分20秒過ぎに、「決して脳震盪の診断を、厳密にする必要はありません。つまり、脳震盪を厳密に考えるのではなく、より広く安全性を求められることになります。(中略) つまり、一番大切なものが、安全性の確保なのであり、その試合の勝敗ではありません。」 と語られています。

勝敗を第一にするとき、いつか誰かに、死を招く危険性があるからです。

その人の実績や利益、勝敗、名誉、関係者の利益、などよりも、「誰にも死を招かないようにする」そのことを最優先するためのルールなのです。

11分50秒過ぎに、「これらの中の一つでも該当する異常があれば、「脳震盪の疑い」だと判断され、プレーヤーは退場となります」と説明されています。 例外を認めません。

 

 

さて、こちらは、「全国柔道事故被害者の会」のホームページ。 → http://judojiko.net/news/1595.html

 

ここのページで、アメリカのホワイトハウスで開かれた、「脳震盪会議」のことを紹介しています。

http://abcnews.go.com/Politics/video/president-obama-delivers-remarks-kids-safe-sports-23913511

↑  上のリンクは、「脳震盪サミット」の様子をABCニュースが放送した映像。

このホワイトハウスでの「脳震盪会議」では、サッカーで活躍していたけれども、脳震盪を起こしたことのある少女が、その後、大きくなるにつれてさまざまな症状に苦しめられるようになってきたことを、大統領とみんなの前で証言している映像が出てきます。(英語です)

 

このようにして、アメリカでは、スポーツ事故や脳への衝撃と、その後の脳震盪のリスクについて、大々的に報道され、一般にも知られてきていました。

 

さらに、「全国柔道事故被害者の会」の、「脳震盪の怖さ――対応マニュアル」のページです。 → http://judojiko.net/news/1299.html

 

 

 日本スケート連盟は、羽生選手の昨年の中国杯の事故を受けて、医師の帯同を増やす決定をしました。 

良かったですね。

 

 

羽生選手の大事故を、フィギュアスケート界は、最後の教訓としてほしいです。

羽生選手にあこがれて、模範にしたり真似したりした子が、手遅れな事態に陥ったりしないうちに。

 

また、そのようなことが少しでも起きなくなるような環境を、そもそも整えていく必要があるでしょう。

6分間練習のあり方、人数の妥当性は、前からずっと疑問視されています。

ルールの変化や、ジャンプの進化、スピード評価の時代の変化に合わせて、きちんと本番で評価できるスケートの状態を練習できる環境を与えるべきだと思います。

 

羽生選手が、あの事故当時、ドクターに何を聞かれ、どのような経緯で出場に許可が出たのかを、「KENJIの部屋」で、たとえ一部でも正直に語ってくれて、本当に良かったと私は思っているし、そのことは本当に感謝しかないです。

 

今後、同じような事故が起こったり、同じような対応が繰り返されることが、決してありませんように…!!

そして、今後の羽生選手の身体が、守られていきますように。

 

あの事故が、どこかの誰かの命を、奪うことにつながっていくような結果を決して招かないよう… 

そして、羽生選手自身の体を、将来にわたって苦しめることに決してならないように、本気でお祈りしております。

 

 

あのような中、羽生選手の命が守られましたことを、ファンの一人として、神様に感謝したいと思います。

また、当初から、羽生選手の立場を考慮しつつも、問題点をハッキリと指摘して下さっていたプルシェンコ選手にも感謝します。

さらに、当時、このことの問題点をよくご存じで、この事態について問題提起したり、警鐘を鳴らしたり、応援メッセージや援護射撃をしてくださっていた、他選手のファンの方々や、他選手の応援ブログのブログ主様等が、私の知る限りでも、複数いらっしゃいました。

私が全然気づかないところにも、大勢いらっしゃったかもしれません。

その方々にも、心から感謝いたします。 

 

心強かったです。 ありがとうございました。

 

羽生選手は、羽生ファンからだけでなく、真剣に真実を見極めようとされておられる「フィギュアスケートファン全体」の中でも、守られているなと、私は感じています。

そのお一人お一人の、生命や健康への真摯な思いが、未来へと活かされますように。

 

昨年の一字に「生」を選び、今年の一字に「成」を選び、

このことを使命と受け止めてくれた前向きな羽生選手に、その思いを託しつつ…

 

羽生選手!  どうか無理なく、賢く、希望をもって歩んで下さいね!(笑)