命拾いした蒟蒻は
夏になると大きな葉を茂らせた
売られていたちいさな蒟蒻玉
あまりにも幼くひ弱なので
食べるには躊躇いあった蒟蒻玉
すり下ろして水に入れて
アルカリ混ぜられ煮詰められ
かき回されて冷やされて
薄切りされて皿に乗り山葵醤油などで刺身にされ
消えてゆく
短い命 の筈だった
ところが風そよぐ縁側の笊の中で
ちび蒟蒻玉はいきなりピンクの芽を出した
円錐形の赤い芽が
おもちゃ遊びで興奮した
オスの仔猫のおしりのようで
土に入れて春になると
青い葉っぱを伸ばし出した
夏の夕立嵐に雨に耐え
蒟蒻玉は大きな葉を
誇らしげに広げ威張るようになった
嵐や雨に打たれてもゆらりゆらり何処吹く風
明日のことは知れぬがこの世
むざむざ消えて去る者ばかりでないと
語っているしぶとい蒟蒻玉
命とどめた蒟蒻玉
その大きな葉っぱは遠い昔の
広い夏の畑を想い出させる
不思議な運と縁を思い出させる