母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

夏の朝の花

2023年08月30日 | 花(夏)


まだ熱の冷めやらぬあけぼのの
薄い光の中に咲く朝顔は
日の出とともに輝き しっかり主張し
伸び伸びと開き
真昼を過ぎると
はなびらを静かに閉じてゆく

夏の夜明け
太陽の登り切るまでの短い時間
そして訪れる晩秋の
冷ややかな大気にも負けず咲いて
細い幹が凍って枯れるときまで
青紫の美しい
色と形で咲きつづける絹のように薄い
あさがおの花
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おしろい花

2021年08月24日 | 花(夏)
おしろい花は夕べに開く
おしろい花は夜明けに閉じる

花の種がポロリと落ちる
黒い小さい硬い種が
軒先にころころ転がる

つぶした種には白い実がある
お鼻のてっぺんに塗ると乾いてお白いになる
おしろい花の
本当の名は 今も知らない

おしろい花は静かな夕べ
枝を広げてにぎやかに咲きだす
日が落ちるとみんなで楽し気な宴会を繰り広げる
そして昼のなごりの大気の中
言い得ない気品ある香をほのかに漂わす

百合のようにダリアのように
真昼の太陽の庭で主張しない
おしろい花
しかしいちばんに
マゼンタ色に染まり旧い日々を思い出させる
夏の庭に群れていたあの花
小さきおしろい花

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野辺の夏の扉

2019年07月14日 | 花(夏)
桔梗は青むらさき
ミソハギはマゼンタの紅
ガラスの器に
野花を活ける
主張しない花は
過ぎた時を思い出させる

振り返れば 花の気配 
口数少なに色を示して
ガラスに透ける水の色
ミソハギと桔梗

夏の扉は開く
誰も知らず気づかぬを
霧雨の煙る日の午後
花の気配に
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赤松林の山百合

2018年07月08日 | 花(夏)
湧き水の階段を上がると
赤松
どっしりの松の木の下に群れて咲く
山百合

大輪の百合は白い花びらに赤い鹿子
木漏れ日の中で
夏のいのちを輝かせてゆらりと揺れる
山林の女王様との再会 幸せの時
  

雨に濡れた落ち葉たち
そのかすかな香り

遠く流れる百合の香に誘われて
黒揚羽がヒラリと舞い来る
赤松の林
夏の朝


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蒟蒻の葉雨に打たれ

2017年07月22日 | 花(夏)
命拾いした蒟蒻は
夏になると大きな葉を茂らせた
売られていたちいさな蒟蒻玉
あまりにも幼くひ弱なので
食べるには躊躇いあった蒟蒻玉

すり下ろして水に入れて
アルカリ混ぜられ煮詰められ
かき回されて冷やされて
薄切りされて皿に乗り山葵醤油などで刺身にされ
消えてゆく
短い命 の筈だった

ところが風そよぐ縁側の笊の中で
ちび蒟蒻玉はいきなりピンクの芽を出した
円錐形の赤い芽が
おもちゃ遊びで興奮した
オスの仔猫のおしりのようで
土に入れて春になると
青い葉っぱを伸ばし出した

夏の夕立嵐に雨に耐え
蒟蒻玉は大きな葉を
誇らしげに広げ威張るようになった
嵐や雨に打たれてもゆらりゆらり何処吹く風

明日のことは知れぬがこの世
むざむざ消えて去る者ばかりでないと
語っているしぶとい蒟蒻玉
命とどめた蒟蒻玉
その大きな葉っぱは遠い昔の
広い夏の畑を想い出させる
不思議な運と縁を思い出させる





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ラベンダーの花の句

2014年07月26日 | 花(夏)


☆ ラベンダー両手を空に挙げて咲く

☆ 懐かしき富良野の丘の夏の青

☆ バスの旅を香りに残すラベンダー

☆ 薄青とピンクを重ねる花の原

☆ 涼風を遠く運ぶかラベンダー

☆ 雲に雲花には花とラベンダー

☆ 花小さく空は大きくラベンダー

☆ ラベンダーを枕に忍ばす夏盛り

☆ ベランダを空に続けとラベンダー

☆ 何時かまた空を旅してラベンダーに
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やまゆり

2013年08月01日 | 花(夏)
人知らず咲くやまゆり
蝉啼く山の山野辺の路
人も尋ねぬ山のなだれ
または女郎花のむれ咲くあたりその端に
咲き競うように大りんの白い花
うなづくように揺れている
姿見えずともはるばると
漂う香りは鹿の子の赤さが目にしみて
夏の空はただ青く
四方の山に入道雲も湧きあがる

木立の中にそろそろと見えつ隠れつ
山稜は白い帽子の向こうに透けていた

山の辺の道はいつか遥かに遠み
懐かしい歌歌と高原の風が
夏の日の思い出を運んでくるだけ
凛とした白い山百合は
今日も豊かに山野辺の道の筋の奥
クロアゲハ誘う香りを漂わせ 
群れ咲いているだろう



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紫陽花

2012年06月11日 | 花(夏)
雨の季節は青い季節
紫陽花咲く水の季節
あの角を曲がると紫陽花が咲く道
あの角を曲がると咲いている
花は青紫
そぼふる雨 
回る雨傘
明るい笑顔
水の輪の中に想い出ゆらゆら

毎年訪れる六月
紫陽花に聞こえ来る気がする
母の声はなつかし
元気でやっているか きちんと生きているかと
幼い子らに語りかけるように
めぐりくる水の季節に 
紫陽花の花の群れはいつもこんもり厚く

首振り揺れてひとしきり
濡れて心に沁み現を忘れさせる
紫陽花の花の





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