母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

冬陽爪切り

2025年01月30日 | 
陽は差し込み
風もないまひるです

爪切る音がきこえるだけの
温かく幸せな時間

猫の寝息がそっと聞こえ
爪切りも終わります

猫はふっくらいい匂い
太陽はさんさん暖かく

こんな日は太陽の微笑みに
時は短く流れて行く
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山林に自由存す

2024年12月18日 | Weblog
   山林に自由存す 
 
           国木田独歩

われ此句を吟じて血の湧くを覚ゆ
嗚呼山林に自由存す
いかなればわれ山林を見捨てし

あくがれて虚栄の途にのぼりしより
十年の月日塵のうちに過ぎぬ
ふりさけ見れば自由の里は
すでに雲山千里の外にある心地す

眦を決して天外を望めば
をちかたの高嶺の朝日影
嗚呼山林に自由存す
われ此句を吟じて血の湧くを覚ゆ

なつかしきわが故郷は何処ぞや
彼処にわれは山林の児なりき
顧みれば千里江山
自由の郷は雲底に没せんとす
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なんばん色に

2024年11月27日 | 
晩秋
晩年
挽歌


ひと
出会いと別れ
よみがえる色たち

地球が回る
人は生まれる

なんばん色に赤く燃え
裏切りの中それでも美しく
季節は巡る
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コスモス 宇宙の花

2024年10月18日 | 
この花園にくると空に心は跳び
青い空に向かい駆けてゆくだけ

青い空の果ては暗い宇宙
宇宙は暗くても地球の空は
あおくてあかるくて
地上はいきものの息吹き
色彩の波 形の祭り

この庭を花でうずめ
幸せの形を与え
誰かがどこかで
また新しい計画を立てだす

愁いを幸せに替え
溢れてくるもの
花のひとつひとつに
解けない何かがひっそりと宿り
毎年やってくる季節を祝っている
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夏の忘れ物

2024年09月17日 | 
夏の忘れ物
遠い夏の
忘れていた たより

絵日記の 仔馬のしっぽみたいな
トウモロコシの毛が赤くもつれて
黄色いカンナの丈は高く

9月になると赤とんぼが
物干し竿に休みに来る
高原の初秋
少し疲れた鳳仙花の種がはじけて
乾いた大地にころころ転がった

いきなり高くなった空には 巻雲 うろこ雲
季節を知らせ夕暮れは
静かに早まる

高い山の向こう
まだ入道雲の子供たちが
太陽のご機嫌を伺っている
いつか見た秋のはじまり
うつくしい
季節の交差点


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茄子

2024年08月16日 | 
小さな茄子
曲がった茄子
それでも茄子

涼しかった夏のベランダで
紫の花をつけ
実った茄子がありました

猫はなんだなんだとやってきて
ふんふんと匂いを嗅ぎ
首をかしげて去りました

月日去り
茄子を植えても蒸れて育たず
ねこも老いてなくなりました

やさしかった日本の快適な夏よ
あの日の小さな茄子とねこが
けなげに涼風を運びます



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花火

2024年07月17日 | 
遠い花火
雷鳴のように響く遠い花火
部屋の灯りを消すと
光が空に謳って散る

花火に友は父を見るという
いつもいつも短く散った父を見るという
花火は夜の祭り
夏の夜の祭りは
亡き人人の蘇りか宴か

夏は還ってくる子供の頃のゆめ
果たされずに終わった望みたち
亡き人々の優しいまなざしやこえ
ラジオ体操ヒグラシの夕べ

遠い花火
家々の上に大きく広がり
瞬く間に消えゆく夏の夜の
心なぐさめるひかりの宴
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はちく

2024年06月26日 | Weblog


剥いた破竹のきれいな細身を糠で茹で
カツオの出汁やみりんとおさとう
昆布だしなどもさらりとかけ
日本酒などもさっと振り掛け
鉄板で焼き
こんがりおこげの色を確かめ
白い皿にのせて
私は食べる
外は少し蒸し暑い梅雨の空
遅いタケノコの味をことしもほくほく
味わいながら厳しい太陽の季節の前の
幸せなひとときを過ごします

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東京タワー

2024年06月07日 | ふるさと
赤い鉄塔の東京タワー
子供の頃のヒーロー
東京タワーは
今も私のヒーロー
芝の森を従えて聳える私の宝もの

どんな立派な建物より
ハイテクノロジーのビル群よりも
こころを波たたせる赤い鉄塔
優しかった東京の面影宿る
大好きな東京タワー

時々そばに来て仰ぎ見る
富士山のような私の
赤い鉄の塔
ふるさとのような東京タワー
昭和のヒーロー
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青葉の季節白い花

2024年05月02日 | Weblog
白いアイリスが咲いた
初夏には開く白いアイリス
紫菖蒲の花の群れに
真白い花が離れて咲いてた
無垢の姿
漂うほのかな香り
いつくしむと花は応えて
青い空の下で微笑していた

遠い日の猫と父の姿
母屋の高い瓦の波
みな無くなっても私の庭で
きりり咲いてる
白いアイリス
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はる

2024年03月20日 | Weblog
はるは
沢山のいのちがやってくる
はるは
暖かい日差しにさそわれ
ちいさないのちが産まれてくる

つぶらな目 ひたむきなまなざし
そのいくつかは
陽を浴びずに去ってもゆく
幸せになるため生まれても
天に愛されずに消えてゆくもの

奇蹟の星には
なぜか不幸せのさだめがある
この世に永らえず
沢山の命がどこかで果ててゆく

頂いた小さな命を楽しみ歓び
やがてみな静かに去ってゆく
花は咲き空は青く陽炎がゆれる
毎年やってくるいのちよ春の日の

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てまりうた

2024年02月26日 | 
    

    てまりうた(わらべうた)     

                     竹内俊子 作詞 文部省唱歌

 てんてんてん 天神様のお祭りで
 てんてんてまりを買いました
 てんてんてまりはどこでつく
 梅のお花の下でつく
 下でつく


 てんてんてん 天神様の石段は
 だんだん数えていくつある
 だんだん数えて二十段 
 段の数ほどつきましょう
 つきましょう


   https://www.youtube.com/watch?v=JRGbCymN_TM てまりうた
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空き地で梅は香る

2024年02月17日 | 
よこみち通りの空き地の古い梅の木を
わざわざ見に来る人もなし

空き地は枯草もまばら
誰の土地かもわからない

閉店したばかりのパン屋のビルは
空き地のそば午後の陽を浴びている

ささやかな空き地にも
春の花は何時かは咲く

そ知らぬ顔で通る人をみおろす
花に纏われた木はしあわせ

人影少ない場所で梅の大樹が
辺りに香りを漂わせ咲いている
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雪降りつむ

2024年02月08日 | Weblog
      
       雪
       
             三好達治


 太郎を眠らせ太郎の家に雪降りつむ

 次郎を眠らせ次郎の家に雪降りつむ


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いのち菜の花

2024年02月01日 | 
食べるため買った葉
みどり瑞々しい葉から黄色い花が伸びる
菜の花はいのちかけた春の花
南の海辺の街は冬陽射し
気の早い菜の花が春を告げ始めても
北の海辺は哀しみ沈む

この花をじっと見つめると細長い
たおやかな私たちの国の島影その島の中にあるささやかな
営みのあった街街
雪に悶える哀しい家が浮かぶ

春を運ぶ黄色い花に
いのちの喜び悲しみは交差する
蜜の匂いする花に何の罪もないけれど
黄色い菜の花凍る如月

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